上 下
41 / 294
第5章 どうやら王レベルは仕事をしているようです。

王レベル会議 その2

しおりを挟む
 みんなからの視線に黒が怯えていると、塩見は副会長に向かって意見を述べる。

「なぁ、副会長。それで奴らがブロードピークに関係してるって事か?」

「ああ、あいつらは……」

副会長がそう言いかけた瞬間、塩見は自身の持っていた剣を鞘から抜いて席を立つ。
彼の目付きは先程とは異なり、鋭く殺気だっている。
まさに何か嫌なことが起こる展開だ。
そして、彼はこちらを向いたかと思うと、地面を蹴り瞬間移動のごとき速さで黒に近づくと、その剣先を黒の喉元に向かって突こうとしてきた。



 さすが、王レベル。気を緩めずにいた俺には向かわず、気を緩めて油断していた黒を狙ってきたのだ。

「あっ、死んだ……」

その予想もしない速さに黒が死を覚悟したその時。
何者かが塩見の放った突きを弾き返す。

「邪魔だぜ空木。手を出されちゃ困るんだが?
この程度の殺気にも気づかないこの女が悪いんだけど」

攻撃を弾き返された塩見は、怒りを抑えながら、空木に不満を吐いた。
だが、空木も呆れた顔を浮かべながら、塩見に反論する。

「やれやれだ、御前はバカか?」

空木は塩見よりも速い速度で移動し黒を庇ったのだ。
その手にはとても鋭い鉤爪の武器が付いている。
おそらく、その鉤爪で塩見の剣を弾き返したのだろう。

「銀色の狼と呼ばれるお前がなんでこいつらの味方をするんだ?  関係者なら疑うべきだろ?
しかもあの野郎の関係者…………お前も知ってるだろ?  拙者があいつを恨んでいる事くらい」

「それは知ってる。
だから、バカかと聞いたんだ。
疑う時点で人を殺そうとするな。
それに奴の協力者がこんな所に呼ばれると思うのか?」

俺たちの目の前で喧嘩を始める2人。

「「ワハハハハハハハハハハハハハ!!!」」

そして、その光景を大笑いしながら見ている三原と少し笑いを抑えながら見ている副会長以外のメンバー。
どうやらこんな風になるのはいつもの事のようだ。
だが、流石に痺れを切らしたのか。
副会長は大声をあげて2人を注意する。

「やめないか!!お前達!!  
会議がまったく進まん。塩見も気持ちは分かるが、空木の言う通りだ。
そんなんだからお前らは勇者連盟に呼ばれないんだぞ!!!」

「「すみません」」

謝った2人は喧嘩をやめて、元の席へと移動していく。
喧嘩は中断。黒も無事だし一安心…なんてならない。黒が油断していたとしてもあいつは俺の仲間を殺そうとしたのだ。
俺は今後も奴の事を許さないだろう。
例え、黒は駄目な奴でも俺の仲間なのだ。

