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幼少期
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しおりを挟む暫く泣いていたリリーだが、やっと落ち着いたようだ。しっかし美少女は泣き顔も麗しい。こんな美少女を虐げる侯爵家、頭オカシイね!分かってます、偏見です。
「リリー様落ち着きました?」
「ええ…ありがとう。」
シスター達も気を利かせてくれて、会議室を使わしてもらった。ここなら誰も来ない。
そうして落ち着いた所で、リリーは少しずつ話し始めてくれた。
「まず、その…キチンと話した事は無いと思うけれど。私は侯爵家の中で疎まれています。
私の母は既に儚くなっていて、原因は私を産んだ、産後の肥立ちが悪かったため。それ故に…母を慕っていた屋敷の者全員に恨まれていますの。」
「それリリー様全く悪くねえですね?」
アシュレイに同意。うーん、ゲームで知っていたけど、確かに本人から聞いてなかったな。
「それでも私は家族に愛してほしかった…。でも私がどんなにお手伝いや勉強を頑張っても、お父様も兄弟達も使用人も教師すらも、誰も褒めてくれませんでした…。
だから私、どうしても認めてほしくて慈善活動を始めましたの。でも目的は結果のみだから、あなた方と交流する気は一切なくて…こんな動機でごめんなさい…。」
リリーはしゅんとしてしまった。やだ可愛い。…じゃなくて!
私はリリーの肩をがっしり掴んだ。
「リリー様、いいんですよそんな事!他の人は知りませんが、私にとって大事なのは過程と結果!キッカケや動機なんてどーでもいいんですよ。場合によっては過程も二の次三の次!
それよりも大切なのは、リリー様が教会の皆と仲良くなってくれた事。どんな理由であれ、リリー様が慈善活動に来なければ私達と友達になってくれるっていう今は無かったんです!ついでにトロくんもね。」
「僕ついでなんだ…まあついででも、友達には変わりないよねえ。」
少しだけ、ふふっと笑ってしまった。うんうん、出会いのきっかけなんて、その後いくらでもカバーできるもんね。
「…ありがと。とっても、気が楽になりましたわ。
それで、まずはアシュリィと、その後他の皆とも仲良くなれました。
そのうち、自然と家族の愛を求めるのをやめていました。私にとっては、もうここの皆が家族ですから…。」
思わずリリーを抱きしめた。アシュレイも一緒になってぎゅーっとしてる。ほれ、トロくんも来い。
「やっべ超可愛い。」
「声に出てんぞ、まあ同意するが。」
そして真っ赤になってあわあわする姿がまた愛おしい。護りたい、全力で。
「リリー様、私と結婚しよう。」
「えええ!?」
「アホかっ!」
アシュレイに頭をスパーンと叩かれてしまった。いかん、暴走しちゃった。
「…いいね。」
ボソっとトロくんが呟いた。君はそっちの素質があったのか…!?
と、仕切り直さねば。
「こほん…。それで、暫く穏やかな日々が続きました。邸に帰ればトロ以外味方はおらず、蔑まれる日々ですが…もう気にもなっておりませんでしたので。
でも…先日、ですね。私、初めてお茶会に参加しましたの。もう8歳ですから、そろそろデビューする必要があります。
驚きましたわ。まさか私に招待状が届いたのかと。ですが実際は、お姉様のついでだったのですけど…そこで…」
『アイニーお姉様、このドレス、おかしくありませんか…?この色は…』
『あなた、お父様が用意してくださったドレスに文句があるの?』
『いえ、そのようなことは』
『ならばもう黙りなさい。』
『お待ちしておりましたわ、アイニー様!ようこそ我が家の茶会にいらしてくださいました。
あら、そちらは…?』
『お招きありがとう、ターニャ。紹介します、私の妹ですわ。どうしても付いてきたいって聞かなくて…。』
『(言ってねえ…っと、いけない!最近アシュリィの口の悪さが移ってますわ…!)
