214 / 228
208話 魔王の剣
しおりを挟む
創造魔法。私がたった今。この瞬間に思いついた七つの魔法を組み合わせた魔法。
この魔法がでおうして成立したのかわからない。でも、根本的にはこれが原因なのでしょう。私は手元にある【白】のワンダーオーブを見つめる。
その輝きはいつの間にか【紫】から【赤】に代わっていた。【赤】のワンダーオーブ……最初は人を暴走させられるような力かと思いましたが、違うみたいですね。これの正確な力を口に出すのは難しいけど、存在しない魔法が使える。
そしてそれこそがアリゼの不可解な魔法の正体。私の創造魔法のように、アリゼの力も何らかの魔法が組み合わさったものと考えるのが普通でしょう。
なにせ、アリゼは私と同様に七種の魔法が使える魔法使いなのですから。レイモン先生のもとで魔法適正の調べた時、私を見て二人目と答えた。
口には出さなかったけど、乙女ゲームの設定を知っている私にはわかる。一人目は間違いなく目の前にいる魔女、アリゼ・ド・アナンだ。
「バカげた魔法を使う女ね」
「貴女と互角に渡り合うために必要な力だったのよ」
アリゼは周囲を見渡す。彼女が利用していた金属や鉱石を探しているのでしょう。でもダメ。私がここを生成するときに、その手の類は徹底的に排除したから。今、ここに貴女が使役してきた物はない。
「仕方ないわね」
「アンタ何をする気?」
アリゼが自らの左手首をかみちぎる。衝撃的な行動に私は目を見開くと、動脈が切れたのか、噴水のように血が飛び出した。
「回復魔法、輸血。回復魔法、鎮痛」
アリゼは大量出血をしているにも関わらず、それを苦としないまま輸血と鎮痛だけを行い、一向に止血をしようとしない。一体、何をしようとしているのでしょうか。
しかし、その答えはすぐにわかる。噴き出した血が、先ほど宙に浮いていた鎌の形を象ったからだ。あの女、血を鉄として操っているんだ。
彼女の魔力が尽きない限り、血は無限に湧き出る。彼女の武器は無限に生成されるということ。
「おい、クリスティーン」
私の横にブランクがやってくる。
「なによ?」
「森以外も造れたりするのか?」
「…………私に造れない大地はないわ」
私がそう答えると、ブランクはニッと口角を上げる。何か思いついたのかしら。
「造ってほしい地形がある。俺が合図をしたら頼む」
「どんな地形よ」
「それは…………」
ブランクは私の耳元でその地形の性質をそっと答えてその場から消えて飛んでくる血の鎌を弾き飛ばし始めました。
ブランクに言われた地形を何度も考え直す。なぜブランクがそれを希望したのかわからない。けど、やれと言われたらやるしかない。それが正しい選択かなんてどうでもいい。成功か失敗かわからない道なんて今まで何度でも潜り抜けてきた。
「貴方を信じるわブランク」
ブランクは先ほどからほんとど魔法を使わない。黒い靄のような剣でずっと鎌をはじいてばかり。使えないのか。それとも私が理解できていないだけで使っているのか。よく見ればショートワープのようなものや、視認外の攻撃への対処など、常人ではできないことをしていることがわかる。
そもそも、あの剣のようなものは何なのか。あれ自体が魔法だと考えるべきなのか。だったら魔力のリソースを使いすぎのような気がしなくもない。
そうまでしてあの剣を使う理由があるのかしら。とにかく私はブランクの考えを邪魔しないようにしなければ。こちらに来る攻撃は守護魔法や時空魔法で対処しつつ、私は創造魔法に使う魔力を蓄えている。
ブランクが鎌に刺されたと同時に青白い炎に包みこまれ、貫いた鎌を蒸発させる。そして青白い炎は人の形を保ったまま沈下し、傷口はふさがった。不死鳥みたいな力ね。
一瞬、やられたかと思ってヒヤッとしたじゃない。それにしても魔王。本来はジェラールとアリゼの二人が倒すだけはあるわね。でも、今の魔王は確か浄化魔法で浄化済みの弱体化している状態。そしてその魔王の魔力はアリゼが持っている。
「クリスティーン!!!!!」
「ええ!!!」
合図だ。打合せなんてしていないからかなりシンプルな合図。当然、アリゼにも私が何かをすると伝わってしまう。アリゼは噴出したままの血しぶきを私の方に飛ばし、液体だったそれをそのまま鋼鉄造り変える。防ぎきれない!?
