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57話 決定的な証拠がまだ足りないんだけどなぁ
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フリーデリケさんのサインと、招待客をよく観察しながら待機します。
覗いている扉が必要以上に開かない様にチェーンでロックされていますが、こんな発明品ありましたっけ?
ちゃりちゃりと音が鳴ってしまいますので、なるべく扉は動かさないようにしましょう。
そして二組目の招待客。こちらもベッケンシュタイン家の夜会の時と同じ組み合わせのようです。
三組目、四組目とどんどん招待客がいらっしゃいますが、フリーデリケさん一人で回すには少々限界な気がします。
傍で待機していたリアが同伴者を含めたサインの対応をし、フリーデリケさんは招待状のチェックだけをすることになりました。
それでも忙しそうですが、二人は涼しい顔で応対してます。
「これは時間がかかりそうだな」
「ええ……ちょっと近くないですか?」
扉を覗き込むには、かなり至近距離にいなければいけません。実際、ギルの体は私に触れるか触れないかくらいの距離にあり、ギルじゃなければビックリして大声を上げてしまいそうなほどに近い。
「ああ、すまない。終わったら呼んでくれ」
私の言葉を聞いたギルは、すんなりと離れてしまいました。……別に、そんなにすぐに離れなくてもいいのに。
…………いや、離れて平気ですし!
気を取り直してフリーデリケさんのサインを注目しつつ、招待客たちの顔を確認していきます。
何組ほど通過されたでしょうか。結構な数を流れるように見てきましたので、もう数えきれません。
そんな中、オリーブ様がとある男性を連れてフリーデリケさんに招待状をお渡ししていました。
私はその男の顔に見覚えがありませんでした。フリーデリケさんも私にサインを送ります。
つまり、前回と違う同伴者を連れてきている。公妃様からのお願いを無視したと言うことになります。
それについてフリーデリケさんから質問を受け、何やら言い合いになっているようです。
その後、何点かフリーデリケさんがオリーブ様に声をかけた後、リアと二人がかりで拘束。こちらの部屋に向かってきました。
慌ててロックを外し、扉を開けます。
「マリーちゃん? …………そう、ルビーやメリッサとも連絡がつかなかったのはそういうことね。でもなんで? 伯爵令嬢をただ脅しただけでどうしてこうなるのよ!!」
…………オリーブ様はルビー様やメリッサ様が軟禁されていることを知らないのですね。
やはり、彼女たちの認識は、私を脅すだけだったみたいです。しかし、それは第三者の介入で大きな事件に発展していました。
フリーデリケさんとリアは招待客の応対に戻り、この場には私とギル。それから窓の外から月を眺めているだけのルシアさん。そして拘束されたが、もう一切抵抗する気のないオリーブ様。
「オリーブ様、あの日起きたことと、現状把握している限りの真実を貴女にお話しします」
私はフリン侯爵が用意した三人がいつの間にかすり替わっていたこと。それによって私と偶然一緒にいた公妃様が三人組に襲われかけたこと。
すり替わった三人組が人身売買組織の人間であることと、その証拠までお話しました。ボイド辺境伯については証拠こそありますが、本当にすり替えたのが彼だったかの確証がなかったため、ひとまず伏せました。
私が言葉を発するたびに、オリーブ様の表情はどんどん青くなっていきます。それを見ているこちらも心苦しいですが、それでも真実と罪状を伝えることになりました。
「今、フリン侯爵とルビー様、メリッサ様。それからオリーブ様の四名は、国家反逆罪の嫌疑がかけられています。同伴者のお三方もでしたね。七名です」
「国家…………反逆罪?」
「仕方ありません。私だけではなく、公妃様まで危険な目に合わせたのですから」
「知らないわよ! 本当に知らないの! 今日だって本当はあの時の同伴者を連れてこようとして何度もフリン侯爵家に手紙を出したのよ! ルビーたちも学校に来ないしおかしいと思っていたのよ! 私は本当に知らない! 信じてよ!!」
フリン侯爵が全くのでたらめを言っていて、偶然ボイド辺境伯の息のかかった人身売買組織から人を呼んだ可能性もゼロではありません。
また、知らないフリをしているだけで、ルビー様方が実は演技上手なだけかもしれません。すり替えが行われた。これが決定的にならない限り、全員まとめて国家反逆罪です。
まあ、ベッケンシュタイン家の夜会で騒ぎを起こそうとした時点で、例え脅しであったとしてもしっかり断罪しますけどね。
次はボイド辺境伯の捕縛。果たしてうまくいくでしょうか。
「何か証拠はありますか? 貴女が人身売買組織のグループと関わっていないと言える証拠」
「証拠? …………そうよ、フリン侯爵家に出した手紙。あれはどうかしら? もし人身売買組織の人間と知っていたなら、ベッケンシュタイン家の夜会と同じ人を連れていくことはリスクですし、そんなことをわざわざ何通も手紙を出してお願いする馬鹿はいないわ」
なるほど。確かに犯罪者と分かっている男を同伴者として連れていくだけでもリスクとなります。
「証拠になるかわかりませんが、頭にとどめておきます…………それでは」
私は拘束されたオリーブ様をルシアさんにお願いして預かってもらうことにしました。
フリーデリケさんに話しかけると、彼女は涼しい顔のまま返事します。
「招待客はボイド辺境伯以外チェック完了しました。おそらく今日はこのまま来ないつもりでしょう。お二人は会場に行ってください」
「…………はい」
逃げられた? 罠だとばれたと言うことでしょうか。ボイド辺境伯は娘であるメリッサ様が軟禁されていることを存じていますし、十分あり得ます。
その行動だけでも黒と判断するには十分でした。
覗いている扉が必要以上に開かない様にチェーンでロックされていますが、こんな発明品ありましたっけ?
