上 下
68 / 228

67話 ジョアサンとブランク

しおりを挟む
 教会に行った日の翌日。教室に向かっている最中でジョアサンに呼び出されました。別に構いませんが、男子生徒と二人で密会みたいに思われないかしら?

 今回も悪魔祓いの件と判断した私は、空き教室に入り次第、出入り口の所でスザンヌに待機して貰いました。

「周囲が気になりますか?」

「いえ、そういう訳……ではありますが…………変な噂をされれば、困るのは貴方でしょう?」

「気にしません。少なくとも平民生徒たちは貴方が本当はお優しいことはジャンヌを通して知っています」

「ならいいわ。それで用件は何かしら?」

 私がそう聞き返すと、ジョアサンは私の両肩をがっしりと掴みました。突然男子生徒に肩を掴まれて、大きな声で叫びそうになった瞬間。ジョアサンが「静かに」とささやいた。だが、前世含めて男性経験のない私の頭の中は完全にぐるぐると回りだし、大混乱。目の前にいる私が完全にてんぱっていると気付いたジョアサンもどうしていいかわからないのか固まっている。

「と、ととととにかく離して頂けますか?」

「え!? あ、ああごめん」

 しかし、ジョアサンの手は未だにがっちりと私を掴んでいる。なんで? なんで離してくれないの?

 私が目を白黒させながら彼を見つめていると、彼は意を決して私の顔に彼自身の顔を近づけた。何してんの!?

 私の脳みそが沸騰する寸前で、私と彼の体を引き離す様に、黒装束の男が現れた。その男には見覚えがある。

「貴様! クリスティーンに何を飲ませようとした!!」

 !? 飲ませようとした? なに? どういうこと?

 一歩下がるジョアサンの口元から透明な液体が垂れる。涎ではなさそう。何かわかりませんが、あれを飲ませようとしたと言うことですか?

「とうとう現れましたね。姫にとりついている悪魔」

 悪魔ってもしかしてブランクのこと!? 確かにそう言った系統だったら、彼の異様なスペックは納得できるけど、それはあくまでジョアサンの決めつけなだけで悪魔なんて本当にこの世界に…………いや、ここは魔法もある世界。それに悪魔もいてもおかしくはないか。

「悪魔? …………いいな、それ。俺はクリスティーンも憑りついた悪魔だ。だが、貴様程度ではどうすることもできまい!!」

 私は、ブランクが何を言っているかわからず、問いただそうとしたところで、私の口は私の意思に反して閉じたままだった。そして、私の意に背いて動き出す。

『なによ貴方。誰なの? 悪魔。嘘? やだ! 助けて!!』

 いえ、私こんなこと微塵もいおうと思っていませんけど!? 口や声どころか、顔の表情まで私の思った通りに動かせない。完全に操られている様子だ。しかし、よく考えてみれば、私とブランクが知り合いだった場合、ジョアサンから見れば姫が悪魔と契約しているように見えるはず。それはそれで避けたい。

 でしたら意に反して憑りつかれている風に見えるこの様子の方が、違和感もありませんよね。それに私の悪役令嬢風の演技も、ジョアサンには見抜かれていましたし、こう操って貰えるならちょっと楽かも。

 でも意識があるのに、手足も動かせないし声も出せないのは気持ち悪いわね。金縛りってこういう感覚なのかしら。

「姫に憑りついてどうするつもりだ!!!」

「お前に話すことはない。しいて言うなら、目的を成すために、この肉体が必要なだけだ」

 彼から見た私はワンダーオーブを手に入れるための奴隷。彼から見た私は異端だったからもっとも可能性があると見込まれての人選だったはず。

 私自身もブランクほどの魔術師はゲームヒロイン以外に見たことも聞いたこともないから従っているとろこもありますが、私視点では協力者でもある。

「目的?」

「なんだ? お前も手伝ってくれるのか? そうだよな。姫から俺を追い払うならお前も手伝うべきだ」

 ちょっと何を言っているのブランク!?
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

身に覚えがないのに断罪されるつもりはありません

おこめ
恋愛
シャーロット・ノックスは卒業記念パーティーで婚約者のエリオットに婚約破棄を言い渡される。 ゲームの世界に転生した悪役令嬢が婚約破棄後の断罪を回避するお話です。 さらっとハッピーエンド。 ぬるい設定なので生温かい目でお願いします。

ゲームスタート時に死亡済み王女は今日も死んだふりをする

館花陽月
ファンタジー
乙女ゲームが大好きだった主人公「釘宮あんな」は友達の付き合いで行った占いの帰り道に事故死した。 転生時に「全てを手にするか」「1つだけにするか」のよく解らない二択を選んだ結果、なんとか転生が叶った私は石棺の上で目を覚ます。 起き上がってみると自分を取り囲むのは何処かで見た見覚えのある人物達・・!? クリア出来なかった乙女ゲーム「ー聖女ルルドの恋模様ー亡国のセレナード」の世界にいた。 どうやら私が転生したのは、ゲーム内の王太子様クレトスのルートで、一瞬だけ登場(モノクロ写真)したヒロインのルルドに姿形がそっくりな初恋の王女様だった。 ゲームスタート時には死亡していた私が、ゲームが始まるまで生き残れるのか。 そして、どうやら転生をさせた女神様の話によると生きている限り命を狙われ続けることになりそうなんだけど・・。建国の女神の生まれ変わりとして授かった聖女の8つの力の内、徹底的防御「一定時間の仮死」(死んだふり)が出来る力しか使えないって無理ゲー。誰かに暗殺対象として狙わている私が生き残ることは出来るのか!?

処理中です...