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幼少期
09
しおりを挟む私達は今、教会の礼拝堂にいる。まあ2人きりじゃなくて、離れた所にシスターとリリーの護衛もいるが。
「…私の護衛が気になりまして?」
「ぅへっ!?…こほん。失礼いたしました。その…ず、随分お若い騎士様ですね…?」
流石に護衛騎士は変わっていた。でも新しい人、どっからどう見ても…成人前なのでは??
「…そうなんですの。お父様が私を護れないような者は外して、新たな護衛を付けてくださったの。
まだ若い見習い騎士ですけど…将来性はあるのですって。」
「そう、ですか…。」
う~ん、解雇とか処分じゃなくて外されただけですか。しかもあんな実戦経験皆無そうな、気弱そうな少年を護衛にとな。
…護る気ゼロか、侯爵様よお?
「そんな事より…先日のあなたの動き、見事でしたわ。私の護衛よりも遠くにいたのにあの素早い動き…きっと素晴らしいステータスをお持ちなのでしょうね。
そして、侯爵家より褒美をとらせようと思いますの。何か、望みはあって?」
「望み…。」
あんだけ目撃者もいれば、事件をなかった事には出来ないよね。侯爵、嫌々なんだろうなあ。
この褒美が礼って訳ね。どうしよっかな…?
…あ!
「ではアミエル様、ひとつだけございます。
私に…文字を教えていただけませんか?」
「文字?それだけでよろしいの?」
「それだけ、という事はございません。文字の読み書きが出来るだけで、将来は全く変わってきます!
私は今満足するよりも、未来にも目を向けたいのです!それに他に望みはありません。
この教会はアミエル様のお陰で潤っておりますから!」
「そ、そう…では、教師を手配しておきますわ。」
熱弁する私にリリーはやや引き気味だ。お嬢様にゃ分からんだろうなー、文字の読み書きが出来ることがどれだけのアドバンテージなのかを!
…まあ、もうひとつ。目的はあるけどね。
「えっとアミエル様…もしも許されるなら、私はアミエル様に教えていただきたいです。
もちろん、この教会に来ている間だけで結構ですから…どうでしょう?」
「わたくし、に…?」
私は悪役令嬢、リリーナラリスが嫌いじゃない。なので、目の前に彼女がいて。まだ悪堕ちしてなくて。間に合うのならば。
周囲に、目を向けて欲しいと思っている。
まずはこの教会なんていかがっすか?ほらほら。
「ふふ…。」
はああーーーい!!美少女の微笑みいただきましたぁーーー!!可愛いいいいい!!!
「アミエル様…とても可愛らしいです!いつもそのように微笑んでくださればよろしいのに!」
「えっえぇ!?」
今度は赤面いただきましたっっっ!!
普通の令嬢だったら言われ慣れているであろう褒め言葉も、彼女には新鮮なんだなあ…。
そして私達は顔を見合わせて、今度は2人で笑った。
「ふう、わかりましたわ。では、来週から始めましょうね。
そういえば…あなた、お名前は?」
「アシュリィと申します。アミエル様、よろしくお願いします!」
「ええ、では改めて。私はアミエル侯爵家の末娘、リリーナラリス・アミエル。
あなたの臨時教師になりました。アシュリィ、私は厳しくてよ?」
こうして私は、リリーとほんのちょびっとだけ仲良くなれましたとさ、ちゃんちゃん。
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