ちゃりちゃりと音が鳴ってしまいますので、なるべく扉は動かさないようにしましょう。
そして二組目の招待客。こちらもベッケンシュタイン家の夜会の時と同じ組み合わせのようです。
三組目、四組目とどんどん招待客がいらっしゃいますが、フリーデリケさん一人で回すには少々限界な気がします。
傍で待機していたリアが同伴者を含めたサインの対応をし、フリーデリケさんは招待状のチェックだけをすることになりました。
それでも忙しそうですが、二人は涼しい顔で応対してます。
「これは時間がかかりそうだな」
「ええ……ちょっと近くないですか?」
扉を覗き込むには、かなり至近距離にいなければいけません。実際、ギルの体は私に触れるか触れないかくらいの距離にあり、ギルじゃなければビックリして大声を上げてしまいそうなほどに近い。
「ああ、すまない。終わったら呼んでくれ」
私の言葉を聞いたギルは、すんなりと離れてしまいました。……別に、そんなにすぐに離れなくてもいいのに。
…………いや、離れて平気ですし!
気を取り直してフリーデリケさんのサインを注目しつつ、招待客たちの顔を確認していきます。
何組ほど通過されたでしょうか。結構な数を流れるように見てきましたので、もう数えきれません。
そんな中、オリーブ様がとある男性を連れてフリーデリケさんに招待状をお渡ししていました。
私はその男の顔に見覚えがありませんでした。フリーデリケさんも私にサインを送ります。
つまり、前回と違う同伴者を連れてきている。公妃様からのお願いを無視したと言うことになります。
それについてフリーデリケさんから質問を受け、何やら言い合いになっているようです。
その後、何点かフリーデリケさんがオリーブ様に声をかけた後、リアと二人がかりで拘束。こちらの部屋に向かってきました。
慌ててロックを外し、扉を開けます。
「マリーちゃん? …………そう、ルビーやメリッサとも連絡がつかなかったのはそういうことね。でもなんで? 伯爵令嬢をただ脅しただけでどうしてこうなるのよ!!」
…………オリーブ様はルビー様やメリッサ様が軟禁されていることを知らないのですね。
やはり、彼女たちの認識は、私を脅すだけだったみたいです。しかし、それは第三者の介入で大きな事件に発展していました。
フリーデリケさんとリアは招待客の応対に戻り、この場には私とギル。それから窓の外から月を眺めているだけのルシアさん。そして拘束されたが、もう一切抵抗する気のないオリーブ様。
「オリーブ様、あの日起きたことと、現状把握している限りの真実を貴女にお話しします」
私はフリン侯爵が用意した三人がいつの間にかすり替わっていたこと。それによって私と偶然一緒にいた公妃様が三人組に襲われかけたこと。
すり替わった三人組が人身売買組織の人間であることと、その証拠までお話しました。ボイド辺境伯については証拠こそありますが、本当にすり替えたのが彼だったかの確証がなかったため、ひとまず伏せました。
私が言葉を発するたびに、オリーブ様の表情はどんどん青くなっていきます。それを見ているこちらも心苦しいですが、それでも真実と罪状を伝えることになりました。
「今、フリン侯爵とルビー様、メリッサ様。それからオリーブ様の四名は、国家反逆罪の嫌疑がかけられています。同伴者のお三方もでしたね。七名です」
「国家…………反逆罪?」
「仕方ありません。私だけではなく、公妃様まで危険な目に合わせたのですから」
「知らないわよ! 本当に知らないの! 今日だって本当はあの時の同伴者を連れてこようとして何度もフリン侯爵家に手紙を出したのよ! ルビーたちも学校に来ないしおかしいと思っていたのよ! 私は本当に知らない! 信じてよ!!」
フリン侯爵が全くのでたらめを言っていて、偶然ボイド辺境伯の息のかかった人身売買組織から人を呼んだ可能性もゼロではありません。
また、知らないフリをしているだけで、ルビー様方が実は演技上手なだけかもしれません。すり替えが行われた。これが決定的にならない限り、全員まとめて国家反逆罪です。
まあ、ベッケンシュタイン家の夜会で騒ぎを起こそうとした時点で、例え脅しであったとしてもしっかり断罪しますけどね。
次はボイド辺境伯の捕縛。果たしてうまくいくでしょうか。
「何か証拠はありますか? 貴女が人身売買組織のグループと関わっていないと言える証拠」
「証拠? …………そうよ、フリン侯爵家に出した手紙。あれはどうかしら? もし人身売買組織の人間と知っていたなら、ベッケンシュタイン家の夜会と同じ人を連れていくことはリスクですし、そんなことをわざわざ何通も手紙を出してお願いする馬鹿はいないわ」
なるほど。確かに犯罪者と分かっている男を同伴者として連れていくだけでもリスクとなります。
「証拠になるかわかりませんが、頭にとどめておきます…………それでは」
私は拘束されたオリーブ様をルシアさんにお願いして預かってもらうことにしました。
フリーデリケさんに話しかけると、彼女は涼しい顔のまま返事します。
「招待客はボイド辺境伯以外チェック完了しました。おそらく今日はこのまま来ないつもりでしょう。お二人は会場に行ってください」
「…………はい」
逃げられた? 罠だとばれたと言うことでしょうか。ボイド辺境伯は娘であるメリッサ様が軟禁されていることを存じていますし、十分あり得ます。
その行動だけでも黒と判断するには十分でした。
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