上 下
13 / 228

13話 謎の少年を探って

しおりを挟む
 見知らぬ少年が部屋に訪れた翌朝。最悪の目覚めである。考えすぎでよく眠れなかったこともありますが、自室に自由に出入りできる男がいるという存在に今更恐怖した。

 もちろん、使用人達はある程度の出入りは自由であるし、夜中に訪れることも不可能ではない。だが、彼らには信頼関係が成り立っている。でも、昨夜の男にそれは一切ない。

 まあ、相手は子供だし対策はしばらく先でも大丈夫でしょう。どちらにせよまずは彼が何者か調査が必要よね。だからとりあえず今日はレイモンの息子に会う準備をする。

 ミゲルの時と同じように、まずは親であるレイモンにあい、子供に逢いたいとお願いするところから始めましょう。

「セシル、今日も王宮を自由に歩き回ってもいいですか?」

「姫様でしたら問題ありませんよ。五歳とは思えないほど急成長されましたね」

 私は成長が早いのではなく、赤子の頃からアラサーの精神を持ち合わせているだけですけどね。とにかく許可は下りたことですし、とっとと出かけましょう。まずは魔術研究が盛んな魔術省。レイモンはここの長でもある魔術大臣でもありますし、足取りを掴むならそこからよね。

 今までは何度出入りしてもレイモンの姿はなかった。おそらく今日もいないだろう。ですが今回はもう手段を選ぶつもりはありません。

「おはようございます」

 私が魔法省のある部屋の扉から入って挨拶をすると、魔術師たちが一斉に整列をして頭を下げる。その面々の中には、やはりレイモンの姿はない。レイモンは白髪の男だ。しかしここにレイモンと同じ髪色の男はいない。

 ジェラールやエリザベート、ミゲルにアンドレの髪の色は原作通りだったし、こんなカラフルの頭の世界でも髪を染める技術はない。であれば髪色である程度は判断できるはずだ。

 適当な人に話しかけてみよう。

「ここで一番すごい魔法使いさんは誰ですか?」

 すると一人の男が私と目線が合う様にしゃがみ込んで予想通りの名を告げた。

「もちろんそれは、大賢者レイモン・デ・ベルニエ様でございます」

「その人に会わせてください!」

 私がそういうと、魔術師たちは急に慌ただしくなった。どういうことだろうか。彼はここにいないのだろうか。その予想が的中したようだ。しゃがみ込んで話かけてくれた魔術師が申し訳なさそうに私に告げる。

「レイモン様は旅に出てしまい、今はどちらにいらっしゃるのかわからないのです」

 何ですって!? レイモン貴方そういうタイプじゃなかったでしょう。それとも、何か別の理由で出ていかれたと考えるべきでしょうか。どちらにせよ、本当に用件があるのはレイモンの息子の方だ。そちらと会えれば問題ない。

 しかし、魔術師の方々にどう聞くべきだろうか。もし直接聞くのであれば、これしかない。

「もしよろしければ魔法が得意な同年代のお友達が欲しいのですが、心当たりある方はいらっしゃいますか?」

 私がそういうと、全員が全員。こぞって我が子を紹介し始めた。違うそうじゃない。私が紹介して欲しいのはレイモンの息子ただ一人。

 でも、もし私と同年代くらいで魔法が使える子供だというのなら、それはもしかしたら昨夜の子供である可能性もある。昨日の子供がレイモンの息子じゃないという可能性も大きそうだし、探るべきか。

「では皆さんを集めて子供たちで遊びたいわ。何名か監視の大人の魔術師の方も来てくださいな」

 突如、姫である私の口から出た我儘に対し、ほとんどの魔術師が賛同し、近いうちにお茶会という形の交流会が開かれることになりました。

 残念ながら、レイモンの息子と会えるかは微妙なままですが、黒ずくめの少年が現れるかもしれない以上、魔術が使える同年代の子供には会ってもいいと考えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

処理中です...