「波動魔法、光の雨」
無数の血の矢は光の雨によってすべて叩き落される。
「!? 創造魔法、鋼鉄の大地」
ジャンヌ、ありがとう。
すべての土や草木が鋼鉄に移り変わる。それらはすべてがアリゼの武器。一体、ブランクは何を考えてこんな空間を頼み込んだのかしら。
アリゼは周囲の大地の変化に困惑する。それと同時にアリゼがコントロールしていた血の鎌の動きが突然鈍り始める。
「わかったわ。コントロールできるものが多すぎるのよ。おそらく何らかの力を応用して金属を操っていた彼女は、周囲の環境に合わせて絶妙なコントロールをしていた。だけどここは、すべてが鉄の世界。彼女にとってこの世界は未体験なんだわ」
一度戦ったことがある分、ブランクはこれを理解していたということでしょうか。でもすごいわ。
「今度こそ斬る」
ブランクがそう言ったタイミングで黒い靄から白銀の剣先が引き抜かれる。その剣は魔剣と呼ぶには相応しくなく、聖剣と言われれば疑わないような輝きを見せていた。
この魔法がでおうして成立したのかわからない。でも、根本的にはこれが原因なのでしょう。私は手元にある【白】のワンダーオーブを見つめる。
その輝きはいつの間にか【紫】から【赤】に代わっていた。【赤】のワンダーオーブ……最初は人を暴走させられるような力かと思いましたが、違うみたいですね。これの正確な力を口に出すのは難しいけど、存在しない魔法が使える。
そしてそれこそがアリゼの不可解な魔法の正体。私の創造魔法のように、アリゼの力も何らかの魔法が組み合わさったものと考えるのが普通でしょう。
なにせ、アリゼは私と同様に七種の魔法が使える魔法使いなのですから。レイモン先生のもとで魔法適正の調べた時、私を見て二人目と答えた。
口には出さなかったけど、乙女ゲームの設定を知っている私にはわかる。一人目は間違いなく目の前にいる魔女、アリゼ・ド・アナンだ。
「バカげた魔法を使う女ね」
「貴女と互角に渡り合うために必要な力だったのよ」
アリゼは周囲を見渡す。彼女が利用していた金属や鉱石を探しているのでしょう。でもダメ。私がここを生成するときに、その手の類は徹底的に排除したから。今、ここに貴女が使役してきた物はない。
「仕方ないわね」
「アンタ何をする気?」
アリゼが自らの左手首をかみちぎる。衝撃的な行動に私は目を見開くと、動脈が切れたのか、噴水のように血が飛び出した。
「回復魔法、輸血。回復魔法、鎮痛」
アリゼは大量出血をしているにも関わらず、それを苦としないまま輸血と鎮痛だけを行い、一向に止血をしようとしない。一体、何をしようとしているのでしょうか。
しかし、その答えはすぐにわかる。噴き出した血が、先ほど宙に浮いていた鎌の形を象ったからだ。あの女、血を鉄として操っているんだ。
彼女の魔力が尽きない限り、血は無限に湧き出る。彼女の武器は無限に生成されるということ。
「おい、クリスティーン」
私の横にブランクがやってくる。
「なによ?」
「森以外も造れたりするのか?」
「…………私に造れない大地はないわ」
私がそう答えると、ブランクはニッと口角を上げる。何か思いついたのかしら。
「造ってほしい地形がある。俺が合図をしたら頼む」
「どんな地形よ」
「それは…………」
ブランクは私の耳元でその地形の性質をそっと答えてその場から消えて飛んでくる血の鎌を弾き飛ばし始めました。
ブランクに言われた地形を何度も考え直す。なぜブランクがそれを希望したのかわからない。けど、やれと言われたらやるしかない。それが正しい選択かなんてどうでもいい。成功か失敗かわからない道なんて今まで何度でも潜り抜けてきた。
「貴方を信じるわブランク」
ブランクは先ほどからほんとど魔法を使わない。黒い靄のような剣でずっと鎌をはじいてばかり。使えないのか。それとも私が理解できていないだけで使っているのか。よく見ればショートワープのようなものや、視認外の攻撃への対処など、常人ではできないことをしていることがわかる。
そもそも、あの剣のようなものは何なのか。あれ自体が魔法だと考えるべきなのか。だったら魔力のリソースを使いすぎのような気がしなくもない。
そうまでしてあの剣を使う理由があるのかしら。とにかく私はブランクの考えを邪魔しないようにしなければ。こちらに来る攻撃は守護魔法や時空魔法で対処しつつ、私は創造魔法に使う魔力を蓄えている。
ブランクが鎌に刺されたと同時に青白い炎に包みこまれ、貫いた鎌を蒸発させる。そして青白い炎は人の形を保ったまま沈下し、傷口はふさがった。不死鳥みたいな力ね。
一瞬、やられたかと思ってヒヤッとしたじゃない。それにしても魔王。本来はジェラールとアリゼの二人が倒すだけはあるわね。でも、今の魔王は確か浄化魔法で浄化済みの弱体化している状態。そしてその魔王の魔力はアリゼが持っている。
「クリスティーン!!!!!」
「ええ!!!」
合図だ。打合せなんてしていないからかなりシンプルな合図。当然、アリゼにも私が何かをすると伝わってしまう。アリゼは噴出したままの血しぶきを私の方に飛ばし、液体だったそれをそのまま鋼鉄造り変える。防ぎきれない!?
「波動魔法、光の雨」
無数の血の矢は光の雨によってすべて叩き落される。
「!? 創造魔法、鋼鉄の大地」
ジャンヌ、ありがとう。
すべての土や草木が鋼鉄に移り変わる。それらはすべてがアリゼの武器。一体、ブランクは何を考えてこんな空間を頼み込んだのかしら。
アリゼは周囲の大地の変化に困惑する。それと同時にアリゼがコントロールしていた血の鎌の動きが突然鈍り始める。
「わかったわ。コントロールできるものが多すぎるのよ。おそらく何らかの力を応用して金属を操っていた彼女は、周囲の環境に合わせて絶妙なコントロールをしていた。だけどここは、すべてが鉄の世界。彼女にとってこの世界は未体験なんだわ」
一度戦ったことがある分、ブランクはこれを理解していたということでしょうか。でもすごいわ。
「今度こそ斬る」
ブランクがそう言ったタイミングで黒い靄から白銀の剣先が引き抜かれる。その剣は魔剣と呼ぶには相応しくなく、聖剣と言われれば疑わないような輝きを見せていた。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる