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60話 悪役令嬢の娘クリスティーン・ディ・フォレスティエ
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今日は午前中は座学なのですが、少々問題が発生しました。
それは今朝、アンヌ先生が開口一番に言ったことです。
「これから魔法学を学ぶ上で、パートナーを選んでいただきます。パートナーとは、クラスメイトから一人を選び、今後卒業まで魔法学、魔法実習の課題を一緒にクリアする仲間です」
パートナーね。乙女ゲーム内にそんな設定あったかしら? まあ、ミゲルでいいわよね。
「パートナーは同じ波動魔法使いの方同士、守護魔法使いの方同士でお願いします!」
あらら? それでは守護魔法使いのミゲルはダメですね。どうしましょうか。私、波動魔法の使い手でちゃんと話したことある人なんて。どなたと組めば。そう考えていたところ、私の周囲にはどっと人が集まります。
「姫様!」
「是非私を!」
「パートナーにしてください!」
大量に押し寄せる波動魔法使いの貴族生徒たち。平民生徒たちは私の所に来ている人もいますが、一部は行くかどうか迷っている方々もいらっしゃいます。
周囲を見るとカトリーヌさんはこちらを横目にみているだけで、私を誘ってくる気配はない。私もさすがに彼女を誘おうとは思いませんが、二番手である彼女の所には誰もいかずにほとんどの生徒が私を誘いにくる。
これではまるで彼女が私の代替え品みたいだわ。そう思った瞬間、私の胸はチクリと痛んだ。私が席を立ちあがり、歩き出すと、周囲の人だかりは私にぶつからない様に道を開ける。私は真っすぐ彼女の元に向かった。
彼女は、私が来て目を見開いている。
「カトリーヌさん? 私とパートナーを組んでくださるかしら?」
「…………何故私に? 馬鹿にしに来たの?」
彼女は私から視線を逸らし、冷静なように聞こえるけど、怒りを感じさせる声を吐き出した。
「…………違うわ」
「違わないでしょ? たくさんの生徒が集まる貴女と、誰も来ない私。そんな私の所に貴女が来ることが馬鹿にしているって言っているのよ!!」
カトリーヌさんが席をたって思いっきり私の頬をひっぱたこうとした。私がそれを受ける前に一人の生徒が私達の間に割って入った。
思いっきり叩かれた頬は、叩いた方だって痛いのがわかるほど、大きな音を教室に響かせる。
叩かれた女子生徒は、そのままうつぶせになって床に倒れる。その生徒の髪は、可愛い卵色であった。
「ジャンヌさん!? 大丈夫?」
「ぶ、無事です姫様。叩かれ慣れていますので」
顔を上げたジャンヌさんの頬は、赤くなっていたが、彼女はそれでも私に向かって微笑んだ。彼女が欲しい。
「ごめんなさいカトリーヌさん。やっぱりさっきの話はなし」
「え? ええ、そうね。そうして頂戴」
「私は彼女と組みます」
私はジャンヌさんの右手を握ってカトリーヌさんに宣言する。ジャンヌさんは目をぱちくりさせ、周囲の生徒たちは口々にこう言った。
「え?」
「は?」
「平民と?」
「彼女って一番魔力量がなくて弱かった生徒でしょ?」
「正気ですか?」
「いくら平民でもよりによって彼女はあり得ないだろ。貴族でもなければ優秀でもない」
周囲の生徒がざわつくその中で、カトリーヌさんだけが私を見つめてこう言った。
「クリスティーン姫。貴女のそういう考え無しの優しさが、彼女をより辛い環境に追いやってしまうのよ。こんなことをしてしまった以上、貴族生徒から彼女がいじめの標的にされてしまうわ」
カトリーヌさんの言葉は私への罵倒のようですけど、同時にジャンヌさんを心配している人間の発言でもあると感じました。本音はどちらなのか、それとも両方なのかはまだわかりませんが、彼女だけがジャンヌさんを見下して良い平民ではなく、立場の弱い平民だという風に私に注意する。
「ご心配どうも。でも私のパートナーは彼女が良いの」
「傲慢! 貴女がそんな人だとは思いませんでしたわ!」
ジャンヌさんを護るたった一つの答え。見せてあげる。私を怒らせてはいけないと言うことを。私は元悪役令嬢エリザベートの娘、クリスティーン・ディ・フォレスティエ!