…お招きいただき、ありがとうございます。フィンセン伯爵令嬢。』
『まあ、ご覧になって、あのドレス!』
『お茶会に黒いドレスで来るなんて!なんて非常識な子かしら。』
『(やっぱおかしいんじゃん!)』
『ああ…ごめんなさいね、皆さん。この子どうしてもこのドレスじゃないと嫌だって癇癪を起こしてしまって…。何度も言い聞かせたのですけれど。』
『まあ…アイニー様苦労されてるのですね…。』
『お可哀想に…。それでも連れてきてあげるなんて、まさに聖女と呼ばれるに相応しいお方ですわね。』
『(……殴りたい…)』
「よし、私が今から殴り込みに行ってあげますね!ターゲットはクソ姉でいいですか?」
「お待ちなさい!気持ちは大変嬉しいしむしろ嗾たい所ですが、罰を受けてしまいましてよ!」
「大丈夫、リリー様。犯人がオレらだとバレなければいいんでしょ?」
「そうね。じゃなくて!もうっ。とにかく最後まで聞いてちょうだい。」
まだ終わりじゃなかったんか…既に胸糞悪いんですけど。
私達は中断された続きを促した。
『お前、アミエル侯爵家の出来損ないだろ?なんでこんなとこに来ているんだよ。』
『…私がどこにいようとも、あなた方には関係なくてよ。』
『はあっ!?なっまいきだなお前!』
『そうですわ!侯爵家の末娘と言えば、我が儘で癇癪持ち、勉強も魔法もまるでダメ。マナーに至っては…一目で分かってしまいますねえ。』
『(1人の小娘を複数人で囲んで嘲笑。ここにアシュリィがいたら大惨事になりかねませんね…)…クス。』
『!何笑ってんだ!』
『ああ、いえ。失礼?皆様の知力はさぞかし低いのだろうな、と思ってしまいまして、ね?』
『『なっ…!』』
『失礼な!ボクは65もあるんだぞ!?』
『まあ!』
『ふっ驚いただろ?』
『その程度ですの!?私は184ありましてよ?』
『『はああああ!!?』』
『は、ハッタリだ!アミエル家の末娘は、虚言癖まであるんだな!』
『ほんとね!付き合ってられないわ、行きましょう。』
「私は8600ありますけどね!!」
「だから話を折らないでって…」
「「「8600!!!?」」」
あ、やべ。つい…。
「な、内緒にしてネ?」
全員ポカーンとしてるわ。まあお坊ちゃんが65程度でイキってる位だし…規格外だよなあ。
ああちなみに、数字は2年前から一切変わってない。流石にこれ以上伸びないだろうね。
「さ、リリー様続き!」
「え、ええ…。」
『お嬢様…旦那様がお呼びです。』
『そう。まあ、今日のお茶会についてよね。すぐ行くわ。』
『…お嬢様、僕も』
『ダメよ、トロ。あなたは護衛であって従者じゃないんだから…でも、ありがとう。』
『…。』
『参りました。』
『入れ。』
『(ふうん…お兄様もお姉様も勢揃いね。)お呼びと聞きましたが。』
『心当たりがないと言うのか?』
『ありますわ。』
『なんなんだ、その態度!お前は侯爵家の名に泥を塗ったのだぞ!?』
『左様ですか。しかし反省も後悔もしておりませんわ。』
『この…!』
『やめなさい。』
『父上!』
『(以前の私だったら、この状況も喜んだかも。…変態っぽい気がするわ?)』
『お前には侯爵家の一員という自覚が足りんようだな。』
『…っ!
(今まで一度でも、私をその様に扱った事があって!?この邸の人間は、私の名前を呼んだこともないじゃない!!)
…申し訳ございません。』
『もういい、下がれ。お前の処罰は追って下す。』
『はい…失礼します。
…最後に、1つだけ。あなた方に、私に対する情は…欠片でもございますか?』
それに対する返事は無かったが、家族の冷えた目が答えを語っていた。
「以上です。私、まだ無意識に家族に愛されたいと思っていましたのね。部屋に戻った後、泣いてしまったの。
もしかしたら…僅かでも娘と認識してくれているのでは、と…。」
リリー…やっぱりあなたは、家族を…。
「それでね…トロも取り上げられてしまう事になったの。お前に護衛は必要ない、トロは庭師に戻すって…。」
「えええっ!?じゃあ、護衛どうなるんですか!?トロくんにもう会えなくなるんですか!?」
思わず立ち上がってしまった。って、トロくんもあんぐりしてるけど!?知らんかったんかい!
「ごめんなさいね、言い出せなくて…。でもトロは庭師に戻れるし、良かったでしょ?」
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「それが…もういないみたいなの。」
「「「はい?」」」
「邸内では不要だし、出掛けるなら勝手に1人で行けって事よ…ここに来るのも、難しくなるわ…。」
開いた口が塞がらない。侯爵、そこまで腐ってたか…!自然と握り拳を作ってしまうし、アシュレイも青筋浮かんでる。
もういい。こうなったら。
「リリー様。私が!あなたの護衛になりますからね!!」
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