197 / 228
192話 浄化魔法、謙譲
しおりを挟む
ロマンの時空魔法により、周囲の建物や兵士は敵味方関係なく黒い球体に吸収されていきます。
ロマンの衣服も吸収していく重力に引っ張られ始めます。私たちは何とか周囲の重力を無くして対抗しますが、それも近場に重力のある球体を作られてしまえばほぼ無意味。
現在は私とロマン。どちらの魔力が先に尽きるかが勝負になっています。こんな時、【緑】のワンダーオーブがあれば、こんな時空魔法に競り勝てるのに。
しかし、願ってもこの場にワンダーオーブは存在しない。私の手元に残っているワンダーオーブは【青】と【白】のみ。おそらく今もロマンに競り勝てているのは【青】のワンダーオーブの効力による威力上昇で、私の魔法の効果が強まっているおかげ。ワンダーオーブの力を利用している私よりも若干強力な魔法を行使し続けているロマンは本当に化け物といっても過言ではないでしょう。
「姫様よぉ! ここでチリになりたくなかったらとっとといなくなっちまいなよ」
「残念ね。ここでチリになるつもりなんてないわ」
「まぁだ勝利を信じられるのか! 面白れぇ! お前は久しぶりに面白い相手だぞ!」
ロマンは嬉しそうに声をあげると、手元の球体の威力をさらに上げてきた。こちらはすでに全力だというのに、ロマンはまだまだ威力を上げても余裕そうな声でしゃべりかけてくる。やはり実力差がありすぎる。せめてここにミゲルがいればと思いましたが、ジャンヌの話によればミゲルは現在王宮で待機中のはず。それも重傷の体のまま治療も後回し。
「アンタなんかに時間を使っていられないのよ! 私は…………私たちはこの先も進むんだから!!」
「テメェが俺との戦いに興味ねぇくらいになぁ! 俺はテメェの都合に興味ねぇんだよ!! 進みてぇなら全力を出しやがれってんだ!!」
確かにロマンからすれば私の都合なんてどうでもいいでしょう。そして私も彼との戦いなんてどうでもいい。彼に何を言ってもどうでもいいの一言で終わってしまうわね。
「そろそろ互いの魔力の限界なんじゃねえのか?」
「そうね、悔しいけどこのまま状況が変わらなければ私の負けよ」
「ふへへへ。だったら状況が変わることを願うんだな。どうせなら俺もその先のお前と戦いてぇ」
「それはそれで嫌ね」
私は余裕そうなロマンと違い、喋ることも、平常心を保った顔を作ることも限界まで来ていました。呼吸の乱れを悟られないように整える。互いの魔力のぶつかり合いで勝つコツは精神力。少しでもロマンにもうすぐ勝てそうだなんて余裕を与えてはいけない。一ミリでもいい。もしかしたら負けると思わせなければ私に勝ち目はない。この自信家がそう思うなんて想像できないけどね。
とにかく今はあの厄介な時空魔法を打ち消す。スザンヌやジャンヌは私に捕まるので精一杯。おそらくスザンヌからも何らかの重力を打ち消す付与魔法が付与されているのでしょう。
私たちの後ろにいる巨体のウィルフリードもふわふわと浮いています。ウィルフリードのブレスもあの球体の前では無力。……もしかしていけるのではないか?
「スザンヌ、なんとか私を踏ん張らせてもらっていいかしら?」
「やりますよ。死なせたくありませんので」
従者であることを捨てて友として来てくれたスザンヌ。やっと言葉遣いが砕けて来たわね。セシルみたいに切り替わりがよかったらびっくりしちゃうけど。
私は無重力の時空魔法にリソースを割いていた魔力と集中力を別のものに向ける。私はウィルフリードに預けた【黄】のワンダーオーブを回収し、それを握りしめた。さてと……これはジャンヌとビル時にが神に選ばれて手に入れたワンダーオーブ。私の場合打をパートナーにして発動すればいいかわかりませんが、そんな余裕はありませんね。
ここで使わねばいつ使うのか。ワンダーオーブを握った手に全魔力を集中させて浄化魔法を発動させる。
「剣の英雄が体現せし、人々を尊重する光。神ジャコブの名の元に傲慢で汚れた魂を、浄化の光で撃ち滅ぼす。浄化魔法、謙譲」
【黄】のワンダーオーブはロマンの方にまばゆい光を放つ。その光はジャンヌの波動魔法と違い球体に吸い込まれているにも関わらず。ロマンから謎のオーラが飛び出し始めます。
どうやら視覚的な光は球体に吸い込まれているみたいですが、魔力そのものはロマンにぶつけることができたみたいです。
「ぐぁあ……こいつは………………ああああ、どういう……ことだぁ」
浄化魔法の光を浴びた彼は、その場に倒れこんでしまいます。彼の行動原理がその傲慢さだったかわかりませんが、浄化できない心を持つ人間なんてそういない。ロマンは魂の浄化を行われその場で眠りにつく。もう枯渇寸前の魔力、スザンヌが私に【藍】のワンダーオーブを返却する。
「これで少しでも回復しておきなさい」
「悪いわね」
「助け合ってこそよ」
「ごめんなさい。光じゃロマンには勝てなくて」
「気にしないでジャンヌ。あれは誰も想像できないわ」
三人でその場に座り込む。完全に息切れ。しばらく生き延びた兵士の皆様に護衛してもらいながら、ロマンの拘束まで果たしました。しかし、私の体内にはロマンから吸収した分の汚染された魂が循環し始めていました。
このデメリットはまだ誰にも説明していなかったわね。でも、心配かけられないし、黙っておこうかしら。
