上 下
205 / 294
第13章 どうやら犯人は八虐の不道のようです。

A heart that never gives up.

しおりを挟む
 2体のスポンジマンが救援に来てから数分後。
2人の王レベルと2体のスポンジマンとの戦いは終結していた。
2体のスポンジマンによって築かれた2人の王レベルの丘。
かろうじて息はしているが、血に染まった制服と、血に染まった看守服が戦いの状況を静かに語っている。
さすがの紅葉や山上も1体が限界だったのだろう。
一瞬のうちに犯人によって逆転されてしまったのだ。

「──これで静かになる。やっと安心した幸せな生活を送ることができるよ。
そうだな。君たちには礼を言わなければならない。ありがと、これで私のスポンジマンは更に強くなった。
それと喜んでくれ。もう君達を殺そうとは思わなくなった。
なんだか興味がなくなっちゃったんだ。
もし殺すつもりなら、君達に出会った瞬間から空気に仕込ませて殺していたんだけどね」

「てめぇ………」

山上は辛そうに犯人の顔を見上げながら呟く。

「─それにこの姿がバレても問題ない。最悪、別の人生を始めればいいからね。
何かしら、あのカフェと関係を持てばいいんだ。
客としてや配達員としてやバイトとしてね。はぁ、この姿も今日が最後かな。なんだか少しショックだよ」

犯人は地面に這いつくばった2人に背を向けて彼らに話しかけていたのだが……。
彼は急に態度を変えたかと思うと、山上の腹に蹴りを入れ始める。

「だけど、これから君達をボコボコにしなきゃ。
じゃなきゃ。このイライラが治まらない!!
私も今の君達みたいに生死をさまよったんだからね!!」

犯人は怒りを露にして、山上の腹を蹴り続ける。
全力の力を込めて、山上に蹴りを入れていく。

「ウグァアッ!?」

何度も何度も蹴りを入れられる山上は痛みに耐えながら苦しんでいる。

「おらおら、どうしたんだい?
まだまだ私の堪忍袋の緒は切れたままなんだよォォ!!!
泣けよ。早く泣くんだよォォォォ!!!」

何発も何発も山上の腹に蹴りを入れる犯人。

「…………………ッ」

すると、山上は小さな小さな声で何かを呟く。
何かの謝罪の言葉だろうか。
それとも遺言だろうか。
犯人はその彼の言葉が気になったようで、

「なんだって?
聞こえないな~。もう少し大きな声で喋れよ。やれやれ、しょうがないな」

犯人は山上が遺言のように呟く言葉を聞くために、しゃがみこんで山上の体に耳を澄ませてみる。
すると、聞こえてきたのは……。

「──俺たちの勝ちだ……って言ったんだぜ」

山上はそう言うと、犯人の胸ぐらを掴む。
その行動に何かを察した犯人。
逃げようと動く犯人であったが、山上の腕の力が強くて逃げ出すことができない。

「スポンジマン達!!
この2人を殺せ!!!!」

しかし、犯人が命令した時には既に遅かった。
紅葉は犯人の注意が山上に向いている間に、折紙の能力で刃物を作り出していた。
その刃物を紅葉は犯人に向かって投げ飛ばしてきたのだ。



 次の瞬間、背中に走る痛み。

「ウギャァァァァァ!!!!」

犯人の背中に刃物が突き刺さっている。
その刃物によって刺された傷痕から大量の血が流れ落ちている。
背中には刃物傷。
正面にはポツポツと空いた傷穴。
その痛みは想像を絶するほどのものであろう。

「これは……ウグッ……こんなことが起こるはずがない。ここまで追い詰められるなんて事があるわけが…………ない」

犯人の感情はようやく焦りを感じ始める。
このままでは負けてしまうと心の底から恐怖し始めているのだ。

「ふふっ…………」

そんな犯人の姿を見て、倒れたままの山上は安心した表情を浮かべて笑っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

