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42話 帰りは名残惜しいんだけどなぁ

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 ギルが変なことをしてくださったせいで、まともに顔を見ることができません。

 夜会はまだまだ続きますが、ちらほらと帰られる方々がお見えします。

「ルアさん、会えませんでしたね」

 周囲を探しましたが、彼女の姿はありませんでした。帰られたと言うことでしょうか。いえ、あの話しぶりですと、あの人はここの家の住民かと思ったのですけど。

 嫁がれた方だったのでしょうか。

「…………まあ、そのうち会えるだろう。城下町とかで」

「え? はぁ?」

 城下町で会える高貴な方とは一体。まあ、ギルがそういうのでしたら、またお会いできると思いましょうか。

「周囲を見ても残りの一人は見当たらないか?」

「はい、完全に逃げられてしまいましたね」

 他の二人からなんとか最後の一人の情報が手に入るのでしょうか。

 正直、もうギルと一緒にいれば今日は大丈夫なんじゃないかと思っています。彼と二人でいると安心しきってしまうので、少しだけ気を引き締めましょう。

 私達もそろそろ帰りましょうか。そう聞こうと思ったところで、ミシェーラ様がこちらに近づいてきました。

「まだ帰っていませんでしたね。ルビー・フリンとメリッサ・ボイドの拘束は終わったわ。ルビー・フリンは何の下準備もなしに計画したし、メリッサ・ボイドは嘘が下手。すぐに証拠が押さえられたわ。ついでにフリン侯爵もあなたを連れ去った後に連れていく段取りをしていた証拠が発覚したから捕らえたわ。最後の一人は見つけたのかしら?」

 どうやらミシェーラ様も、どなたかからお話を聞いて、エントランスに二人捕縛されていることを把握しているようです。

 と、いいますか。いつの間にか三名も拘束されていました。

 私が首を横に振ると、ミシェーラ様は「そう」と、だけ返事をして顎に手を当てます。

「オリーブ・プライスだけ証拠なし。同伴者の顔がわからないとどうしよもないわね。いくら他の二人が証言しても、プライス侯爵家が狂言だと言い切られてしまえばそれまで。それにオリーブ・プライスも同伴者もとっくの昔に帰っているのよね」

「そうですか。後日、同伴者の方を連れてきていただけば?」

「こういう場合で、無理に呼び出すとね。大体向かっている途中で同伴者だった男は、野盗か何かに襲われて殺されるのよ」

 ミシェーラ様はただ事実を述べるように言いましたが、それを意味するのは口封じと言うことでしょうか。確かにひどい目にあいそうになりましたが、なんだか怖くなってそれ以上は口を開けませんでした。

 ぎゅっとギルの腕を握りしめてしまいましたが、何も言わずに体を引き寄せられ、頭を撫でられました。

「なんかむかつくから私の前でいちゃつかないで頂戴?」

「あ、ごめんなさい」

「とっとと次の相手を探したらどうだ?」

「…………こうなったらよその国の王族でも見つけ出してやろうかしら。絶対ギルベルト様よりかっこよくて素敵な人と結婚するんだから!!」

「お、おう」「あっ、がんばってください」

 ミシェーラ様は、泣きながら駆け出してしまいました。可愛い。

「お前たちいつの間にここまで仲良くなったんだ?」

「え? …………さあ?」

 ですが、ギルよりかっこよくて素敵な方なんているのでしょうか。いえ、いませんね。だからと言っても、絶対にギルはお渡ししません。

「ギル、帰りましょうか?」

「ああ、そうだな」

 しかし、オリーブ様同伴者の方が割り出せませんと、最後の一人を招き入れた方がわかりませんね。

 オリーブ様の同伴者を呼び出すと、口封じに殺されるかもしれない。それじゃあ証拠にできない可能性がある。それ以外の方法で最後の一人がオリーブ様の同伴者だと断定する方法。

「…………あっ」

 ある。一つだけ。たった一つ。伯爵令嬢如きじゃできない解決策。

「どうした?」

「今日の参加者の方で一番権力が高い方に合わせてください。数日以内でお願いします」

「…………? わかった。それなら城下町に行くと良い」

 城下町? あれ? それは先ほど別の方を見つける方法でお聞きしたような。
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