私の可愛い悪役令嬢様

雨野

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幼少期

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 リリー様と語り合ってから数日後。私は順調に魔法を吸収していった。思った通り、用意された魔導書は全て読むことが出来た。
 ただ練習する場所がなくて…使ったことはないんだよね。

 そんな、ある日。




「ねえ、今日のリリー様…元気なくない?」

「やっぱそう思うよな…。」

「どうしちゃったのかな…?」

「おなかいたいのかな?」


 リリーの様子がおかしい。私とアシュレイ、カルマと最近教会に来た4歳の女の子、パイル。この面子でどうしようかと相談中。

 今リリーはちびっ子と積み木で遊んでいるが…明らかに元気がない。家で何かあったのかな…?
 ここはやっぱり、ねえ?




「「「「ト~ロ~くんっ!」」」」

「ひいぃっ!!?」

 おやおや、トロくんよ。身体は大きくなっても気弱なのは治らないね~?部屋の外に呼び出して4人で囲んでやったら、分かりやすく狼狽えている。


「え~っと…な、何か僕にご用で?」

「トロくん、まだるっこしいのは私嫌いなの。
 リリー様、どしたん?」

「そ、れは…。」


 この反応…口止めでもされてんのか?そんなに言いづらい事なのか…。



「…カルマ、パイル。ごめんねだけど部屋に戻っててくれる?」

「えー?パイルも…もご」

「わかったよ、リィちゃん。でも、後で教えてね?」

 カルマはパイルを連れて部屋に戻った。
 理解が早くて助かるわ。さて。

「アシュレイはどうする?」

「聞くに決まってんだろ。」

「おっけい。さて、トロくん。」


 改めて、問いかける。今度はさっきと違って、覚悟を決めてから。
 十中八九家庭の問題だろう。彼女はもはや悪役令嬢とは程遠い性格とはいえ…元凶の家が変わった訳ではない。
 だが変わったものだってある。以前の私だったら、元気ないなーと思いつつも放っておいただろう。仲良くなれたのだって、ほぼ偶然が重なった結果とも言えるし。

 でもそれでも。今の私は、リリーナラリスを助けたい!



「トロくん。私はね…不敬かもしれないけれど、リリー様を友人だと思ってる。
 立場も何も違うけど、リリー様が大好きなの。優しくて笑顔が可愛くて、ちょっとお転婆で頑固な所も全部…大好き。
 だから、リリー様が苦しんでいるなら助けてあげたいの。話を聞く位は出来るし…最終的には物理で殴れば大体なんとかなるし!」

「「いやいやいや!!」」

 男2人がすかさず否定した。ま、まあ確かに。流石に侯爵をぶん殴るのはまずいか…?あぶな。


「とにかくっトロ!オレも同じだ。まあ過ごした時間は短えけど…。リリー様をトモダチだと思ってるし、オレだってあの人の事、すっ好きだからな!」

「アシュレイ…可哀想だけど身分の差が…」

「そっちの好きじゃねえーーー!!!分かるだろっ!!?」


 アシュレイは顔を真っ赤にして怒ってる。あはは、分かってるって!





「…だ、そうですよ?お嬢様。」

「「え??」」


 アシュレイとぎゃーぎゃー言ってたら、トロくんがふいにそんな事を言った。
 いや、リリーは今…


「「んぎゃああああーーーっっ!!!??」」

「…驚きすぎ、ですわよ。」

 いいいつの間に私達の背後に!!?思わずアシュレイと抱き合って後ずさっちゃったよ!
 って、涙…?


「リリー様ごめん!?いや幽霊見たようにビビっちゃったけど、決してリリー様本体に恐怖してる訳ではなくて!!」

「お前何言ってんだ!だからな、リリー様?え~~っとだから、アレですよ!アレ!!」

「あんたは痴呆か!!」



「…ふふふ。もう、おっかしいんだから。」

「「…リリー様。」」


 私達のやり取りを見て、リリーは弱々しく笑っている。涙を流しながら。

「でも、よかった…友人だと思っていたのは…私だけかと思っていましたから。」


 そっから聞いてたんかーーーい!!って事は…

「つまり私達は両思い…!?」

「なんでだよ…。」

「ええ、そうみたいね。」

「そうなの!?」

 アシュレイ、うっさい!!まあおふざけはこの辺にしておいて。
 私はリリーの手を取り、目を合わせて言葉を発した。


「リリー様。本当に私達を友達だと思ってくださるなら。話してください全部。」

「そうです。オレ達がリリー様の不安も心配事も全部、払ってやりますから。
 また、チビどもに笑顔を見せてやってください。」

「お嬢様、僕だって最初っから最後までお嬢様の味方ですよ。」




 そしてリリーは泣き崩れてしまった。人前で泣くなど貴族令嬢としては失格かもしれないが…私達は、そんなリリー様が愛おしくてたまらないのだから。


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