私の可愛い悪役令嬢様

雨野

文字の大きさ
上 下
13 / 164
幼少期

13

しおりを挟む


「ってシスター、どこ行くの!?教会出ちゃってるけど?」

「今から迎えに行くのよ~。」

 迎えに行くってまさか、外とは思わなかったよ。
 そして着いた先は…警備隊の詰所?…おいおい。




「こんにちは、来ましたよ。」

「お、サラさん待ってましたよ!あとは…殺人タックラーの嬢ちゃんも!」

「おう嬢ちゃん!よく来たなー。」

「待って待って。殺人タックラーってなんですか!?」

 サラとは、シスターの名前だ…って聞き捨てならん異名がついている!?
 警備隊のおっちゃん達に詰め寄った。


「ん?以前侯爵令嬢を襲った男にタックル喰らわしたの嬢ちゃんだろ?
 それ以来ここじゃあな、殺人タックラーって呼ばれてんだよ!」

 がははははっ!じゃないわーーー!!
 だが、タックルは事実…っ!


「はあ…もーいーです。で、男の子は?」

「おう。今連れてくらあ。」




 そして待つ事数分。お兄さんに連れて来られた少年は、見るからにガリガリで傷だらけの身体をしていた。
 シスターも隣で息を呑んだのが分かった。これは…。


「隊長さん、彼は…。」

「ああ、どうやら隣の領地にあるスラムに住んでたようでなあ。先週肉屋のコロッケ盗んだもんで捕まえたんだが…このナリでなあ。
 あんま酷え扱いする訳にもいかんし…そんで殺人タックラーの嬢ちゃんもいる教会に連絡したんだ。」

 シスターに隊長と呼ばれた髭面のおっちゃんが答えた。タックラーは忘れろや。
 この領地にスラムはない。あのいけすかない侯爵家だが…税は重くないし領主としては素晴らしい人物なのだ。腹立つが。
 そしておっちゃんは私に耳打ちしてきた。

「あの坊主よお…コロッケ盗んだ際に肉屋のオッサンに怪我させちまってな。
 んでもそのまま逃げねえで隣の魚屋に助けを求めてな。そんであっさり捕まったんだが…性根はいい奴だと思うぜ?
 頼んだぜ、嬢ちゃん!」


 そう言いながらおっちゃんは私の背中をばしばし叩いた。痛くはないが、やめい。
 そうか…あの魔力が6しかないおじさんを…。

 私は少年に向き直った。


「はじめまして、私アシュリィ。今日からあなたの家族よ。よろしくね。」


 私はひとまず笑顔で(目は隠れてるが)優しく言いながら手を差し出した。すると

「うるせえ、タックルゴリラ。」



 気付いた時には私は、少年にアイアンクローを喰らわしていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

お金目的で王子様に近づいたら、いつの間にか外堀埋められて逃げられなくなっていた……

木野ダック
恋愛
いよいよ食卓が茹でジャガイモ一色で飾られることになった日の朝。貧乏伯爵令嬢ミラ・オーフェルは、決意する。  恋人を作ろう!と。  そして、お金を恵んでもらおう!と。  ターゲットは、おあつらえむきに中庭で読書を楽しむ王子様。  捨て身になった私は、無謀にも無縁の王子様に告白する。勿論、ダメ元。無理だろうなぁって思ったその返事は、まさかの快諾で……?  聞けば、王子にも事情があるみたい!  それならWINWINな関係で丁度良いよね……って思ってたはずなのに!  まさかの狙いは私だった⁉︎  ちょっと浅薄な貧乏令嬢と、狂愛一途な完璧王子の追いかけっこ恋愛譚。  ※王子がストーカー気質なので、苦手な方はご注意いただければ幸いです。

処理中です...