私の可愛い悪役令嬢様

雨野

文字の大きさ
上 下
17 / 164
幼少期

17

しおりを挟む


 暫く泣いていたリリーだが、やっと落ち着いたようだ。しっかし美少女は泣き顔も麗しい。こんな美少女を虐げる侯爵家、頭オカシイね!分かってます、偏見です。


「リリー様落ち着きました?」

「ええ…ありがとう。」



 シスター達も気を利かせてくれて、会議室を使わしてもらった。ここなら誰も来ない。

 そうして落ち着いた所で、リリーは少しずつ話し始めてくれた。
 



「まず、その…キチンと話した事は無いと思うけれど。私は侯爵家の中で疎まれています。
 私の母は既に儚くなっていて、原因は私を産んだ、産後の肥立ちが悪かったため。それ故に…母を慕っていた屋敷の者全員に恨まれていますの。」

「それリリー様全く悪くねえですね?」

 アシュレイに同意。うーん、ゲームで知っていたけど、確かに本人から聞いてなかったな。


「それでも私は家族に愛してほしかった…。でも私がどんなにお手伝いや勉強を頑張っても、お父様も兄弟達も使用人も教師すらも、誰も褒めてくれませんでした…。
 だから私、どうしても認めてほしくて慈善活動を始めましたの。でも目的は結果のみだから、あなた方と交流する気は一切なくて…こんな動機でごめんなさい…。」

 リリーはしゅんとしてしまった。やだ可愛い。…じゃなくて!
 私はリリーの肩をがっしり掴んだ。


「リリー様、いいんですよそんな事!他の人は知りませんが、私にとって大事なのは過程と結果!キッカケや動機なんてどーでもいいんですよ。場合によっては過程も二の次三の次!
 それよりも大切なのは、リリー様が教会の皆と仲良くなってくれた事。どんな理由であれ、リリー様が慈善活動に来なければ私達と友達になってくれるっていう今は無かったんです!ついでにトロくんもね。」

「僕ついでなんだ…まあついででも、友達には変わりないよねえ。」


 少しだけ、ふふっと笑ってしまった。うんうん、出会いのきっかけなんて、その後いくらでもカバーできるもんね。


「…ありがと。とっても、気が楽になりましたわ。
 それで、まずはアシュリィと、その後他の皆とも仲良くなれました。
 そのうち、自然と家族の愛を求めるのをやめていました。私にとっては、もうここの皆が家族ですから…。」

 思わずリリーを抱きしめた。アシュレイも一緒になってぎゅーっとしてる。ほれ、トロくんも来い。

「やっべ超可愛い。」

「声に出てんぞ、まあ同意するが。」

 そして真っ赤になってあわあわする姿がまた愛おしい。護りたい、全力で。

「リリー様、私と結婚しよう。」

「えええ!?」

「アホかっ!」

 アシュレイに頭をスパーンと叩かれてしまった。いかん、暴走しちゃった。

「…いいね。」

 ボソっとトロくんが呟いた。君はそっちの素質があったのか…!?
 と、仕切り直さねば。



「こほん…。それで、暫く穏やかな日々が続きました。邸に帰ればトロ以外味方はおらず、蔑まれる日々ですが…もう気にもなっておりませんでしたので。
 でも…先日、ですね。私、初めてお茶会に参加しましたの。もう8歳ですから、そろそろデビューする必要があります。
 驚きましたわ。まさか私に招待状が届いたのかと。ですが実際は、お姉様のついでだったのですけど…そこで…」






