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第14章 どうやら終末は近づいてきているようです。

終末の瓶(かめ)

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 犯人が死んだ日の夜。

 シュオルの町から数百メートル離れた場所。
そこは謎に包まれた遺跡(仮)と呼ばれている場所である。
古代の崩れた銅像や闇に飲まれた雰囲気。
砕けた大理石の柱、誇りを被った古代の絵画。
ここは昼間は観光地なのだが、町では夜になると幽霊が出るという心霊スポット扱いを受けている。
そんな場所に訪れたのは1台の馬車。
そして、遅れてその後ろからもう1台の馬車。
2台の馬車が夜にも関わらずこの場所を訪れていた。
2台の馬車は遺跡の前に駐車する。
その後はまず最初にその馬車から地面に足をつけたのは、金髪のロングヘアーで純粋な紅色目を持つの10歳の少女。
名をマナスルというこの少女はジャパルグ王国王女である。
そんな王女様がこんな真夜中に肝試しをしに来たなど思ってはいけない。
彼女は王族としての大切なお勤めを果たしに来たのである。

「……………」

昼間とは違う異質な雰囲気に足を竦める王女様。
しかし、その小柄な身体を側近は支えながら共に遺跡の内部へと歩いていく。

「大丈夫ですか?  王女様。
やはり今宵ではなく日を改めた方がよろしいのでは?」

「いいえ、それはダメです。つい昨日この場所を守る者達からの連絡が途絶えました。これは何かがあったという証拠です。すぐにでも確認しないと大変なことになります」

王女様はこの場所にある何かの事が心配でここに来たようだ。

「それは分かっておりますが……」

「これも王族の勤めなんですよ?
私の身が心配だという気持ちも分かりますが、今日はその為に王レベルの2人を護衛につけたんです」

彼女らの後ろには既に2人の男女が気を張り積めながら着いてきているのが確認できる。

「ね?  あの2人が護衛なら安心でしょ?」

「ええ、あの2人なら安心な部類ですね。ですが、性格が少し……」

どうやら側近には護衛の2人の性格に不満があるらしい。
彼は後ろの2人に聞こえないくらい小さな小声で王女様に不満を口にする。
しかし、どんなに小さな声でも護衛の男の方には聞こえていたようで、不快そうな表情を浮かべている。

「おい、吾らに何か申し上げる事でもあるのか?   阿呆者」

「いえいえ、何もないですよ。では、王女様急ぎましょう。」

下手に反論すれば命が危険だ…とでも思ったのだろうか。
側近は早口で返答すると王女様の手を引っ張って遺跡の入り口へと向かうのであった。



 今宵、王女様御一行がこの場所を訪れたには理由がある。
それはこの遺跡には重要な物が封印されているからである。
終末の瓶(かめ)。
高さは30m、さまざまな紋様や古代文字の画かれている。
伝説ではその中に世界を滅ぼすほどの何かが入っていると言われている。
とても危険な場所なのだが、封印さえ解かれなければ安全な場所。
だが昨日、その封印に問題があったのだろうか。
警備と連絡が取れなくなったのだ。
そこで瓶の再封印と警備員の捜索を行う為に彼女らはこの場所を訪れたのだ。
これは勇者の血も継いでいる王族への使命である。



 側近は早速遺跡の中へと入ると、懐中電灯で遺跡内に光を灯す。
その光に驚いたコウモリが数匹、慌てふためいて鳴きながら闇夜の空へと飛び去っていった。

「──薄気味悪いですね。気色悪い嘔吐が出そうな空気。感染症など起こらなければよいのですが」

どうやら、側近はこれ以上奥に行くのを躊躇っているようだ。
これには心が広い王女様も呆れてしまったようで、

「側近さん、そんなこと言ってたらどこにもいけませんよ。来たくないのなら外で待っていてください。私たち3人で行きますから!!!」

…と王女が言うと側近から懐中電灯を受け取り、後ろの護衛2人を呼んで一緒に先へ進んでいく。
側近は暗い遺跡内に取り残されてしまった。
側近の足元からはカサカサと地面を生き物が這う音が聞こえたり、遠くから狼の遠吠えが聞こえたり、何かの生き物の唸り声が聞こえてくる。
正直、このまま置いていかれると側近の身に何が起こるか分からないほど怖い。
側近は一瞬感じた恐怖に対抗するために落ち着いて深呼吸を行う。
そして、右を見て左を見て左を見て、頭を横に振って雑念を取り除く。

「──ッ。分かりました分かりましたよぉ~。お供します。王女様に何かあってはいけませんからね!!!!」

側近は大声で叫ぶと、3人の跡を追うのであった。



────────────────
    遺跡の奥。
そこには広々としたまるでコロッセオのような場所がある。
普通の人がたどり着くことは出来ない場所。
ここが本当に地下なのかと思わせるほどの大きな空洞。
そこには終末の瓶が壮大なスケールで置かれている。
ちなみにここが最下層ではない。
この先にもとある古代の遺品があるのだが、ここでの話は省かせていただき、また別の機会に話すとしよう。
それより、時は王女様御一行がこの遺跡の前に馬車を止めた時より始まる。

「騎士レベルの付喪人が20人も負けてしまうなんて……」

1人の女性が目の前の死体の山に腰を抜かし地面に尻をつけている。
彼女の目の前には心臓に穴を開けられてもピクピクと脈打っている20の死体達。
いや、性格には死んでいない者もいるが関係なく山のように摘まれている。

「あと数人なり。
あと3人に負の感情はいまいらぬ。
あとは予備の魂が要。
もしもの料に魂は要。
さぁ、なんぢの負の感情を給へむ」

そう言って、猿のように両腕を支えにして死体の上に足を乗っけた黒い存在は暗闇の顔でニヤリと笑っていた。
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