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第12章 どうやら魔王を討伐するようです。
魔王の城に暗殺へ
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「よいか? 駒ヶ回斗。今からエンディングまでは気を抜くな。お前には魔王の暗殺をしてもらうからな」
そう言うと蔵王は辺りを見渡し始めた。
おそらく、周囲に人がいないかを確認するためだろう。
そして、周囲に人がいないのを確認すると男は彼の腕を掴んでくる。
何の準備もしていないのに何を始めようと言うのだろうか。
「……!???」
「お前は正面から寝込みを…私は別の位置から狙撃を行う。いいな?」
「いや、良くない!!!
そもそもどうやって平行世界へ行くんだよ」
すべて準備を終えたような発言をしてきた蔵王に彼は疑問を投げ掛ける。
「そうか。いいか駒ヶ回斗。少しの間、目を瞑れ。これからの方法はお前の目には醜穢過ぎる。神の業を破るものだからな」
神を信仰している者がいったいどんな恐ろしい方法で異世界にいくのだろうか。
だが、彼がそこまで言うのには何か理由があるのだろう。
駒ヶは言われた通りに目を瞑った。
「本来の方法とは違う。禁忌な方法で付喪神の能力を引き出し利用する」
そう言うと、彼は何かの呪文を唱え始めた。
すると、目を瞑っている駒ヶの足元に何かが這うような気配を感じる。
ゾワゾワと冷や汗が出始めて、目を開けようにも開けるのが恐い。
何かが呻き、何かが心臓を握り潰そうとしてくる。
目を閉じているので目の前が暗いせいか、いろいろな想像が彼の頭の中を蠢いている。
まるで、全身の細胞がジワジワと深い沼に引きずり込まれていく様な感覚を味わいながら、少しずつ少しずつ意識が遠退いていく。
────────────────────────
俺は誰だ。
ここはどこだ。
今はいつだろう。
頭の中に浮かんだ人達は誰だろう。
俺はどこへいくのだろう。
目を開けようとしても、何故か目が開かない。
震えているのだろうか。
呑まれる。呑まれる。暗闇の中へ。
その時、俺の耳に入ってきた小さな小声。
「終了だ。目を開けても構わん」
男の準備はすべて終わったようだ。
その言葉に救われて、駒ヶの頭の中からは不安や恐怖が消え去る。
目を開けると、そこには赤黒い空。
周りはまるで地平線が広がっているかのように何もない。
草も水も……。
いや、正確には一つ。
ここからではよくわからないが、大きな城のような建物が建っていた。
「なぁ、なんだ? あの城は?」
不気味に一軒だけ佇んでいる城を見ながら、彼は蔵王に尋ねる。
「あれが魔王の城だ」
蔵王はそう言うと、その城に向かって歩きだした。
彼は本当に魔王を討ち取る気なのだ。
たったの2丁のショットガンを持って、世界を恐怖に陥れた魔王を討ち取ろうと言うのだ。
こんなにも早く訪れた最終決戦。
おそらく、幹部も全員倒されていない状況での魔王の暗殺は、どの平行世界を見回ってもこれが初めてだろう。
「よくぞここまで来たな勇者…」や、「この世界の半分をくれてやろう…」や、「この世界に災いあれェェェ…」なんて台詞や場面を飛ばした結果だけが残る終わり方。
その結果には魔王が倒されたとしかない。
体が震える。
俺が勇者になる?
俺達が本当に世界を救えるのか?
「どうした? 勇者になるのが不安か?」
「ああ、ここまで来て……だよな」
あの城へ近付くにつれて、どんどん自信がなくなっていく。
テストが近づいたら不安になる学生と同じような感覚を味わっているのだ。
そんな、不安で頭がいっぱいになった駒ヶに蔵王は、「そうか、ならあまり時間を賭けない方が良いな」と言って彼の腕を掴んできた。
そして、蔵王は彼の腕を引っ張りながら、あの城にめがけて走り出す。
そのスピードはまるでレースカーの様に早く走っている。
とても人間業では出せそうにない速さ。
蔵王は少しもスピードを落とさないまま、城に向かって走っているのだ。
そう言うと蔵王は辺りを見渡し始めた。
おそらく、周囲に人がいないかを確認するためだろう。
そして、周囲に人がいないのを確認すると男は彼の腕を掴んでくる。
何の準備もしていないのに何を始めようと言うのだろうか。
「……!???」
「お前は正面から寝込みを…私は別の位置から狙撃を行う。いいな?」
「いや、良くない!!!