『アイニーお姉様、このドレス、おかしくありませんか…?この色は…』

『あなた、お父様が用意してくださったドレスに文句があるの?』

『いえ、そのようなことは』

『ならばもう黙りなさい。』






『お待ちしておりましたわ、アイニー様!ようこそ我が家の茶会にいらしてくださいました。
 あら、そちらは…?』

『お招きありがとう、ターニャ。紹介します、私の妹ですわ。どうしても付いてきたいって聞かなくて…。』

『(言ってねえ…っと、いけない!最近アシュリィの口の悪さが移ってますわ…!)
 …お招きいただき、ありがとうございます。フィンセン伯爵令嬢。』


『まあ、ご覧になって、あのドレス!』

『お茶会に黒いドレスで来るなんて!なんて非常識な子かしら。』

『(やっぱおかしいんじゃん!)』

『ああ…ごめんなさいね、皆さん。この子どうしてもこのドレスじゃないと嫌だって癇癪を起こしてしまって…。何度も言い聞かせたのですけれど。』

『まあ…アイニー様苦労されてるのですね…。』

『お可哀想に…。それでも連れてきてあげるなんて、まさに聖女と呼ばれるに相応しいお方ですわね。』

『(……殴りたい…)』







「よし、私が今から殴り込みに行ってあげますね!ターゲットはクソ姉でいいですか?」

「お待ちなさい!気持ちは大変嬉しいしむしろけしかけたい所ですが、罰を受けてしまいましてよ!」

「大丈夫、リリー様。犯人がオレらだとバレなければいいんでしょ?」

「そうね。じゃなくて!もうっ。とにかく最後まで聞いてちょうだい。」


 まだ終わりじゃなかったんか…既に胸糞悪いんですけど。
 私達は中断された続きを促した。







『お前、アミエル侯爵家の出来損ないだろ?なんでこんなとこに来ているんだよ。』

『…私がどこにいようとも、あなた方には関係なくてよ。』

『はあっ!?なっまいきだなお前!』

『そうですわ!侯爵家の末娘と言えば、我が儘で癇癪持ち、勉強も魔法もまるでダメ。マナーに至っては…一目で分かってしまいますねえ。』

『(1人の小娘を複数人で囲んで嘲笑。ここにアシュリィがいたら大惨事になりかねませんね…)…クス。』

『!何笑ってんだ!』

『ああ、いえ。失礼?皆様の知力はさぞかし低いのだろうな、と思ってしまいまして、ね?』

『『なっ…!』』

『失礼な!ボクは65もあるんだぞ!?』

『まあ!』

『ふっ驚いただろ?』

『その程度ですの!?私は184ありましてよ?』

『『はああああ!!?』』

『は、ハッタリだ!アミエル家の末娘は、虚言癖まであるんだな!』

『ほんとね!付き合ってられないわ、行きましょう。』






「私は8600ありますけどね!!」

「だから話を折らないでって…」

「「「8600!!!?」」」

 あ、やべ。つい…。

「な、内緒にしてネ?」

 全員ポカーンとしてるわ。まあお坊ちゃんが65程度でイキってる位だし…規格外だよなあ。
 ああちなみに、数字は2年前から一切変わってない。流石にこれ以上伸びないだろうね。


「さ、リリー様続き!」

「え、ええ…。」








『お嬢様…旦那様がお呼びです。』

『そう。まあ、今日のお茶会についてよね。すぐ行くわ。』

『…お嬢様、僕も』

『ダメよ、トロ。あなたは護衛であって従者じゃないんだから…でも、ありがとう。』

『…。』






『参りました。』

『入れ。』


『(ふうん…お兄様もお姉様も勢揃いね。)お呼びと聞きましたが。』

『心当たりがないと言うのか?』

『ありますわ。』

『なんなんだ、その態度!お前は侯爵家の名に泥を塗ったのだぞ!?』

『左様ですか。しかし反省も後悔もしておりませんわ。』

『この…!』

『やめなさい。』

『父上!』

『(以前の私だったら、この状況も喜んだかも。…変態っぽい気がするわ?)』

『お前には侯爵家の一員という自覚が足りんようだな。』

『…っ!
 (今まで一度でも、私をその様に扱った事があって!?この邸の人間は、!!)
 …申し訳ございません。』

『もういい、下がれ。お前の処罰は追って下す。』

『はい…失礼します。

 …最後に、1つだけ。あなた方に、私に対する情は…欠片でもございますか?』


 それに対する返事は無かったが、家族の冷えた目が答えを語っていた。







「以上です。私、まだ無意識に家族に愛されたいと思っていましたのね。部屋に戻った後、泣いてしまったの。
 もしかしたら…僅かでも娘と認識してくれているのでは、と…。」


 リリー…やっぱりあなたは、家族を…。


「それでね…トロも取り上げられてしまう事になったの。お前に護衛は必要ない、トロは庭師に戻すって…。」

「えええっ!?じゃあ、護衛どうなるんですか!?トロくんにもう会えなくなるんですか!?」


 思わず立ち上がってしまった。って、トロくんもあんぐりしてるけど!?知らんかったんかい!
 

「ごめんなさいね、言い出せなくて…。でもトロは庭師に戻れるし、良かったでしょ?」

「よくありませんよー!?いや嬉しいですけど、ってお嬢様と離れるのは嫌ですけど!?あの旦那様が今度はどんな護衛をつけるか!!」

「それが…もういないみたいなの。」

「「「はい?」」」


「邸内では不要だし、出掛けるなら勝手に1人で行けって事よ…ここに来るのも、難しくなるわ…。」




 開いた口が塞がらない。侯爵、そこまで腐ってたか…!自然と握り拳を作ってしまうし、アシュレイも青筋浮かんでる。


 もういい。こうなったら。


「リリー様。私が!あなたの護衛になりますからね!!」


しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

側近女性は迷わない

中田カナ
恋愛
第二王子殿下の側近の中でただ1人の女性である私は、思いがけず自分の陰口を耳にしてしまった。 ※ 小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

貧乏令嬢はお断りらしいので、豪商の愛人とよろしくやってください

今川幸乃
恋愛
貧乏令嬢のリッタ・アストリーにはバート・オレットという婚約者がいた。 しかしある日突然、バートは「こんな貧乏な家は我慢できない!」と一方的に婚約破棄を宣言する。 その裏には彼の領内の豪商シーモア商会と、そこの娘レベッカの姿があった。 どうやら彼はすでにレベッカと出来ていたと悟ったリッタは婚約破棄を受け入れる。 そしてバートはレベッカの言うがままに、彼女が「絶対儲かる」という先物投資に家財をつぎ込むが…… 一方のリッタはひょんなことから幼いころの知り合いであったクリフトンと再会する。 当時はただの子供だと思っていたクリフトンは実は大貴族の跡取りだった。

処理中です...