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第13章 どうやら犯人は八虐の不道のようです。
簀巻の封印された過去
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何年も前のシュオルの町に、一軒の占い屋がありました。
そこに住んでいたのは、1人の占い師とその子供。
占い師は自身の魔法の能力で、占いをおこなってお金を稼いでいました。
占い師の家系はもともと、魔力の強い家系で、先祖の有名な血をひいてはいましたが、その噂がなかなか広まらず、あまり収入が稼げない日々。
なので、家は少し狭いくらいでしたが、それでも近所の人の手助けもあってか暮らしていました。
「お父さん」
「どうした?」
「その……実は今度ね」
男の子は少し困った顔を浮かべながら、お父さんにねだろうとしています。
「小遣いか? じゃあこれで足りるだろう」
そう言うとお父さんは、その子供に500円玉を手渡します。
「いや、その……」
何かを言いかけた男の子は勢いにのまれて小銭を受け取ってしまいました。
何かを言いたそうな顔をしていましたが、お父さんは気づいてくれません。
「すまんが、今日は眠らせてくれ。明日も仕事がいっぱい詰まっているんだ」
そう言うとお父さんは男の子の頭を撫でて、2階の寝室へと行ってしまいました。
その背中は息子のために努力しているカッコいい背中に見えた。
1階にひとりで取り残された男の子は、頬を膨らませながら、窓の外を眺めます。
窓の外は素晴らしく広がる星空。
「きれいだな」
男の子の目の先には綺麗な夜空。
「お父さん。いつになったら僕とお出かけしてくれるかな」
そっと呟いた本音。
彼にもお父さんが仕事で忙しい事くらいは分かっています。
ですが、友達の少ない彼にとっては、それが孤独に感じるのです。
数日後。町に1つしかない小さな学校からの帰り道。
彼はいつものように独りでトボトボと帰っていました。
ちょうど、小さな病院の前を通った時、
「やぁ、占い師の所の坊っちゃんこんにちは」
『大楠(おおぐす)』院長の夫人が声をかけてくれました。
「こんにちは。
「ふふふ、君はえらいわね。うちの娘たちも見習って欲しいものなんだけど」
彼女は2人の娘と院長と暮らしている女性で、いつも明るく男の子に話しかけてくれます。
「あっ、それじゃあ失礼します」
「あら~足を止めさせちゃった。じゃあ、気をつけて帰るのよ~」
男の子の背中に向かって手を振り続ける夫人。
母親のいない男の子にとっては、それがとても嬉しく照れくさい。
しかし、そんな心優しい女性に町の人はあまり信用していない。
それはもちろん、家もであるが……。
彼女と別れた後も、住宅の前で立ち話をしている女性達の声が耳に入ってくる。
「見て見て根暗さん所のお子さんよ。ホラ吹きさんとは仲が良いみたいね」
「しッ、聞こえるわよ。
まぁ、占い師だかなんだか知らないけど、商売場所も性格も暗い可哀想な人。家系は良いのに人々に知られないのよ」
僕の家の事を言っているのだろうか。
変なアダ名までつけられてしまったようだ。
でも、そんなことなら学校でも言われなれている。
だが、それは僕だけのものではなかった。
「それなら、ホラ吹きさ。大楠さんの所だって。
あの人、元王レベルだかなんだか知らないけど、あんな穏やかな人の口からあり得ないホラばっかり出てくるのよ。聞いてても嘘って丸わかりなの」
僕の家の悪口だけでなく、病院の院長の悪口まで聞こえてくるのは耳が痛くなりそうだ。
しかし、僕には言い返す勇気がない。
僕は聞こえないフリをしながら、その場を後にした。
数年後。
「はい、いらっしゃいませ」
お父さんの仕事が急に増加し始めた。
占い師の噂でも拡がったのだろうか。
家の前には客の行列ができはじめ、放課後の居場所さへも失っていった。
評判の占い師として有名になり、観光客がこの町に来るようにもなった。
他のお店もそのご利益に当たろうと必死に商売している。
商売上手、町の活性化、お金持ち、町一番の占い師…などと世間からは言われ続けた。
それから、学校でも友達ができはじめたのは嬉しかったが、これも有名になったお陰だろうか。
そして、数日後の夜。
お父さんから呼び出された。
もしかしたら、お金が貯まったから外出でもしてくれるかもしれない。
そう思い期待して行ってみると……。
「数か月後、新しい家に引っ越そうと思っているんだ」
「新しい家?」
「ああ、良い場所を見つけてね。
お前もほら、俺の跡継ぎになるんだから、魔法を学ぶべきだろ?
