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幼少期
02
しおりを挟む私の名前はアシュリィ。確か今6歳だったかな?
なんせ自分の誕生日も曖昧なもんですから。
名前から分かる通り、ここは日本じゃない。前世では私は…なんて名前だったけ。
なぜか思い出せないのだ。21世紀の日本に住む女だった。それ以上の情報がまるでない。
ただ自分に関する記憶が無いだけで、現代日本の風習、倫理、常識諸々はがっつり覚えている。
私にこの前世の記憶と思われるモノがある以上、日本の私は死んだということだろう。
どこで、どうしてなのかはサッパリだが。
受け入れるのは早かったと思う。そうでなくては、私の頭の中にある風景の説明ができないから。
ずっと進んだ科学文明。治安のよい綺麗な街並み。どれも今私が住んでる場所より進歩している。
この国どころか町からも出たことのない私だが、あんなに文明が進んでいる国はこの世には無いと思う。
私の生まれ変わった国、どこだここ?少なくとも日本ではないが、幸いなことに言葉は通じる。もし赤ん坊の頃から前世の記憶があったら、覚えるのは大変だったろうな。
てか文明レベルから考えて、過去か…異世界…?
現世での家族は母だけだった。前世は、もちろん知らん。
とても美しい母だった。透き通る白い肌に流れるプラチナブロンドの髪。長い睫毛に縁取られた青い瞳に整った顔立ち。絶世の、いや傾国の美女といっても差し支えなかろう。私はそー思う。
そして母以外の家族を私は知らない。父もじじばばも。話題にすら上がったことはない。母だけが唯一の身寄りだった。
そんな母が亡くなった。病に侵され痩せ細り、最期まで私の身を案じてくれていた。
ごめんね、ごめんね。愛してるわ、私の娘…
そう言って、息を引き取った。私も母が大好きだった。愛していた。そしてこの時はまだ前世の記憶も戻っておらず、ただの子供だった。
なので私は母は眠っただけだと思い、目を覚すのを待っていた。
一日経ってもまだ起きない。疲れてるのかな?もうちょっとしたら起こしてみよう。
いつもいい匂いのする母から異臭が漂ってきた。なんだか顔色も悪い?
母の同僚が訪ねてきた。何日も無断欠勤をする母を心配してのことだった。
その後は大変だった。大人達がやってきて、母を何処かへ連れて行こうとする。私は連れてかないで!と泣き叫んだ。
そんな私を宥めてくれたのは近所のおばちゃん達。落ち着いたら、私の方を見てヒソヒソ会話をしていた。
今にして思えば、私の身の振り方を話し合ってくれていたのだろう。ただの子供だった私は、母がいなくなり不安でたまらなかった。
そうして私は教会に連れて行かれた。そこには、同じようなみなしごが何人かいた。
暫くは馴染めなかった私も、神父様やシスター、お兄ちゃんお姉ちゃん達のおかげでみんなと仲良くなれた。
その頃にはもう、母には二度と会えないんだと理解できるようになっていた。
すごく悲しかったけど、ここには同じような境遇の子供達がいた。そのおかげか、なんとか前を向いていられるようになった。
そしてここからが重要。私が前世を思い出したきっかけ。
ある日教会に、貴族の令嬢がきた。慈善活動というやつだ。
そのお嬢様を見た途端、私の脳裏にある言葉が浮かんだ。
「悪役令嬢、リリーナラリス…?」
そのまま私の意識は途絶えた。
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