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第13章 どうやら犯人は八虐の不道のようです。

簀巻の決意と四阿お姉ちゃん

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 四肢が引き裂かれただけでなく、肉片までもが飛び散る。
金剛に返り血がかかることはなく。
金剛は未だに座っている。
そして、もう占い師の原型すらない死体の中からスポンジマンが飛び出してきた。

「まったく、私をそこまで信用していいんですか? リーダー」

少年は、顔を覆っていたフードを外し、呆れた表情を見せつけ金剛に言い放つ。
これが少年の能力、スポンジの付喪人である。

「仕掛けていたのは知っていたからな。まぁ、覚悟など決めずに息子とやり直せばよかったものを……。あの世で妻に詫びるがよい」

そう言って金剛は立ち上がると、死体をそのままに3人で逃げていった小隊の元へと歩き出すのであった。





 そして、誰もいなくなった夜空の下に、2人の男女が立っていた。

「……」

「……」

声を出そうとしても何も声を出すことが出来ない。
何と声をかければよいか分からない。
四阿が悩んでいると、占い師の息子が声を出す。

「なぁ、なんで僕を助けた? あいつらの仲間だろ?」

四阿は頭を抱えた。
やっぱりその話題について聞くか…とでも思ったのだろう。

「───目の前で若い子が死ぬ姿を見たくなかったのよ」

「そう……」

四阿の返しを無表情で返してくれた占い師の息子。
今度は四阿が占い師の息子に問う。

「ねぇ、どうするの?
家出は続けるの?」

「いや、家出はやめた。僕は旅に出るよ。
お父さんにいってきますを言えるようにね。それにもう魔王軍に母も父も殺されたんだ。仇討ちでもしようと思い始めたよ」
「仇討ち……そんなことしたらせっかくの若い子が殺されてしまう」と思って焦った四阿は、魔王軍幹部らしからぬ行動に出る。

「そう、じゃあ良いものをあげるわ」

そう言うと四阿の分身は粘土で出来た身体の中から、謎の紋章とテープを取り出す。

「これは真ルイトボルト教の紋章。
着けた瞬間、着ける前の記憶は飛ぶけど、内部には入れる。まぁ、洗脳されるけどね。
でも、何年後かにもしも解放されたら、着ける前の記憶も引き継がれるわ。
その間、魔王軍に命を狙われることもない」

「つまり、スパイになるってこと?」

「そうよ。それに安心しなさい。占い師はあんたが仲間といる幸せそうな未来を見た。
つまり、解放される日は来るのよ。そこで強き者に手に入れた機密情報を伝える。そして、仇討ちをするのよ」

そう言って、四阿の分身から2つの物を受けとる。
その時、彼女は言い忘れた事を思い出したようだ。

「あっ、それとあの水晶玉も一緒にテープに貼り付けなさい。
父の形見として、付喪人になるのよ。
それじゃあ、お姉ちゃん行くから」

四阿の分身は伝える事を伝え終わると、粘土の分身を解除し始めた。

「あの……」

占い師の息子は四阿を呼び止める。

「どうして、ここまでして僕を助けた?」

もともと彼女は敵の仲間なのだ。
なぜ、敵を生もうとするのだろう。
…と占い師の息子は考えたのだが、四阿の分身はこちらを見ることもなく。

「世界中の弟や妹を守るのも、お姉ちゃんの務めなのです~。それじゃあ、長生きしてね~」

そう言い残すと、四阿の分身は粘土となって消えていった。

「あんたも長生きしてくださいね」

占い師の息子は、消え去った四阿の分身に向かって、感謝の意を込めて礼を言った。



─────────────────


    朝日が上る。
太陽は広大な草原に朝を運んできた。
息子は朝日がきれいに見える場所に父のお墓を作ったのだ。
母が生きていた時によく連れてきてくれた朝日が一番きれいに見える場所。
その場所に父が眠っている。
墓石には父の名前を彫り、そこに花を供える。

「お父さん」

占い師の息子は、父親の墓の前で手を合わせる。

「お母さんと2人で見守っていてください」

そう伝えると、息子は墓に向かってこう言った。
お母さんもお父さんも魔王軍によって旅立ってしまった。
ならば、残された子供は何をすべきか。
奴らと戦い勝つ自信はない。
ならば、いつか自分を救う者が現れると信じて、スパイとして活動する。
それしか彼の復讐の道はない。
お父さんが最後に占った自分の未来が来ることを信じて……。
彼は自分を捨てるのだ。
貼り付ければ、自分が戻ってくるのはいつか分からない。
だが、未来を信じ、救いを信じていくしかない。
占い師の息子は、覚悟を決めると別れの言葉を父に伝える。

「お父さん。しばらく墓参りには行けそうにない。寂しがって化けて出てこないでよ。
僕はお父さんの言ってたレールの道を進めない。
僕が魔法学校に通うこともない。
でも、全てが終わったらまたここに戻ってくるよ。
きっと笑顔で戻ってくる」

生まれ育った町、この場所からの朝日にも別れを告げる。
そして、テープで紋章と水晶玉を繋ぎ……。

「それでは行ってきます」

そう言うと、占い師の息子は自身の体にもペタッと貼り付ける。



    太陽は人々に朝の訪れを伝える。
いつもの日々を伝えるために……。
だが、かつての彼はもういない。
それでも朝日は平等に大地を照らし、美しく、目映く、新しい日の誕生を祝っていた。
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