そこなら、馬車乗り場も近いし……通学にも便利だ」
どうやら、お父さんは僕に跡を継いで欲しいようだ。
しかし、やっと掴んだ平和を離したくはない。
「でも、僕にはやっと友達が出来たし、占い師なんてなりたくないよ」
「いやいや、友達だってすぐに出来るぞ。それに家は代々魔力が多い家系だ。占い師なら絶対に食っていける」
お父さんは僕の話も聞こうとはしないで、話を進めていく。
「あっ、もし占い師がダメでも魔法を学ぶべきだ。
隣国に素晴らしい魔法学校があるらしい。
国外に引っ越そう!!!
この国は魔法が廃れそうになってきてるからな。特に国市は駄目だ。付喪神に依存しない海外に引っ越そう!!」
僕の意見を勝手に解釈して、魔法を学ばせようとしてくる。
僕はそんなものじゃなくて、もっと科学とか工業とかの普通の仕事につきたいのに……。
「…………」
僕は何も自分の意見を言えなかった。
僕はお父さんの話を聞き終えると、外へ出てボーっと空を眺める。
星空は何も変わらない。
でも、周囲の反応やお父さんの性格とは違う。
爆発的に評判が広まるまでは、こんなこと言い出しもしなかったのに……。
こんなことになるなら、有名な家系を隠して、ひっそりと暮らしていた方がマシだったかもしれない。
…と当時の男の子はそう思いながら、星空を見続けていた。
客が来ない。
数日後、客足はぴったりと途絶えてしまった。
お父さんはずっと店を出し続けて、客が来るのを待っている。
「なんでだ。これからって時だぞ。いったい、何が原因なんだか」
お父さんは悩んでいる。
どうにかして、金を手にいれないと男の子を立派な魔法学校に通わせられないからだ。
お父さんはどうしても男の子に魔法を学ばせようしていた。その背中からは以前のように立派なものではなく。本当に心底悩んで焦った小さな背中だった。
「お父さん?
学校を卒業できたら僕も何か働くから」
男の子は気を使って話しかけたのだが。
「何か……だと? お前は何も分かっていないな!!!」
そう言って机をおもいっきり叩く父。
彼の心は焦りと不安で制御が出来なくなっていた。
「お前は俺の息子だ。素晴らしい家系の血筋だ。お前に普通の仕事なんてさせるわけがない。そんなの才能の無駄づかいだ」
だが、これも、お父さんもお父さんなりに、男の子の将来を考えて言っていることだ。
「お前の為だ。将来の為だ。
お前は他の奴らとは違う魔力の強い人間だ。
俺と母さんの息子なら、魔法を使える仕事につくしかない!!!」
激しく自分の息子に当たる父。
この生まれ持った魔力の才能を潰すのが惜しいと考えているのだ。
だが、それが逆に息子を苦しめていたことには気づけなかった。
「なんだよ……。そんなの。そんなの僕が一言でも頼んだの?」
「!?」
父は反論してきた息子に驚きを隠せない。
ついに男の子の怒りが溢れだしたのだ。
「なんで、僕の人生を勝手に決められなきゃいけないのさ。魔法なんて古くさい時代遅れだ。
僕は魔法なんて使わない!!!」
「なっ? これはお前の将来のためなんだぞ。
生まれ持った才能を無駄にして、凡人達と同レベルで生きるつもりか?」
「うん、僕はそれでも構わない。
例え、どれ程底辺に落ちたとしても、息苦しい決められたレールの上よりはマシだ!!!」
その言葉を聞いた瞬間、お父さんの怒りもピークに達した。
彼は勢いよく立ち上がり、全身を怒りで奮い立たせて男の子を睨み付ける。
「俺達がお前のために今までどれだけの事をしてあげてきたと思うか!!!
母さんだって、お前の将来ために働いて………」
「僕はあなたから、何も貰ってない。
家族旅行だって家族の時間だって愛だって!!
