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29話 彼はブランクではない

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 今日はミゲル、アレクシス、ビルジニを連れてレイモンの元で魔法を習う日です。

 あのお茶会からすぐにミゲルを呼出し、レイモンの元で魔法を習うことを誘い、次の授業の日にレイモンにお願いする。

 レイモンは一人だろうが数人だろうが変わらないと言って快諾してくれました。

「姫様行きましょう!」

「下がってていいぞミゲル?」

「いやいやアレクシス。君が下がりたまえ」

 ミゲルが手を引こうと差し伸べると、アレクシスとビルジニが押し出そうとしてくる。みんな仲が良いわね。

 私は三人の横を通り抜けてレイモンのいる小屋に向かいました。

「レイモーン!」

 小屋の扉に波動魔法を二回ぶつけノックをすると、扉が開かれて中からレイモンがだるそうに現れました。

「…………コントロールも上手くなったものだ」

「お初にお目にかかりますベルニエ伯爵。クレメンティエフ公爵家嫡男。アレクシス・ドゥ・クレメンティエフです」

「えっとと、ミゲル・エル・ラピーズです」

「ビルジニ・ド・タグマウイです」

 三人が礼をしてレイモンはため息を吐いた。挨拶が面倒なのでしょう。それでもちゃんと挨拶して頂きますけどね。

「レイモンだ。魔法省大臣をしている。形式上はな。基本仕事はしていない」

 なんて挨拶だろうか。確かにずっとここにいることを考えると彼がちゃんとした仕事をしているか怪しい。

 それでも、ジェラールが王宮に住まわせていることに意味がないはずがない。

 アレクシスとビルジニは苦笑いをしており、ミゲルは少し引いていた。私は慣れました。

「さてと、それぞれこの円盤を持つと良い」

 そう言われて三人は白い円盤を手渡される。そして三人はそれぞれ円盤を変色させたことに驚いていた。

 ミゲルは橙色一色。アレクシスは九割を青く変色させ、残り一割は緑色でした。ビルジニは黄色一色に変色させています。

「ほう、公爵のガキは二色か。姫と一緒だな」

 私は七色に変色をさせましたが、表向きでは波動魔法と時空魔法しか適性がないことにしてあります。

 知られてしまえば利用されるかもしれないからだそうです。

 確かにみんな一色か二色が普通なんですね。それにアレクシスも大部分を青く染めていることからほぼ一系統が得意でサブとして他の魔法が使える程度でしょう。

 ミゲルとビルジニが二色に変化させたアレクシスに文句を言いつつも魔力を高めることや、自分たちの得意魔術を行使し始める。

 ミゲルの得意魔法は守護魔法。魔力を結界にしたり、オーラとして纏い攻撃から身を護ることに長けた魔法です。魔法騎士となるミゲルにはとても強力な魔法になるでしょう。

 アレクシスの適正は私と同じ時空魔法。それから状態魔法のようです。時空魔法が得意なのは、クレメンティエフ家の血筋なのでしょうか。

 ビルジニは付与魔法。錬金術も付与魔法の亜種ということで、やはり彼女も錬金術に関する魔法が得意なのかもしれません。

 四人で魔法を見せ合い、時にはレイモンの指導の元新しい魔法を試したりと遊んでいると、一人の少年がこちらにやってきました。少年は黒髪黒目で純粋そうな綺麗な瞳をしていた。

 レイモンが少年と会話して、しばらくして少年はレイモンの小屋に入っていきました。

「レイモン、今の子は?」

「せがれだ」

 せがれ? それってつまり、レイモンの子供? レイモンの子供!? レイモンの子供となれば、私が【緑】のワンダーオーブを手に入れるために協力をして貰おうとしていた少年で違いないだろう。やっと会えたんだ。それに、レイモンの子供は黒づくめの謎の少年であるブランクとは人違いのようだ。

 それもそうよね。あんな訳のわからない魔法が使える人間がもし身近にいれば、噂でも話を聞いているはずだわ。

 どちらにせよ、仲良くなって損はありませんよね?

 レイモンが三人の指導をしている隙に私はレイモンの小屋にこっそりと向かいました。
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