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第8章 どうやらエトナとセンテネルは謀叛と悪逆のようです。
暴喰乱舞
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痛みはない。いつまでたっても痛みはない。
「もう大丈夫だ。おい御前怪我はないか?」
痛みの代わりにどこか安心できる声が聞こえる。
能力無しの付喪人は、恐る恐る目を開く。
すると、目の前にいた男が拳を突き出して、奴を殴り飛ばしていた。
その男は紳士的ではなく、どっちかというと野性的で……。
その異名が付いたのも納得がいく。
「あなたは銀狼の空木?」
目の前に現れた王レベルの付喪人。
彼はまるで救いのヒーローの様に颯爽と現れたのだ。
しかし、真ルイトボルト教の信者は逃げることなく空木に向かって来る。
「邪魔をしないでいただきたいです!!!」
諦めの悪い信者は大声を上げながら走ってくるのだ。
「しょうがないな。月は出てないが狩りの時間だ」
空木はそう言うと、懐から鉤爪のような武器を取り出して腕に装着する。
スパッ…!!!
すると、瞬きもしないうちに、その武器によって信者は切り裂かれてしまった。
「いつの間に……気づかなかった………。無念残念後悔羞恥」
そうして、血を流しながら地面に倒れる信者。
その血の匂いに誘われて、蟲達が一斉に空木の元へと飛んでくる。
だが、空木には問題がない事だ。
「『暴喰乱舞(ぼうしょくらんぶ)』」
彼は飛びかかってくる蟲共をスパッスパッと切り裂きながら、みんなを守るようにして戦う。
一瞬の無駄もなく、一瞬の遅れもなく。
それはまさしく餌場に迷いこんだ獲物の肉を抉り喰らう狼のように斬る。
そして、彼は他のメンバーと協力しながら着々と敵を倒していった。
「まぁ、そうだよな。援軍として嬉しいのは力のある奴らだからな。」
「私たちが来た意味も無かったですね」
妙義と死神さんが着いた時には既に反撃は始まっていたのだ。
王レベルの付喪人達が戦況を覆してくれている。
「ここは彼らに任せても良さそうだな。死神さん。王女様が心配だ」
「はい、そうですね。戻りますか」
そう言って二人はその場を後にしようと振り返ると、目の前に小さな幼女がいた。
先程までいなかったはずの少女がいたのだ。
「ねぇ、お姉ちゃん達? 私迷っちゃったの。私を助けて?」
ゴスロリ姿の幼女は、困り果てた表情で二人を見つめていた。
「お嬢ちゃん? どうしたんだ。迷子か?」
妙義は優しく少女に声をかける。
「ここは危ないですよ。早く行きましょう」
死神さんは幼女に手を差しのべようと、右手を彼女の前に出した。
「いなくなっちゃったの。知らない?」
幼女は目に涙を浮かべながら死神さんに引っ張られて走る。
「すまないが、君の家族については分からないんだよ。でも私たちも探してあげるからね」
三人はその場から離れるために走り出す。
妙義はどこかにこの幼女を隠して安全を保証するために馬車の選択を始めたのだが、
「そうなのね。じゃあ、いいわ。ありがとうお姉ちゃん達」
少女はそう言うと死神さんの手を離す。
「何をやってるの? ここから逃げないと………」
死神さんは振り返ると、幼女に向かってもう一度手を差しのべようとするのだが。
幼女は妙義の方へ指を指して、
「だって、そっちのお姉ちゃんから殺気が溢れてるわ」
「!?」
幼女の発言に妙義も死神さんも驚いている。
「お姉ちゃんの視線……。逃げようとしたときにあなたの視線がとある馬車を他の馬車よりも避けるように見ていた。そしてあなたは今、8番目の馬車から目線を反らした」
「!?」
二人の額を汗が流れ落ちる。王女様の馬車は8番目である。それを確認した幼女は更に問い詰めた。
「最初から私を怪しんでたのよね? こんな所に少女がいるなんておかしい。それに山の中でゴスロリ姿になるなんてそれも奇妙だと思ってるね。そして探っている。私の正体を知りたがっている」
三人の間に不穏な雰囲気が流れ始める。
周りにいた人々は気づいていない様子だ。
「知りたければ教えてあげるわ。本当なら全ての馬車を壊すつもりだったけど。手間が省けた。教えてくれたお礼に教えてあげるわ」
少女は一歩前に出て二人を睨み付ける。
その冷たい目に二人の皮膚に少しだけ鳥肌がたってしまう。
「私の名は『エトナ』。いや…俺の名はと言った方がいいな。
俺は魔王軍幹部八虐、悪逆のエトナ」
「もう大丈夫だ。おい御前怪我はないか?」
痛みの代わりにどこか安心できる声が聞こえる。
能力無しの付喪人は、恐る恐る目を開く。
すると、目の前にいた男が拳を突き出して、奴を殴り飛ばしていた。
その男は紳士的ではなく、どっちかというと野性的で……。
その異名が付いたのも納得がいく。
「あなたは銀狼の空木?」
目の前に現れた王レベルの付喪人。
彼はまるで救いのヒーローの様に颯爽と現れたのだ。
しかし、真ルイトボルト教の信者は逃げることなく空木に向かって来る。
「邪魔をしないでいただきたいです!!!」
諦めの悪い信者は大声を上げながら走ってくるのだ。
「しょうがないな。月は出てないが狩りの時間だ」
空木はそう言うと、懐から鉤爪のような武器を取り出して腕に装着する。
スパッ…!!!