そもそもどうやって平行世界へ行くんだよ」
すべて準備を終えたような発言をしてきた蔵王に彼は疑問を投げ掛ける。
「そうか。いいか駒ヶ回斗。少しの間、目を瞑れ。これからの方法はお前の目には醜穢過ぎる。神の業を破るものだからな」
神を信仰している者がいったいどんな恐ろしい方法で異世界にいくのだろうか。
だが、彼がそこまで言うのには何か理由があるのだろう。
駒ヶは言われた通りに目を瞑った。
「本来の方法とは違う。禁忌な方法で付喪神の能力を引き出し利用する」
そう言うと、彼は何かの呪文を唱え始めた。
すると、目を瞑っている駒ヶの足元に何かが這うような気配を感じる。
ゾワゾワと冷や汗が出始めて、目を開けようにも開けるのが恐い。
何かが呻き、何かが心臓を握り潰そうとしてくる。
目を閉じているので目の前が暗いせいか、いろいろな想像が彼の頭の中を蠢いている。
まるで、全身の細胞がジワジワと深い沼に引きずり込まれていく様な感覚を味わいながら、少しずつ少しずつ意識が遠退いていく。
────────────────────────
俺は誰だ。
ここはどこだ。
今はいつだろう。
頭の中に浮かんだ人達は誰だろう。
俺はどこへいくのだろう。
目を開けようとしても、何故か目が開かない。
震えているのだろうか。
呑まれる。呑まれる。暗闇の中へ。
その時、俺の耳に入ってきた小さな小声。
「終了だ。目を開けても構わん」
男の準備はすべて終わったようだ。
その言葉に救われて、駒ヶの頭の中からは不安や恐怖が消え去る。
目を開けると、そこには赤黒い空。
周りはまるで地平線が広がっているかのように何もない。
草も水も……。
いや、正確には一つ。
ここからではよくわからないが、大きな城のような建物が建っていた。
「なぁ、なんだ? あの城は?」
不気味に一軒だけ佇んでいる城を見ながら、彼は蔵王に尋ねる。
「あれが魔王の城だ」
蔵王はそう言うと、その城に向かって歩きだした。
彼は本当に魔王を討ち取る気なのだ。
たったの2丁のショットガンを持って、世界を恐怖に陥れた魔王を討ち取ろうと言うのだ。
こんなにも早く訪れた最終決戦。
おそらく、幹部も全員倒されていない状況での魔王の暗殺は、どの平行世界を見回ってもこれが初めてだろう。
「よくぞここまで来たな勇者…」や、「この世界の半分をくれてやろう…」や、「この世界に災いあれェェェ…」なんて台詞や場面を飛ばした結果だけが残る終わり方。
その結果には魔王が倒されたとしかない。
体が震える。
俺が勇者になる?
俺達が本当に世界を救えるのか?
「どうした? 勇者になるのが不安か?」
「ああ、ここまで来て……だよな」
あの城へ近付くにつれて、どんどん自信がなくなっていく。
テストが近づいたら不安になる学生と同じような感覚を味わっているのだ。
そんな、不安で頭がいっぱいになった駒ヶに蔵王は、「そうか、ならあまり時間を賭けない方が良いな」と言って彼の腕を掴んできた。
そして、蔵王は彼の腕を引っ張りながら、あの城にめがけて走り出す。
そのスピードはまるでレースカーの様に早く走っている。
とても人間業では出せそうにない速さ。
蔵王は少しもスピードを落とさないまま、城に向かって走っているのだ。
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