さようなら私の幸せな学園生活。
「傲慢? 見下す位置に人がいれば、首は下に向くものでしょう。私はクリスティーン・ディ・フォレスティエ! 私のパートナーに文句のある愚者だけ意見しなさい!! 家名ごと歴史から削り取って差し上げますわ!!!」
そして初めまして、私の悪役生活。
私がそう宣言して周囲にいた生徒たちは黙り込む。みんながみんな、昨日の私を知っている。昨日と今の私が、彼らには不一致である。失望されるかもしれない。でもそれで良い。姫様のパートナーなんて羨ましくもなんともない。みんなにそう思って頂ければそれで良い。
ジャンヌ・ド・バヴィエールがただただ可哀そう。それがみんなの結論になれば良い。私の周囲に集まった生徒たちはそれぞれ思い思いの生徒のところに集まっていく。その中にはカトリーヌさんのところに向かう生徒もいました。
もう彼女に二度と「叩かれ慣れていますので」と言わせないために。
それは今朝、アンヌ先生が開口一番に言ったことです。
「これから魔法学を学ぶ上で、パートナーを選んでいただきます。パートナーとは、クラスメイトから一人を選び、今後卒業まで魔法学、魔法実習の課題を一緒にクリアする仲間です」
パートナーね。乙女ゲーム内にそんな設定あったかしら? まあ、ミゲルでいいわよね。
「パートナーは同じ波動魔法使いの方同士、守護魔法使いの方同士でお願いします!」
あらら? それでは守護魔法使いのミゲルはダメですね。どうしましょうか。私、波動魔法の使い手でちゃんと話したことある人なんて。どなたと組めば。そう考えていたところ、私の周囲にはどっと人が集まります。
「姫様!」
「是非私を!」
「パートナーにしてください!」
大量に押し寄せる波動魔法使いの貴族生徒たち。平民生徒たちは私の所に来ている人もいますが、一部は行くかどうか迷っている方々もいらっしゃいます。
周囲を見るとカトリーヌさんはこちらを横目にみているだけで、私を誘ってくる気配はない。私もさすがに彼女を誘おうとは思いませんが、二番手である彼女の所には誰もいかずにほとんどの生徒が私を誘いにくる。
これではまるで彼女が私の代替え品みたいだわ。そう思った瞬間、私の胸はチクリと痛んだ。私が席を立ちあがり、歩き出すと、周囲の人だかりは私にぶつからない様に道を開ける。私は真っすぐ彼女の元に向かった。
彼女は、私が来て目を見開いている。
「カトリーヌさん? 私とパートナーを組んでくださるかしら?」
「…………何故私に? 馬鹿にしに来たの?」
彼女は私から視線を逸らし、冷静なように聞こえるけど、怒りを感じさせる声を吐き出した。
「…………違うわ」
「違わないでしょ? たくさんの生徒が集まる貴女と、誰も来ない私。そんな私の所に貴女が来ることが馬鹿にしているって言っているのよ!!」
カトリーヌさんが席をたって思いっきり私の頬をひっぱたこうとした。私がそれを受ける前に一人の生徒が私達の間に割って入った。
思いっきり叩かれた頬は、叩いた方だって痛いのがわかるほど、大きな音を教室に響かせる。
叩かれた女子生徒は、そのままうつぶせになって床に倒れる。その生徒の髪は、可愛い卵色であった。
「ジャンヌさん!? 大丈夫?」
「ぶ、無事です姫様。叩かれ慣れていますので」
顔を上げたジャンヌさんの頬は、赤くなっていたが、彼女はそれでも私に向かって微笑んだ。彼女が欲しい。
「ごめんなさいカトリーヌさん。やっぱりさっきの話はなし」
「え? ええ、そうね。そうして頂戴」
「私は彼女と組みます」
私はジャンヌさんの右手を握ってカトリーヌさんに宣言する。ジャンヌさんは目をぱちくりさせ、周囲の生徒たちは口々にこう言った。
「え?」
「は?」
「平民と?」
「彼女って一番魔力量がなくて弱かった生徒でしょ?」
「正気ですか?」
「いくら平民でもよりによって彼女はあり得ないだろ。貴族でもなければ優秀でもない」
周囲の生徒がざわつくその中で、カトリーヌさんだけが私を見つめてこう言った。
「クリスティーン姫。貴女のそういう考え無しの優しさが、彼女をより辛い環境に追いやってしまうのよ。こんなことをしてしまった以上、貴族生徒から彼女がいじめの標的にされてしまうわ」
カトリーヌさんの言葉は私への罵倒のようですけど、同時にジャンヌさんを心配している人間の発言でもあると感じました。本音はどちらなのか、それとも両方なのかはまだわかりませんが、彼女だけがジャンヌさんを見下して良い平民ではなく、立場の弱い平民だという風に私に注意する。
「ご心配どうも。でも私のパートナーは彼女が良いの」
「傲慢! 貴女がそんな人だとは思いませんでしたわ!」
ジャンヌさんを護るたった一つの答え。見せてあげる。私を怒らせてはいけないと言うことを。私は元悪役令嬢エリザベートの娘、クリスティーン・ディ・フォレスティエ!
さようなら私の幸せな学園生活。
「傲慢? 見下す位置に人がいれば、首は下に向くものでしょう。私はクリスティーン・ディ・フォレスティエ! 私のパートナーに文句のある愚者だけ意見しなさい!! 家名ごと歴史から削り取って差し上げますわ!!!」
そして初めまして、私の悪役生活。
私がそう宣言して周囲にいた生徒たちは黙り込む。みんながみんな、昨日の私を知っている。昨日と今の私が、彼らには不一致である。失望されるかもしれない。でもそれで良い。姫様のパートナーなんて羨ましくもなんともない。みんなにそう思って頂ければそれで良い。
ジャンヌ・ド・バヴィエールがただただ可哀そう。それがみんなの結論になれば良い。私の周囲に集まった生徒たちはそれぞれ思い思いの生徒のところに集まっていく。その中にはカトリーヌさんのところに向かう生徒もいました。
もう彼女に二度と「叩かれ慣れていますので」と言わせないために。
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