母さんがいなくなって、あなたはいつも仕事とお金と将来だけ考えて、僕の今を考えてくれなかった!!!」
息子の心のうちを聞き、更に父の心は砕けかけていた。
「愛………。
もう分かった。出ていけ、お前は他人だ。
そこまで言うなら、自分のレールを進め。俺は知らん」
そう言うと、父は2階の寝室へと行ってしまいました。
悲しい背中を見せながら……。
そこに住んでいたのは、1人の占い師とその子供。
占い師は自身の魔法の能力で、占いをおこなってお金を稼いでいました。
占い師の家系はもともと、魔力の強い家系で、先祖の有名な血をひいてはいましたが、その噂がなかなか広まらず、あまり収入が稼げない日々。
なので、家は少し狭いくらいでしたが、それでも近所の人の手助けもあってか暮らしていました。
「お父さん」
「どうした?」
「その……実は今度ね」
男の子は少し困った顔を浮かべながら、お父さんにねだろうとしています。
「小遣いか? じゃあこれで足りるだろう」
そう言うとお父さんは、その子供に500円玉を手渡します。
「いや、その……」
何かを言いかけた男の子は勢いにのまれて小銭を受け取ってしまいました。
何かを言いたそうな顔をしていましたが、お父さんは気づいてくれません。
「すまんが、今日は眠らせてくれ。明日も仕事がいっぱい詰まっているんだ」
そう言うとお父さんは男の子の頭を撫でて、2階の寝室へと行ってしまいました。
その背中は息子のために努力しているカッコいい背中に見えた。
1階にひとりで取り残された男の子は、頬を膨らませながら、窓の外を眺めます。
窓の外は素晴らしく広がる星空。
「きれいだな」
男の子の目の先には綺麗な夜空。
「お父さん。いつになったら僕とお出かけしてくれるかな」
そっと呟いた本音。
彼にもお父さんが仕事で忙しい事くらいは分かっています。
ですが、友達の少ない彼にとっては、それが孤独に感じるのです。
数日後。町に1つしかない小さな学校からの帰り道。
彼はいつものように独りでトボトボと帰っていました。
ちょうど、小さな病院の前を通った時、
「やぁ、占い師の所の坊っちゃんこんにちは」
『大楠(おおぐす)』院長の夫人が声をかけてくれました。
「こんにちは。
「ふふふ、君はえらいわね。うちの娘たちも見習って欲しいものなんだけど」
彼女は2人の娘と院長と暮らしている女性で、いつも明るく男の子に話しかけてくれます。
「あっ、それじゃあ失礼します」
「あら~足を止めさせちゃった。じゃあ、気をつけて帰るのよ~」
男の子の背中に向かって手を振り続ける夫人。
母親のいない男の子にとっては、それがとても嬉しく照れくさい。
しかし、そんな心優しい女性に町の人はあまり信用していない。
それはもちろん、家もであるが……。
彼女と別れた後も、住宅の前で立ち話をしている女性達の声が耳に入ってくる。
「見て見て根暗さん所のお子さんよ。ホラ吹きさんとは仲が良いみたいね」
「しッ、聞こえるわよ。
まぁ、占い師だかなんだか知らないけど、商売場所も性格も暗い可哀想な人。家系は良いのに人々に知られないのよ」
僕の家の事を言っているのだろうか。
変なアダ名までつけられてしまったようだ。
でも、そんなことなら学校でも言われなれている。
だが、それは僕だけのものではなかった。
「それなら、ホラ吹きさ。大楠さんの所だって。
あの人、元王レベルだかなんだか知らないけど、あんな穏やかな人の口からあり得ないホラばっかり出てくるのよ。聞いてても嘘って丸わかりなの」
僕の家の悪口だけでなく、病院の院長の悪口まで聞こえてくるのは耳が痛くなりそうだ。
しかし、僕には言い返す勇気がない。
僕は聞こえないフリをしながら、その場を後にした。
数年後。
「はい、いらっしゃいませ」
お父さんの仕事が急に増加し始めた。
占い師の噂でも拡がったのだろうか。
家の前には客の行列ができはじめ、放課後の居場所さへも失っていった。
評判の占い師として有名になり、観光客がこの町に来るようにもなった。
他のお店もそのご利益に当たろうと必死に商売している。
商売上手、町の活性化、お金持ち、町一番の占い師…などと世間からは言われ続けた。
それから、学校でも友達ができはじめたのは嬉しかったが、これも有名になったお陰だろうか。
そして、数日後の夜。
お父さんから呼び出された。
もしかしたら、お金が貯まったから外出でもしてくれるかもしれない。
そう思い期待して行ってみると……。
「数か月後、新しい家に引っ越そうと思っているんだ」
「新しい家?」
「ああ、良い場所を見つけてね。
お前もほら、俺の跡継ぎになるんだから、魔法を学ぶべきだろ?