大陸鉄道の死神 〜【二重人格】で【一時間しか動けない】異世界諜報員は復讐のために暗躍する〜

佐渡の鹿
ファンタジー
ー 勇者が魔王を滅ぼす代償にこの世界から魔力が消滅した ー 異世界の大陸にある『霧江大陸鉄道社』。そこで働く優しい少年「三船春ニ」には本人も知らない秘密がある。 それは彼に二つの魂が宿っている=【二重人格】と言うこと。もう一つの魂は「三船雪一」彼の双子の兄であり、【死神】と呼ばれる大陸最強の諜報員だった。 失ったはずの兄弟が一つの体に宿る奇妙で歪な肉体、その原因を作った男に復讐するために暗躍する。 〜チート無し・転生無しの異世界大正ロマン風スパイファンタジー開幕〜

転生幼児は夢いっぱい

meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、 ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい?? らしいというのも……前世を思い出したのは 転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。 これは秘匿された出自を知らないまま、 チートしつつ異世界を楽しむ男の話である! ☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。 誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。 ☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*) 今後ともよろしくお願い致します🍀

Keep Yourself Alive 第六感の場合

東山統星
キャラ文芸
超能力者の超能力者による超能力者のための学園である 「創成学園横浜校」は、超能力者の中でも別格の存在である第六感ことイリイチというロシア人の殺し屋の獲得に成功する。 学園を中心にした陰謀と茶番、蠢く欲望と惨めで薄っぺらい自己愛。悲劇と喜劇。意地の悪い自己保身とそれを包み込む偽善。 何もかもが狂っている世界で生き延びていくために、超能力者たちは今日も闘っていく。

闘え☆桂ちゃん!

くにざゎゆぅ
ファンタジー
壁ドン流し目なんのその! 美形の先輩方に翻弄されながら、今日も闘う女の子!  ピンク色の似合う可愛い女子高生を夢見るわたし、桂(かつら)。 友との平和で楽しい高校生活を、ひっそりと送りたいだけ……。 なのに! なんで、わたしが異能系戦隊ピンクに選ばれたの!? ピンクが似合う女の子になりたいけれど、闘う戦隊ピンクになりたいわけじゃない。 悩むわたしの周りには、導き、あるいは翻弄させる美形の先輩方が次々と出没。はからずも逆ハーだけれど、いまは楽しむ余裕がない。  闘う?  闘わない? わたしが向かう未来はどっち!? 夢見るヒロインが巻きこまれた、ちょっぴり異能系成長物語。 ※他サイトでも公開中です。

みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお
ファンタジー
【書籍化します!】2022年12月下旬にレジーナブックス様から刊行されることになりました! 定番の転生しました、前世アラサー女子です。 前世の記憶が戻ったのは、7歳のとき。 ・・・なんか、病的に痩せていて体力ナシでみすぼらしいんだけど・・・、え?王女なの?これで? どうやら亡くなった母の身分が低かったため、血の繋がった家族からは存在を無視された、みそっかすの王女が私。 しかも、使用人から虐げられていじめられている?お世話も満足にされずに、衰弱死寸前? ええーっ! まだ7歳の体では自立するのも無理だし、ぐぬぬぬ。 しっかーし、奴隷の亜人と手を組んで、こんなクソ王宮や国なんか出て行ってやる! 家出ならぬ、王宮出を企てる間に、なにやら王位継承を巡ってキナ臭い感じが・・・。 えっ?私には関係ないんだから巻き込まないでよ!ちょっと、王族暗殺?継承争い勃発?亜人奴隷解放運動? そんなの知らなーい! みそっかすちびっ子転生王女の私が、城出・出国して、安全な地でチート能力を駆使して、ワハハハハな生活を手に入れる、そんな立身出世のお話でぇーす! え?違う? とりあえず、家族になった亜人たちと、あっちのトラブル、こっちの騒動に巻き込まれながら、旅をしていきます。 R15は保険です。 更新は不定期です。 「みそっかすちびっ子王女の転生冒険ものがたり」を改訂、再up。 2021/8/21 改めて投稿し直しました。

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

処理中です...