「あわわわわわ………」

ふと、横を見るとあまりの急展開に黒の脳みそがついていけていない。

「はぁ、よかった~。
安心しろ黒。次会った時は俺があいつをぶっ飛ばしてやるからな」

俺は小声で黒にそう呟くと、恨みを込めて塩見をにらみ続けていた。



 「さて、話を戻すが、彼らはブロードピークの関係者ではあるが、仲間ではない。
彼らは1度ブロードピークと接触しているのだ」

「「「「…………!?」」」」」

すると、再び全員の視線が俺たちに向けられる。

「もちろん、証拠もある。今日はいないが、生徒会の1人がブロードピークと接触しているんだ。つまり再び奴が行動を起こし始めたということ」

熱心に手に入れた情報について語る副会長であったが。
あいつはもう魔王軍幹部をやめているという情報は手に入れていないようだ。

「その理由は分からん。だが、奴は何回か姿を変えている。だから、私は目撃者として彼らを呼んだのだ」

つまり、俺たちにあいつの特徴とか顔とかを聞くために呼び出したのか。
しかし、あいつの情報を伝える前に1つ確かめておきたい事がある。

「なぁ、悪いんだけど1つ聞かせてくれ。そいつは何者なんだ?  勇者連盟ってなんだ?」

俺は副会長が話を終えたタイミングで手をあげて質問してみる。
すると、質問に答え手あげようと手をあげた者達がいた。
乗鞍と紅葉である。

「いいか?   新人さんよぉ。あいつは恐ろしい奴だ。どれくらい恐ろしいかって言うと筋肉をまったく鍛えない野郎くらい恐ろしい奴だ。
いや、筋肉だと分かりづらいか?
ガハハハハハ!!」

「はいはいはーい~。やいうちの教えていげるね。まずブロードピークっちゆう奴は術ん方法ば広めた悪か奴なん。そいで勇者連盟っちゆうんは付喪連盟っち冒険者連盟ん上に位置しゅる限られとる人材しか入るこつん出来なかちかっぱばり場所なん」

しかし、2人の説明は分かりづらい。さっぱり分からん。
すると、先程の小さな子供である雲仙が2人の代わりに説明してくれるようだ。

「2人とも駄目です。いいですか?新人さん。僕っちの話を聞いてください。

・勇者連盟というのは付喪連盟と冒険者連盟などの選ばれた者が所属できる世界に1つの場所です。世界レベルの依頼や知識を得る事ができます。
だいたい、王レベルの人が行ける場所なんですよ?
だから、王レベルは基本、期生制度的で変わるんです。

・ブロードピークというのは、元ギバーズだった者です。ちなみにギバーズとは付喪人になるための契約を手助けする役職。
ブロードピークはこの出禁されていた方法を白日の元に晒し、強制契約が広まっていきました。
強制契約とは支配力に関係なく強制的に付喪人にする事で、高確率で今後暴走してしまうんです。
結論を言うと奴は“低支配力暴走事件”を引き起こす事となったキッカケであり元凶なんです。」

雲仙が完璧な説明をしてくれたお陰で、2つの疑問を解決することが出来た。

「なるほどな。だったら、協力させてもらうぜ。犯人の顔とかを伝えれば俺たちは帰して貰えるんだな」

それなら協力せざるおえない。
「魔王軍幹部があの程度かよ」とガッカリした所を返り討ちにあった俺だったが。
そこまでの奴だって事なら、負けた事も恥ずかしくない。
すると、大楠は雲仙を褒め称えると同時に塩見に恨みを込めて愚痴を呟いた。

「さすがです付喪連盟の軍師。完璧ですね。いつも喧嘩っ速い(ピー)野郎とは大違いです」

「誰が喧嘩っ速い(ピー)野郎だ?  大楠。
火事と喧嘩は江戸の花だからいいんだよ。
どうした?お前……新入りのこと気に入ってるのか?」

「気に入ってるなんて……口に出させないでください。穢らわしい。ただひれ伏して欲しいだけですよ?」

大楠はそう呟くとこちらを見て欲望に飲まれたような目でニッコリと笑みを浮かべてくる。
まさか、この女性は支配欲が強すぎるのだろうか。
そう考えると俺は自分の身の危険を感じ、少し体が震え始めた。
この2人の間が殺気だっているのだ。



 その時、静かにこの様子を見ていた2人の人物が我慢の限界に達したのだろう。

「おい傾奇者達……余興は見事だが、休憩は入れよ。生き物とは休まねば死するのみ。間は何事にも必要だぞ?  
それに大楠。貴様の能力は大勢の場所で使うべきではない。下の迷惑も考えろ馬鹿者め」

「そうだ。三原の言う通りだ。落ち着こう。
御前らは自分の事しか考えていないのか?
説明などに任せればいいし、新入りの事など副会長に任せればいい。私情や思い付きで勝手に動くな。見苦しい」

三原と空木の2人からの抗議によって殺気だっていた雰囲気は解消された。
すると、副会長は息を整えて俺たちに声をかけてくる。

「ありがとう2人とも。いいかね?新人君。
見ての通り王レベルというのは会議になるといつも殺気だっている。
彼らにも性格が危険な奴もいるんだ。
でも、実力だけは本物だ。彼らは魔王軍幹部を討伐してきたエリート集団。
幹部を1人討ち取るごとに1日に100人の命を救うんだ。
だが、幹部は交代制で減ることはない。だから、我々は魔王を討伐し世界を平和にしなければならない。それがこの付喪連盟の使命だ。
その心がけを君にも持っていて欲しい」

「「ハイッ!!!」」

俺たちは声をあげて返事をし、副会長を見ると彼はにっこりと笑顔を見せて話を戻す。

「それじゃあ色々と聞かせてもらうよ新人君達」

こうして、俺たちはブロードピークの特徴や人相を数人の前で話し始める。
これが俺と王レベル達との出会いとなったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神の業(わざ)を背負うもの

ノイカ・G
ファンタジー
「神の業(わざ)」……かつて人々は魔法の力をそう呼んだ。 しかし、今はもうその言葉を知るものはいない。 力を持つものたちは自らの存在を隠し、この世界の歴史から魔法の力そのものを忘れさせた。 そして現代……彼らは、自分たちの存在を隠したまま社会に溶け込んでいる。その力によって起きた災いが起きぬように、同じ過ちを犯さぬように。 《第1章》 魔法犯罪の調査を生業とする如月 灯真(キサラギ トウマ)は、 同僚たちとの交流は最低限に、ただただ業務をこなす毎日を繰り返していた。 そんなある時、原因不明の瀕死状態だった女性の命を救う。 目を覚ました彼女は自分のことを「エルフの母体」であると口にした。 彼女との出会いによって、灯真は己の過去と向き合うことになる。 そして彼の周りにいる人々もまた、如月 灯真という男との交流により 目の前に現れた新たな道に足を踏み入れていく。 その先が、世界の大きな変革の渦であるとも知らずに…… 《第2章》 世界的な企業でもある「ネフロラ」…… 力を隠して生きる者たちのために作られたそこで 稲葉 光秀(イナバ ミツヒデ)は失った視力を魔法の力で補いながら日々仕事に励んでした。 家族にも力の存在を隠し、あくまでも一般人として生きることを選んだ光秀だったが ある事件をきっかけに、そして己の過去との邂逅に新たな選択を迫られることになる。 《第3章》 15年前……世界各地に現れた謎の光の柱。 それと同時期に行方不明となった少年少女たち。 いなくなった家族を探し苦悩するものたちがいた。 どれだけ疑いをかけられようと愛するものを信じ続けたものたちがいた。 今明かされる、『門(ロド)開放事件』の真実。 半年間誰も見つけることのできなかった被害者たちは、一体何を見たのか……。

闘え☆桂ちゃん!

くにざゎゆぅ
ファンタジー
壁ドン流し目なんのその! 美形の先輩方に翻弄されながら、今日も闘う女の子!  ピンク色の似合う可愛い女子高生を夢見るわたし、桂(かつら)。 友との平和で楽しい高校生活を、ひっそりと送りたいだけ……。 なのに! なんで、わたしが異能系戦隊ピンクに選ばれたの!? ピンクが似合う女の子になりたいけれど、闘う戦隊ピンクになりたいわけじゃない。 悩むわたしの周りには、導き、あるいは翻弄させる美形の先輩方が次々と出没。はからずも逆ハーだけれど、いまは楽しむ余裕がない。  闘う?  闘わない? わたしが向かう未来はどっち!? 夢見るヒロインが巻きこまれた、ちょっぴり異能系成長物語。 ※他サイトでも公開中です。

魔法学無双

kryuaga
ファンタジー
生まれ変わったら異世界だった!? そこは、地球と同じ物理法則が支配する、けれど魔法が存在する異世界。 そこに【俺】は、前世の知識を有したまま生まれ直した。 だから、【俺】はこの世界で生きていく。この世界を知る為に。 これは、前世の記憶を宿したまま生まれ変わった【俺】が、冒険者となり、騎士となり、国の滅びを見届け、新たに国を興すまでの物語。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