ロマンの衣服も吸収していく重力に引っ張られ始めます。私たちは何とか周囲の重力を無くして対抗しますが、それも近場に重力のある球体を作られてしまえばほぼ無意味。
現在は私とロマン。どちらの魔力が先に尽きるかが勝負になっています。こんな時、【緑】のワンダーオーブがあれば、こんな時空魔法に競り勝てるのに。
しかし、願ってもこの場にワンダーオーブは存在しない。私の手元に残っているワンダーオーブは【青】と【白】のみ。おそらく今もロマンに競り勝てているのは【青】のワンダーオーブの効力による威力上昇で、私の魔法の効果が強まっているおかげ。ワンダーオーブの力を利用している私よりも若干強力な魔法を行使し続けているロマンは本当に化け物といっても過言ではないでしょう。
「姫様よぉ! ここでチリになりたくなかったらとっとといなくなっちまいなよ」
「残念ね。ここでチリになるつもりなんてないわ」
「まぁだ勝利を信じられるのか! 面白れぇ! お前は久しぶりに面白い相手だぞ!」
ロマンは嬉しそうに声をあげると、手元の球体の威力をさらに上げてきた。こちらはすでに全力だというのに、ロマンはまだまだ威力を上げても余裕そうな声でしゃべりかけてくる。やはり実力差がありすぎる。せめてここにミゲルがいればと思いましたが、ジャンヌの話によればミゲルは現在王宮で待機中のはず。それも重傷の体のまま治療も後回し。
「アンタなんかに時間を使っていられないのよ! 私は…………私たちはこの先も進むんだから!!」
「テメェが俺との戦いに興味ねぇくらいになぁ! 俺はテメェの都合に興味ねぇんだよ!! 進みてぇなら全力を出しやがれってんだ!!」
確かにロマンからすれば私の都合なんてどうでもいいでしょう。そして私も彼との戦いなんてどうでもいい。彼に何を言ってもどうでもいいの一言で終わってしまうわね。
「そろそろ互いの魔力の限界なんじゃねえのか?」
「そうね、悔しいけどこのまま状況が変わらなければ私の負けよ」
「ふへへへ。だったら状況が変わることを願うんだな。どうせなら俺もその先のお前と戦いてぇ」
「それはそれで嫌ね」
私は余裕そうなロマンと違い、喋ることも、平常心を保った顔を作ることも限界まで来ていました。呼吸の乱れを悟られないように整える。互いの魔力のぶつかり合いで勝つコツは精神力。少しでもロマンにもうすぐ勝てそうだなんて余裕を与えてはいけない。一ミリでもいい。もしかしたら負けると思わせなければ私に勝ち目はない。この自信家がそう思うなんて想像できないけどね。
とにかく今はあの厄介な時空魔法を打ち消す。スザンヌやジャンヌは私に捕まるので精一杯。おそらくスザンヌからも何らかの重力を打ち消す付与魔法が付与されているのでしょう。
私たちの後ろにいる巨体のウィルフリードもふわふわと浮いています。ウィルフリードのブレスもあの球体の前では無力。……もしかしていけるのではないか?
「スザンヌ、なんとか私を踏ん張らせてもらっていいかしら?」
「やりますよ。死なせたくありませんので」
従者であることを捨てて友として来てくれたスザンヌ。やっと言葉遣いが砕けて来たわね。セシルみたいに切り替わりがよかったらびっくりしちゃうけど。
私は無重力の時空魔法にリソースを割いていた魔力と集中力を別のものに向ける。私はウィルフリードに預けた【黄】のワンダーオーブを回収し、それを握りしめた。さてと……これはジャンヌとビル時にが神に選ばれて手に入れたワンダーオーブ。私の場合打をパートナーにして発動すればいいかわかりませんが、そんな余裕はありませんね。
ここで使わねばいつ使うのか。ワンダーオーブを握った手に全魔力を集中させて浄化魔法を発動させる。
「剣の英雄が体現せし、人々を尊重する光。神ジャコブの名の元に傲慢で汚れた魂を、浄化の光で撃ち滅ぼす。浄化魔法、謙譲」
【黄】のワンダーオーブはロマンの方にまばゆい光を放つ。その光はジャンヌの波動魔法と違い球体に吸い込まれているにも関わらず。ロマンから謎のオーラが飛び出し始めます。
どうやら視覚的な光は球体に吸い込まれているみたいですが、魔力そのものはロマンにぶつけることができたみたいです。
「ぐぁあ……こいつは………………ああああ、どういう……ことだぁ」
浄化魔法の光を浴びた彼は、その場に倒れこんでしまいます。彼の行動原理がその傲慢さだったかわかりませんが、浄化できない心を持つ人間なんてそういない。ロマンは魂の浄化を行われその場で眠りにつく。もう枯渇寸前の魔力、スザンヌが私に【藍】のワンダーオーブを返却する。
「これで少しでも回復しておきなさい」
「悪いわね」
「助け合ってこそよ」
「ごめんなさい。光じゃロマンには勝てなくて」
「気にしないでジャンヌ。あれは誰も想像できないわ」
三人でその場に座り込む。完全に息切れ。しばらく生き延びた兵士の皆様に護衛してもらいながら、ロマンの拘束まで果たしました。しかし、私の体内にはロマンから吸収した分の汚染された魂が循環し始めていました。
このデメリットはまだ誰にも説明していなかったわね。でも、心配かけられないし、黙っておこうかしら。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる