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186話 友
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極太の光線による薙ぎ払いが終わったと同時に、私達の前に現れたのは可愛らしい卵色の髪にグラスグリーンの瞳の少女。
私と白い魔法学園の制服に袖を通している彼女は私の目の前に着地した。
「お迎えに上がりましたよ姫様!」
「ジャンヌ!? どうしてここに?」
そこにいたのは紛れもなく、私の友人の一人。ジャンヌ・ド・バヴィエールでした。彼女はなぜか学園の制服を着てここに立っています。
私が彼女の元に転移し、ウィルフリードが私達の前で伏せて二人でもう一度背中に乗ります。
「姫様がこうしていると言うことは王国がどうなっているかご存じですよね?」
「いえ、それをこれから確かめに行くところ」
「あ? そうなんですか?」
ジャンヌはこれから説明する必要があるんですね。と言いたそうな顔でこちらを見ています。
「移動しながら聞きましょうか。迎えに来たと言うことは目的地はブラン王国で間違いありませんね?」
「はい! それからオリバー皇子の件は銀髪の女神様から夢でお聞きしました。そして彼女の力で私はこちらに転移しています」
そう、夢に干渉する神となると女神マルグリートのことで間違いなさそうね。
「それって私をブラン王国に飛ばすことはできなかったのかしら?」
「どうやら魔法による干渉はブラン王国内が限界だそうです」
「そう…………それで状況を話してもらえるかしら」
私が質問をすると、ジャンヌは少しだけ言いずらそうに、それでも伝えなければという思いで肩を揺らす。そして決心した表情をつくり、グラスグリーンの瞳を私に向ける。
「状況は最悪です。まずは指名手配犯である黒鉄のイザベルと白金のフレデリックの登場により王都の東と西が同時侵攻されました。すぐに王国側も応戦しましたが、彼らも複数の魔術師や傭兵を雇っていたみたいで一筋縄にはいかずに主戦力は東西に別れました」
やはりイザベルは魔界で撃破失敗していたというのね。仕方ないわ。その辺りは想像の範疇だったもの。
「暴れているのは指名手配犯だけかしら」
「いいえ、違います。その直後に破壊活動を始めた女性。それは魔法学園の中央で巨大な波動魔法による暴走でした。女神様のお話ですと、犯人はアリゼ・ド・アナンで間違いないそうです」
魔法学園は国の南側。主戦力が東西に分かれている状況でそこにアリゼが現れたのね。
「これが二十日前のお話です」
「…………そんなに!?」
「はい、私達も戦える者は応戦し続けているのですが、徐々に王都の民は中央に追いやられてしまい、ついには赤銅のロマンとその時に捕らえた部下たちも脱獄。劣勢に拍車がかかりました」
なによそれ。ロマンもイザベルも最後の指名手配犯もいる状況でアリゼが責めてくるなんて…………エピローグもっと細かく描写しなさいよ!!
ワンダーオーブだって【橙】【黄】【青】【藍】【白】しかない。【青】入手前でしたが、これだけ持っていてもイザベル一人にすら勝てなかったというのにどうしろっていうのよ。
「不思議なことに帝国兵が外側から応援に来てくれたことに不審に思ったアレクシス様が姫様の不在に気付き国王夫妻に問い詰めた結果、ラヌダ帝国に姫様がいるとお聞きしました。だから迎えに来たんです」
「…………いいの?」
彼女は元々、私に戦わせたくない一心で一度はぶつかり合った過去がありました。それでも私の意思により勝利を勝ち取り、最終的には私が戦うことに反対しなくなりました。
彼女の本心でいえば、私はラヌダ帝国にいるべきだったのではないでしょうか。
「よくないですよ! 姫様を危険な目に合わせるなんて論外です。臣下失格です。でも、友達との約束を破るなんてもっとできないじゃないですか。あの馬上槍大会で負けたその日から、私は優しい姫様だから戦いから遠ざかって貰うなんて言わないと誓いました。友として誓ったのです。だから私は貴女の為に犠牲にならないし、私の為に貴女を犠牲にさせない。選択肢は一緒に逃げるか戦うか。それが友達ってことじゃないでしょうか?」
真っすぐ見つめる彼女の瞳は優しい緑の色。本当は誰も傷つけたくない彼女が戦う道を選ぶ覚悟。
それは、まぎれもなく私の意思をくみ取ろうとする覚悟の炎に燃えていました。
「最高よ。他のみんなを待たせる訳には行かないわ。とっととアリゼをぶっ潰してゲームエンドよ!」
ウィルフリードはただの狼ではない。大型の魔狼である。女四人を乗せて走っても騎馬たちは追いつけやしない。
「でも、ダメ押しは必要よね。時空魔法、加速」
狼車と違い魔狼の全速力に加速を乗せる。前面に風よけの楯を守護魔法で作って私達は最高速でブラン王国を目指しました。
もうアリゼとの闘いが始まっている。だったら覚悟を決めるしかない。勝ち目があるかなんてばかばかしい。
この足が向かおうとしている時点で杞憂でしかないわ。だって私は…………窮地の際に現れた彼女を見て思い出した。
王国には仲間がいる。そう思っただけで負ける気がしませんでした。
私と白い魔法学園の制服に袖を通している彼女は私の目の前に着地した。
「お迎えに上がりましたよ姫様!」
「ジャンヌ!? どうしてここに?」
そこにいたのは紛れもなく、私の友人の一人。ジャンヌ・ド・バヴィエールでした。彼女はなぜか学園の制服を着てここに立っています。
私が彼女の元に転移し、ウィルフリードが私達の前で伏せて二人でもう一度背中に乗ります。
「姫様がこうしていると言うことは王国がどうなっているかご存じですよね?」
「いえ、それをこれから確かめに行くところ」
「あ? そうなんですか?」
ジャンヌはこれから説明する必要があるんですね。と言いたそうな顔でこちらを見ています。
「移動しながら聞きましょうか。迎えに来たと言うことは目的地はブラン王国で間違いありませんね?」
「はい! それからオリバー皇子の件は銀髪の女神様から夢でお聞きしました。そして彼女の力で私はこちらに転移しています」
そう、夢に干渉する神となると女神マルグリートのことで間違いなさそうね。
「それって私をブラン王国に飛ばすことはできなかったのかしら?」
「どうやら魔法による干渉はブラン王国内が限界だそうです」
「そう…………それで状況を話してもらえるかしら」
私が質問をすると、ジャンヌは少しだけ言いずらそうに、それでも伝えなければという思いで肩を揺らす。そして決心した表情をつくり、グラスグリーンの瞳を私に向ける。
「状況は最悪です。まずは指名手配犯である黒鉄のイザベルと白金のフレデリックの登場により王都の東と西が同時侵攻されました。すぐに王国側も応戦しましたが、彼らも複数の魔術師や傭兵を雇っていたみたいで一筋縄にはいかずに主戦力は東西に別れました」
やはりイザベルは魔界で撃破失敗していたというのね。仕方ないわ。その辺りは想像の範疇だったもの。
「暴れているのは指名手配犯だけかしら」
「いいえ、違います。その直後に破壊活動を始めた女性。それは魔法学園の中央で巨大な波動魔法による暴走でした。女神様のお話ですと、犯人はアリゼ・ド・アナンで間違いないそうです」
魔法学園は国の南側。主戦力が東西に分かれている状況でそこにアリゼが現れたのね。
「これが二十日前のお話です」
「…………そんなに!?」
「はい、私達も戦える者は応戦し続けているのですが、徐々に王都の民は中央に追いやられてしまい、ついには赤銅のロマンとその時に捕らえた部下たちも脱獄。劣勢に拍車がかかりました」
なによそれ。ロマンもイザベルも最後の指名手配犯もいる状況でアリゼが責めてくるなんて…………エピローグもっと細かく描写しなさいよ!!
ワンダーオーブだって【橙】【黄】【青】【藍】【白】しかない。【青】入手前でしたが、これだけ持っていてもイザベル一人にすら勝てなかったというのにどうしろっていうのよ。
「不思議なことに帝国兵が外側から応援に来てくれたことに不審に思ったアレクシス様が姫様の不在に気付き国王夫妻に問い詰めた結果、ラヌダ帝国に姫様がいるとお聞きしました。だから迎えに来たんです」
「…………いいの?」
彼女は元々、私に戦わせたくない一心で一度はぶつかり合った過去がありました。それでも私の意思により勝利を勝ち取り、最終的には私が戦うことに反対しなくなりました。
彼女の本心でいえば、私はラヌダ帝国にいるべきだったのではないでしょうか。
「よくないですよ! 姫様を危険な目に合わせるなんて論外です。臣下失格です。でも、友達との約束を破るなんてもっとできないじゃないですか。あの馬上槍大会で負けたその日から、私は優しい姫様だから戦いから遠ざかって貰うなんて言わないと誓いました。友として誓ったのです。だから私は貴女の為に犠牲にならないし、私の為に貴女を犠牲にさせない。選択肢は一緒に逃げるか戦うか。それが友達ってことじゃないでしょうか?」
真っすぐ見つめる彼女の瞳は優しい緑の色。本当は誰も傷つけたくない彼女が戦う道を選ぶ覚悟。
それは、まぎれもなく私の意思をくみ取ろうとする覚悟の炎に燃えていました。
「最高よ。他のみんなを待たせる訳には行かないわ。とっととアリゼをぶっ潰してゲームエンドよ!」
ウィルフリードはただの狼ではない。大型の魔狼である。女四人を乗せて走っても騎馬たちは追いつけやしない。
「でも、ダメ押しは必要よね。時空魔法、加速」
狼車と違い魔狼の全速力に加速を乗せる。前面に風よけの楯を守護魔法で作って私達は最高速でブラン王国を目指しました。
もうアリゼとの闘いが始まっている。だったら覚悟を決めるしかない。勝ち目があるかなんてばかばかしい。
この足が向かおうとしている時点で杞憂でしかないわ。だって私は…………窮地の際に現れた彼女を見て思い出した。
王国には仲間がいる。そう思っただけで負ける気がしませんでした。
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