そこなら、馬車乗り場も近いし……通学にも便利だ」
どうやら、お父さんは僕に跡を継いで欲しいようだ。
しかし、やっと掴んだ平和を離したくはない。
「でも、僕にはやっと友達が出来たし、占い師なんてなりたくないよ」
「いやいや、友達だってすぐに出来るぞ。それに家は代々魔力が多い家系だ。占い師なら絶対に食っていける」
お父さんは僕の話も聞こうとはしないで、話を進めていく。
「あっ、もし占い師がダメでも魔法を学ぶべきだ。
隣国に素晴らしい魔法学校があるらしい。
国外に引っ越そう!!!
この国は魔法が廃れそうになってきてるからな。特に国市は駄目だ。付喪神に依存しない海外に引っ越そう!!」
僕の意見を勝手に解釈して、魔法を学ばせようとしてくる。
僕はそんなものじゃなくて、もっと科学とか工業とかの普通の仕事につきたいのに……。
「…………」
僕は何も自分の意見を言えなかった。
僕はお父さんの話を聞き終えると、外へ出てボーっと空を眺める。
星空は何も変わらない。
でも、周囲の反応やお父さんの性格とは違う。
爆発的に評判が広まるまでは、こんなこと言い出しもしなかったのに……。
こんなことになるなら、有名な家系を隠して、ひっそりと暮らしていた方がマシだったかもしれない。
…と当時の男の子はそう思いながら、星空を見続けていた。
客が来ない。
数日後、客足はぴったりと途絶えてしまった。
お父さんはずっと店を出し続けて、客が来るのを待っている。
「なんでだ。これからって時だぞ。いったい、何が原因なんだか」
お父さんは悩んでいる。
どうにかして、金を手にいれないと男の子を立派な魔法学校に通わせられないからだ。
お父さんはどうしても男の子に魔法を学ばせようしていた。その背中からは以前のように立派なものではなく。本当に心底悩んで焦った小さな背中だった。
「お父さん?
学校を卒業できたら僕も何か働くから」
男の子は気を使って話しかけたのだが。
「何か……だと? お前は何も分かっていないな!!!」
そう言って机をおもいっきり叩く父。
彼の心は焦りと不安で制御が出来なくなっていた。
「お前は俺の息子だ。素晴らしい家系の血筋だ。お前に普通の仕事なんてさせるわけがない。そんなの才能の無駄づかいだ」
だが、これも、お父さんもお父さんなりに、男の子の将来を考えて言っていることだ。
「お前の為だ。将来の為だ。
お前は他の奴らとは違う魔力の強い人間だ。
俺と母さんの息子なら、魔法を使える仕事につくしかない!!!」
激しく自分の息子に当たる父。
この生まれ持った魔力の才能を潰すのが惜しいと考えているのだ。
だが、それが逆に息子を苦しめていたことには気づけなかった。
「なんだよ……。そんなの。そんなの僕が一言でも頼んだの?」
「!?」
父は反論してきた息子に驚きを隠せない。
ついに男の子の怒りが溢れだしたのだ。
「なんで、僕の人生を勝手に決められなきゃいけないのさ。魔法なんて古くさい時代遅れだ。
僕は魔法なんて使わない!!!」
「なっ? これはお前の将来のためなんだぞ。
生まれ持った才能を無駄にして、凡人達と同レベルで生きるつもりか?」
「うん、僕はそれでも構わない。
例え、どれ程底辺に落ちたとしても、息苦しい決められたレールの上よりはマシだ!!!」
その言葉を聞いた瞬間、お父さんの怒りもピークに達した。
彼は勢いよく立ち上がり、全身を怒りで奮い立たせて男の子を睨み付ける。
「俺達がお前のために今までどれだけの事をしてあげてきたと思うか!!!
母さんだって、お前の将来ために働いて………」
「僕はあなたから、何も貰ってない。
家族旅行だって家族の時間だって愛だって!!
母さんがいなくなって、あなたはいつも仕事とお金と将来だけ考えて、僕の今を考えてくれなかった!!!」
息子の心のうちを聞き、更に父の心は砕けかけていた。
「愛………。
もう分かった。出ていけ、お前は他人だ。
そこまで言うなら、自分のレールを進め。俺は知らん」
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