ひよっこ神様異世界謳歌記

綾織 茅
ファンタジー
ある日突然、異世界に飛んできてしまったんですが。 しかも、私が神様の子供? いやいや、まさか。そんな馬鹿な。だってほら。 ……あぁ、浮けちゃったね。 ほ、保護者! 保護者の方はどちらにおいででしょうか! 精神安定のために、甘くて美味しいものを所望します! いけめん? びじょ? なにそれ、おいし ――あぁ、いるいる。 優しくて、怒りっぽくて、美味しい食べものをくれて、いつも傍に居てくれる。 そんな大好きな人達が、両手の指じゃ足りないくらい、いーっぱい。 さてさて、保護者達にお菓子ももらえたし、 今日も元気にいってみましょーか。 「ひとーつ、かみしゃまのちからはむやみにつかいません」 「ふたーつ、かってにおでかけしません」 「みーっつ、オヤツはいちにちひとつまで」 「よーっつ、おさけはぜったいにのみません!」 以上、私専用ルールでした。 (なお、基本、幼児は自分の欲に忠実です) 一人じゃ無理だけど、みんなが一緒なら大丈夫。 神様修行、頑張るから、ちゃんとそこで見ていてね。 ※エブリスタ・カクヨム・なろうにも投稿しています(2017.5.1現在)

精霊王女になった僕はチートクラスに強い仲間と世界を旅します

カオリグサ
ファンタジー
病で幼いころから病室から出たことがなかった少年 生きるため懸命にあがいてきたものの、進行が恐ろしく速い癌によって体が蝕まれ 手術の甲斐もむなしく死んでしまった そんな生を全うできなかった少年に女神が手を差し伸べた 女神は少年に幸せになってほしいと願う そして目覚めると、少年は少女になっていた 今生は精霊王女として生きることとなった少女の チートクラスに強い仲間と共に歩む旅物語

工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する

鈴木竜一
ファンタジー
旧題:工芸職人《クラフトマン》はセカンドライフを謳歌する~ブラック商会をクビになったので独立したら、なぜか超一流の常連さんたちが集まってきました~ 【お知らせ】 このたび、本作の書籍化が正式に決定いたしました。 発売は今月(6月)下旬! 詳細は近況ボードにて!  超絶ブラックな労働環境のバーネット商会に所属する工芸職人《クラフトマン》のウィルムは、過労死寸前のところで日本の社畜リーマンだった前世の記憶がよみがえる。その直後、ウィルムは商会の代表からクビを宣告され、石や木片という簡単な素材から付与効果付きの武器やアイテムを生みだせる彼のクラフトスキルを頼りにしてくれる常連の顧客(各分野における超一流たち)のすべてをバカ息子であるラストンに引き継がせると言いだした。どうせ逆らったところで無駄だと悟ったウィルムは、退職金代わりに隠し持っていた激レアアイテムを持ちだし、常連客たちへ退職報告と引き継ぎの挨拶を済ませてから、自由気ままに生きようと隣国であるメルキス王国へと旅立つ。  ウィルムはこれまでのコネクションを駆使し、田舎にある森の中で工房を開くと、そこで畑を耕したり、家畜を飼育したり、川で釣りをしたり、時には町へ行ってクラフトスキルを使って作ったアイテムを売ったりして静かに暮らそうと計画していたのだ。  一方、ウィルムの常連客たちは突然の退職が代表の私情で行われたことと、その後の不誠実な対応、さらには後任であるラストンの無能さに激怒。大貴族、Sランク冒険者パーティーのリーダー、秘境に暮らす希少獣人族集落の長、世界的に有名な鍛冶職人――などなど、有力な顧客はすべて商会との契約を打ち切り、ウィルムをサポートするため次々と森にある彼の工房へと集結する。やがて、そこには多くの人々が移住し、最強クラスの有名人たちが集う村が完成していったのだった。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...