69 / 228
68話 僕はクリスティーン姫を親しいと思っている
しおりを挟む
私を人質として、ブランクがジョアサンに脅迫する。私、別にジョアサンに助けて貰えるようなほど彼と親しい訳じゃないんだけどなぁ。
そりゃあ、一応幼馴染ですし、顔なじみ程度には思って頂ければとは思いますが、それでも得体のしれない者であるブランクと関わらせるリスクを負えるほど、彼は私を大切だなんて思っていないはずだ。
しかし、私の想像とは違い、ブランクはじーっと私を見つめてからこう言い放ちました。
「わかった。悪いことをしないのであれば助力してやる。ただし、クリスティーン姫を開放しなければ容赦ない」
「おー、こわ。まあ、アンタと姫にお願いすることは、アンタの理念に反することはねーよ。多分な」
「その言葉、忘れないでくださいね?」
するとブランクは黒い靄になって消え去りながら、私達に言葉を残す。
「協力してもらう時はまた現れよう」
そして私達の前から黒い靄が視認できなくなりましたが、ジョアサンは何もない空間を見つめてその視線がゆっくりと不自然に空いていた窓に向かっていった。
「あの窓、いつの間に開いたのかしら?」
「少なくとも、僕らが話し始めるころには…………けた違いだなあいつ」
けた違いね。本当にそう思うわ。見せてくる魔法は波動魔法でも守護魔法でもない。他の基本魔法のどれにも該当しないのであれば、あれはワンダーオーブを使用して初めて使える浄化魔法と同クラスの魔法に違いない。
ジョアサンも彼の異様さに気付いているうえに、悪魔だと思い込んでいる。しかし、大司教の息子が悪魔と契約までするなんて。
「ジョアサン、ごめんなさいね。対して親しくもない私なんかの為に」
「……それは別に構わない。君は友人を護ってくれているし、知らない仲でもないからね。それに、もし君が知らない人だったとしても、僕は君を助ける選択をしたと思う」
やっぱりジョアサンはミカエルの子供ね。ミカエルはいつだって善人悪人問わず見捨てるという選択肢を取らなかったわ。言動はどうにかして欲しいけどね。
やっぱり【藍】のワンダーオーブはミカエルの息子であるジョアサンだからこそ、手に入るチャンスがあると思う。
「では、ごめんなさいではなくありがとうって言わせて貰うわ。貴方が善意で動くのであれば私は感謝で返すべきだと思うの」
私がそういうと、ジョアサンは目を見開いて私を見つめる。あれ? 私何かおかしなこと言ってしまったのかしら?
ジョアサンは何事もなかったように空き教室から出ていこうとします。しかし、扉に手をかける寸前で立ち止まってからこちらを振り向かずに声を出しました。
「僕はクリスティーン姫を親しいと思っている」
「え?」
私が声をかける前に勢いよく扉を開けて空き教室から出ていくジョアサン。そんなジョアサンが退散したのを確認したスザンヌが私の様子を伺う様に教室を覗き込みます。
「姫様、遅刻してしまいますよ?」
「そうね、すぐ教室に向かうわ」
教室に入れば、ミゲルとジャンヌにだけが私に挨拶をしてくれる。他の生徒は嫌々挨拶していることがよくわかる。別に構わないけどね。自分で選んだ道ですし、わかってくれる友人もいる。姫と言う立場のおかげでいじめられることもない。
特にいじめの発展に至らないのは、カトリーヌさんが卑怯な行いを嫌う人間だからこそ、他の生徒たちからも、私に対して強く出ようとしないのである。クラスメイトにいる他国の皇族なども外交問題になるため、強く接触してくることもなし。
そろそろワンダーオーブの入手方法もちゃんと考え始めないとね。
そりゃあ、一応幼馴染ですし、顔なじみ程度には思って頂ければとは思いますが、それでも得体のしれない者であるブランクと関わらせるリスクを負えるほど、彼は私を大切だなんて思っていないはずだ。
しかし、私の想像とは違い、ブランクはじーっと私を見つめてからこう言い放ちました。
「わかった。悪いことをしないのであれば助力してやる。ただし、クリスティーン姫を開放しなければ容赦ない」
「おー、こわ。まあ、アンタと姫にお願いすることは、アンタの理念に反することはねーよ。多分な」
「その言葉、忘れないでくださいね?」
するとブランクは黒い靄になって消え去りながら、私達に言葉を残す。
「協力してもらう時はまた現れよう」
そして私達の前から黒い靄が視認できなくなりましたが、ジョアサンは何もない空間を見つめてその視線がゆっくりと不自然に空いていた窓に向かっていった。
「あの窓、いつの間に開いたのかしら?」
「少なくとも、僕らが話し始めるころには…………けた違いだなあいつ」
けた違いね。本当にそう思うわ。見せてくる魔法は波動魔法でも守護魔法でもない。他の基本魔法のどれにも該当しないのであれば、あれはワンダーオーブを使用して初めて使える浄化魔法と同クラスの魔法に違いない。
ジョアサンも彼の異様さに気付いているうえに、悪魔だと思い込んでいる。しかし、大司教の息子が悪魔と契約までするなんて。
「ジョアサン、ごめんなさいね。対して親しくもない私なんかの為に」
「……それは別に構わない。君は友人を護ってくれているし、知らない仲でもないからね。それに、もし君が知らない人だったとしても、僕は君を助ける選択をしたと思う」
やっぱりジョアサンはミカエルの子供ね。ミカエルはいつだって善人悪人問わず見捨てるという選択肢を取らなかったわ。言動はどうにかして欲しいけどね。
やっぱり【藍】のワンダーオーブはミカエルの息子であるジョアサンだからこそ、手に入るチャンスがあると思う。
「では、ごめんなさいではなくありがとうって言わせて貰うわ。貴方が善意で動くのであれば私は感謝で返すべきだと思うの」
私がそういうと、ジョアサンは目を見開いて私を見つめる。あれ? 私何かおかしなこと言ってしまったのかしら?
ジョアサンは何事もなかったように空き教室から出ていこうとします。しかし、扉に手をかける寸前で立ち止まってからこちらを振り向かずに声を出しました。
「僕はクリスティーン姫を親しいと思っている」
「え?」
私が声をかける前に勢いよく扉を開けて空き教室から出ていくジョアサン。そんなジョアサンが退散したのを確認したスザンヌが私の様子を伺う様に教室を覗き込みます。
「姫様、遅刻してしまいますよ?」
「そうね、すぐ教室に向かうわ」
教室に入れば、ミゲルとジャンヌにだけが私に挨拶をしてくれる。他の生徒は嫌々挨拶していることがよくわかる。別に構わないけどね。自分で選んだ道ですし、わかってくれる友人もいる。姫と言う立場のおかげでいじめられることもない。
特にいじめの発展に至らないのは、カトリーヌさんが卑怯な行いを嫌う人間だからこそ、他の生徒たちからも、私に対して強く出ようとしないのである。クラスメイトにいる他国の皇族なども外交問題になるため、強く接触してくることもなし。
そろそろワンダーオーブの入手方法もちゃんと考え始めないとね。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる