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第7章 どうやら四阿は八虐の謀大逆のようです。
コーヒーに角砂糖何粒いれる?
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「──遅いな。英彦君」
店の中で駒々は英彦の契約が完了するのを待っていた。
「何かしてんのかな? まぁ、コーヒーサービスするからここに座って待っててよ」
店員は椅子を指差して言う。
この店員のいれるコーヒーは本当にうまいのだ。
付喪カフェとはまた違った味わい。
この店員がここをやめて珈琲店やカフェで働くとなれば俺が喜んで他の店に推薦してやるほどである。
そんな事を考えながら、席に座ってしばらく待っていると店員がコーヒーを運んできた。
「ほら、待たせたな」
店員が机の上にコーヒーを置いた。
しかし、コーヒーをもう一つ手に持っている。
「ん? コーヒーを二つ持ってるけど……お前も飲むの?」
駒々は店員に聞いてみたが、彼は笑いながら答えた。
「アハハそんなわけないじゃん。向こうの客にサービスするんだよ」
そう言うと店員は、駒々の席から離れて彼の後ろの方に座っていた男へとコーヒーを運び出す。
いつからいたのだろうか。
駒々はその男の事を今まで気がついていなかった。
まさか客が他にもいたとは思ってもいなかったのである。
店員からサービスであるコーヒーを受け取るとその男はバックから小さな入れ物を取り出した。
その入れ物を机の上に置いて蓋を開けると、そこには沢山の角砂糖が入っている。
「!?」
駒々はその男の事が気になっていたのでしばらく観察していたのだが、その男は角砂糖を9個コーヒーの中に入れた。
もちろん数え間違えたのではない。
きっちり9個。
それを男はスプーンを手に取りかき混ぜ始めた。
小さな音でジャリジャリとするのは砂糖が、まだコーヒーの中で溶けきっていないのだろう。
その男は出来上がった飲み物を何の躊躇いもなく一気に飲み干している。
「マジか……凄いな……」
駒々は、もうコーヒーなのか分からない液体を飲む男の背中を見続けていた。
気づけば英彦そっちのけで男の方を見ていたのだ。
どれ程の時間がたったのであろう。
外は既に夕暮れ時になっている。
男はもう冷えきっているであろうコーヒー?を4杯、遂に飲み干していた。
彼は口元をハンカチで綺麗に拭き、席から立つ。
その時一瞬、目が合いそうになったので駒々はとっさに下を向いた。
すると、その男はこちらに向かって歩いてきた。
これは、ずっと見てたのがバレてたのか。
そんな考えとは裏腹に、男はやはり駒々の方へ近づいてくる。
駒々は気づかないフリをしながらも、男への注意を怠らなかった。
「おい。そこの若者」
遂に男が駒々に話しかけてきた。
呼ばれて振り向いた駒々は、初めて男の素顔を見ることとなる。
その男は身長が高く黒のオーバーコートを着ており、首には何かの紋章の書かれたネックレスを身に着けていた。
また、目が死んでいて目の色はまるでブラックドラゴンのように、光が届かない底の見えない穴のように黒く染まっていた。
そんな目で駒々の顔を見ているのだ。
「なっ……何でしょう?」
緊張してしまうのも当たり前である。
駒々は観察していたことを怒られると思っていたのだから。
しかし、男は叱ることも腹をたてている様子もなく。
「そこの少年はさっきから苦戦しているようだな」
男は英彦を指差しながらそう言った。
「あ……ああ、あいつは付喪神との契約をしてる最中なんだけどな。なかなか終わらないみたいなんだ」
どうやら男は気付いていなかったらしい。
すると、男は英彦に近づき、英彦の頭の上に手を置く。
「おい。あんた何をする気だ」
心配した駒々は男に向かって質問をしたのだが、返答は返ってこなかった。
男はただ何も言わぬまま、英彦の頭に手を置いているのだ。
そして、それは一瞬のことだった。
瞬きをするよりも早い一瞬。