すると、瞬きもしないうちに、その武器によって信者は切り裂かれてしまった。
「いつの間に……気づかなかった………。無念残念後悔羞恥」
そうして、血を流しながら地面に倒れる信者。
その血の匂いに誘われて、蟲達が一斉に空木の元へと飛んでくる。
だが、空木には問題がない事だ。
「『暴喰乱舞(ぼうしょくらんぶ)』」
彼は飛びかかってくる蟲共をスパッスパッと切り裂きながら、みんなを守るようにして戦う。
一瞬の無駄もなく、一瞬の遅れもなく。
それはまさしく餌場に迷いこんだ獲物の肉を抉り喰らう狼のように斬る。
そして、彼は他のメンバーと協力しながら着々と敵を倒していった。
「まぁ、そうだよな。援軍として嬉しいのは力のある奴らだからな。」
「私たちが来た意味も無かったですね」
妙義と死神さんが着いた時には既に反撃は始まっていたのだ。
王レベルの付喪人達が戦況を覆してくれている。
「ここは彼らに任せても良さそうだな。死神さん。王女様が心配だ」
「はい、そうですね。戻りますか」
そう言って二人はその場を後にしようと振り返ると、目の前に小さな幼女がいた。
先程までいなかったはずの少女がいたのだ。
「ねぇ、お姉ちゃん達? 私迷っちゃったの。私を助けて?」
ゴスロリ姿の幼女は、困り果てた表情で二人を見つめていた。
「お嬢ちゃん? どうしたんだ。迷子か?」
妙義は優しく少女に声をかける。
「ここは危ないですよ。早く行きましょう」
死神さんは幼女に手を差しのべようと、右手を彼女の前に出した。
「いなくなっちゃったの。知らない?」
幼女は目に涙を浮かべながら死神さんに引っ張られて走る。
「すまないが、君の家族については分からないんだよ。でも私たちも探してあげるからね」
三人はその場から離れるために走り出す。
妙義はどこかにこの幼女を隠して安全を保証するために馬車の選択を始めたのだが、
「そうなのね。じゃあ、いいわ。ありがとうお姉ちゃん達」
少女はそう言うと死神さんの手を離す。
「何をやってるの? ここから逃げないと………」
死神さんは振り返ると、幼女に向かってもう一度手を差しのべようとするのだが。
幼女は妙義の方へ指を指して、
「だって、そっちのお姉ちゃんから殺気が溢れてるわ」
「!?」
幼女の発言に妙義も死神さんも驚いている。
「お姉ちゃんの視線……。逃げようとしたときにあなたの視線がとある馬車を他の馬車よりも避けるように見ていた。そしてあなたは今、8番目の馬車から目線を反らした」
「!?」
二人の額を汗が流れ落ちる。王女様の馬車は8番目である。それを確認した幼女は更に問い詰めた。
「最初から私を怪しんでたのよね? こんな所に少女がいるなんておかしい。それに山の中でゴスロリ姿になるなんてそれも奇妙だと思ってるね。そして探っている。私の正体を知りたがっている」
三人の間に不穏な雰囲気が流れ始める。
周りにいた人々は気づいていない様子だ。
「知りたければ教えてあげるわ。本当なら全ての馬車を壊すつもりだったけど。手間が省けた。教えてくれたお礼に教えてあげるわ」
少女は一歩前に出て二人を睨み付ける。
その冷たい目に二人の皮膚に少しだけ鳥肌がたってしまう。
「私の名は『エトナ』。いや…俺の名はと言った方がいいな。
俺は魔王軍幹部八虐、悪逆のエトナ」
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