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第9章 どうやらエルタは八虐の不義のようです。

バラバラになる仲間たち

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 俺たちは馬車を廃城の側に停めると、檻から黒と妙義を出させた。

「──私が寝ている間にそんなに時間が経っていたのか」

そう言って妙義は馬車から降りた瞬間。
廃城の方向からまるで二人の到着を待っていたかのように風が吹き荒れる。

「──いいな。開けるぞ」

玄関前の扉にたどり着いた俺たちは、駒ヶの合図を待っていた。

「──いいか。開けるぞ」

駒ヶの合図によって全員で中に飛び込み、悪魔と戦う。という簡単な作戦が成功するとは考えにくいが、そんな作戦に乗っかってしまう自分も悪いのだ。
俺は唾を飲み込むと心を落ち着かせるために呼吸を整えた。

「──いいか。開けるぞ」

「早く開けなさいよ!!!」

駒ヶの合図がいつまでも来ないことに不満を持った黒は、駒ヶの代わりに扉を開けてしまった。



 黒が扉を開けた途端、廃城の中から冷たい冷気が外へと流れていく。
俺が試しに中を覗いてみると、そこには誰もいなかった。
ただ、ろうそくが二本だけ置き机に置かれているだけである。

「誰もいないのか? でも、このロウの溶け具合を見ても、つい最近付けられたものだ」

警戒しながらも廃城の中に突入したのだが、やはり人の隠れている気配は感じない。
一方、駒ヶは火の灯ったろうそくを不思議そうに推理しながら眺めている。
そもそも先に、玄関になぜ置かれているのかという疑問が生まれたが、ろうそくの意味がまだ分からないので予想ことも難しい。

「なぁ、駒ヶ。つい最近付けられたろうそくなら、敵が近くにいるかもしれない。注意しようぜ」

「そっ、そうだな」

ひとまず、俺は周囲の警戒を怠らない事が重要な事だと考えた。
ハッと我に帰った駒ヶは、ろうそくから離れる。

「なぁ、どうする? このまま先に進むか?」

俺は黒と妙義の意見を聞こうと後ろを振り向いたのだが。

「……!? おい、二人がいないぞ」

先程まで彼女たちがいた場所には誰もいなくなっていた。



 「そんな何で? 確かに二人は僕の後ろから着いてきたはず。あっ、きっと外に出たんじゃないですか? 扉が開いてましたし……」

英彦はそう言って二人を呼ぶために、扉の方向を振り返ったのだが。

バタン!!
ガチャッ。

誰も触っていないのに扉は閉まり、鍵がかけられたようだ。
良くあるホラーものだが、この状況ではいつもより不気味に感じる。

「──閉められた。やってしまったな。廃城に入らず、連盟と袋叩きにするべきだった」

駒ヶは悔しがり、壁を一度殴って自分を落ち着かせていた。
だが、この二人の失踪のお陰でろうそくの謎が完璧に解明された
おそらく、あの意味は人質の数だ。
だから、ろうそくは二つあった。
しかし、そこで再び疑問が生じてしまう。
それは、いつの間に連れ去ったかという疑問である。

「明山さん、二人は無事でしょうか?」

「あいつらなら大丈夫だろ。
黒がいるんだ。問題はないはずだ。
それよりはどうやら彼方さんは、俺たちに会いたいようだしな。
行くぞ!!! 駒ヶ、英彦。
あいつに拳を一発かましてやろうぜ」

二人の安否が不安に思っている英彦からの質問に、俺はそう言って廃城の奥へと進むことにした。
玄関から先は通路になっており、沢山の部屋が並んでいた。
俺たちはひとつひとつ部屋の中を確認していくが、どの部屋にも黒と妙義の姿はなかった。



 しばらく、そのまま通路内の部屋を確認して歩いていくと、通路の先が視界に写った。

「なぁ、二人とも気を引き締めろよ。広い場所に出…!?」

俺は後ろの二人に気を引き締めるように言おうと振り返ったのだが、その二人すらいなくなっていた。
俺は近くの部屋に入り、二人を捜すのだがあるのは先程までなかったはずのろうそく二つだけであった。
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