駒々には彼の掌が光って見えたのだ。
まばゆいと感じる暇もなく光は消えたが、男が何かをしたのは間違いなかった。
店の中で駒々は英彦の契約が完了するのを待っていた。
「何かしてんのかな? まぁ、コーヒーサービスするからここに座って待っててよ」
店員は椅子を指差して言う。
この店員のいれるコーヒーは本当にうまいのだ。
付喪カフェとはまた違った味わい。
この店員がここをやめて珈琲店やカフェで働くとなれば俺が喜んで他の店に推薦してやるほどである。
そんな事を考えながら、席に座ってしばらく待っていると店員がコーヒーを運んできた。
「ほら、待たせたな」
店員が机の上にコーヒーを置いた。
しかし、コーヒーをもう一つ手に持っている。
「ん? コーヒーを二つ持ってるけど……お前も飲むの?」
駒々は店員に聞いてみたが、彼は笑いながら答えた。
「アハハそんなわけないじゃん。向こうの客にサービスするんだよ」
そう言うと店員は、駒々の席から離れて彼の後ろの方に座っていた男へとコーヒーを運び出す。
いつからいたのだろうか。
駒々はその男の事を今まで気がついていなかった。
まさか客が他にもいたとは思ってもいなかったのである。
店員からサービスであるコーヒーを受け取るとその男はバックから小さな入れ物を取り出した。
その入れ物を机の上に置いて蓋を開けると、そこには沢山の角砂糖が入っている。
「!?」
駒々はその男の事が気になっていたのでしばらく観察していたのだが、その男は角砂糖を9個コーヒーの中に入れた。
もちろん数え間違えたのではない。
きっちり9個。
それを男はスプーンを手に取りかき混ぜ始めた。
小さな音でジャリジャリとするのは砂糖が、まだコーヒーの中で溶けきっていないのだろう。
その男は出来上がった飲み物を何の躊躇いもなく一気に飲み干している。
「マジか……凄いな……」
駒々は、もうコーヒーなのか分からない液体を飲む男の背中を見続けていた。
気づけば英彦そっちのけで男の方を見ていたのだ。
どれ程の時間がたったのであろう。
外は既に夕暮れ時になっている。
男はもう冷えきっているであろうコーヒー?を4杯、遂に飲み干していた。
彼は口元をハンカチで綺麗に拭き、席から立つ。
その時一瞬、目が合いそうになったので駒々はとっさに下を向いた。
すると、その男はこちらに向かって歩いてきた。
これは、ずっと見てたのがバレてたのか。
そんな考えとは裏腹に、男はやはり駒々の方へ近づいてくる。
駒々は気づかないフリをしながらも、男への注意を怠らなかった。
「おい。そこの若者」
遂に男が駒々に話しかけてきた。
呼ばれて振り向いた駒々は、初めて男の素顔を見ることとなる。
その男は身長が高く黒のオーバーコートを着ており、首には何かの紋章の書かれたネックレスを身に着けていた。
また、目が死んでいて目の色はまるでブラックドラゴンのように、光が届かない底の見えない穴のように黒く染まっていた。
そんな目で駒々の顔を見ているのだ。
「なっ……何でしょう?」
緊張してしまうのも当たり前である。
駒々は観察していたことを怒られると思っていたのだから。
しかし、男は叱ることも腹をたてている様子もなく。
「そこの少年はさっきから苦戦しているようだな」
男は英彦を指差しながらそう言った。
「あ……ああ、あいつは付喪神との契約をしてる最中なんだけどな。なかなか終わらないみたいなんだ」
どうやら男は気付いていなかったらしい。
すると、男は英彦に近づき、英彦の頭の上に手を置く。
「おい。あんた何をする気だ」
心配した駒々は男に向かって質問をしたのだが、返答は返ってこなかった。
男はただ何も言わぬまま、英彦の頭に手を置いているのだ。
そして、それは一瞬のことだった。
瞬きをするよりも早い一瞬。
駒々には彼の掌が光って見えたのだ。
まばゆいと感じる暇もなく光は消えたが、男が何かをしたのは間違いなかった。
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