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16話 休日まで呼ばないんで欲しいんだけどなぁ
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用事を済ませたエミリア様は、お忙しいようでもう帰られるみたいです。
メイドのリアと少し親し気に会話をした後に、ご自宅に戻られました。
「お嬢様、午後のご予定は?」
「え? そんなものありませんよ?」
「では、ちょうどよかったです。こちらを」
「ん? ん??」
何故かわからないですが、バルツァー公爵家の紋章の入った封蝋の手紙。何もちょうどよくないですよリア。
笑顔でそれを差し出してくるリアを、今は悪魔としか認識できません。こんちくしょー!
「あの? それは?」
「今朝、バルツァー家の使用人の方から直接渡されました」
どうしてそれをもっと早く教えてくださらないのですか。いえ、早く聞けたからと言ってどうこうできるお話ではありませんけど。
とにかく内容を確認しなくてはいけませんね。
ナイフで手紙を開き、中身を拝見しますと、そこにはとんでもないことが記載されていました。
「リアは内容を把握していましたでしょうか?」
「そうですね、中身までは把握していませんでしたが、軽くどのようなものが書かれているかは向こうの使用人さんからお聞きしました」
手紙には、丁寧な文字で、『本日時間が空いているのであれば我が屋敷に来てくれないか?』と、それだけ記載されていました。
え? 勿論時間は有り余っていますよ? ですが、え?
「愛ですね」
「……そうでしょうか?」
確かに、自分以外の人がこのようなことをされていれば、愛されていますねと思いますが、いざ自分がそれを受けますと、違うのではとか。夢見すぎとかそういう風に感じます。
何より、私は公爵家の人間に気に入られる要素なんて何一つありません。
ミシェーラ様ですら、五年間も片思いされているお相手です。そんな方が、私を好きになるなんてありえないでしょう。
「いえ、これは愛です」
しかし、やはり他者目線からすれば、愛されているという風に見える訳でして、やはりこれはミシェーラ様に見つかってはいけない事実であるということを認識しました。
バルツァー様のお屋敷。歩いていくわけにもいきませんし、馬車ですよね。
さすがに偶然お屋敷に入る際に、ミシェーラ様に見つかるだなんてこと。ありませんよね?
「断られないのですか?」
「へ? あー!? いえ、その…………特に予定もありませんので」
「ですよね。準備しましょうか?」
マリーが私の動きやすさ重視のシンプルすぎる服装を指さし、私はそのまま着替えさせられるために自室に連行されました。
「何にします?」
「何にしますってパーティに行くわけじゃないんですからそんなドレスは着ませんよ」
「いえいえ、戦場に行くんですよ?」
「行きませんよ!」
確かにバルツァー様のお屋敷に向かわれるのは、ある意味戦場と言えますが、狙ってますみたいな恰好をしてバルツァー家の門をくぐる勇気がありません。
勿論、馬車の中なんて見えませんし、敷地内の方にしか見られませんが、噂話で広まって欲しくありません。
「…………お嬢様? 男性の所に向かう。それすなわち戦ですよ?」
「ええ? リアはちょっと結婚に対して過激すぎです」
確かにリアは未だに独身ですけど。そんな結婚に対して意識しすぎだから機会を逃しているのではないでしょうか。
「お嬢様? 今に何か余計なことを考えていませんでしたか? ねえ?」
「ひぇ!? いえ、そんなことありませんよリア。もういいです! あまり派手すぎないものでお願いします!」
「畏まりました」
何故かリアは残念そうにドレスを用意し始めました。いんですよ私はそんな狙ってます見たいなドレスを着なくて。
ですが、休日まで呼ばれてしまうとは、昨日お話してくださればよかったのではないでしょうか?
後でご本人に直接確認しましょうか。
メイドのリアと少し親し気に会話をした後に、ご自宅に戻られました。
「お嬢様、午後のご予定は?」
「え? そんなものありませんよ?」
「では、ちょうどよかったです。こちらを」
「ん? ん??」
何故かわからないですが、バルツァー公爵家の紋章の入った封蝋の手紙。何もちょうどよくないですよリア。
笑顔でそれを差し出してくるリアを、今は悪魔としか認識できません。こんちくしょー!
「あの? それは?」
「今朝、バルツァー家の使用人の方から直接渡されました」
どうしてそれをもっと早く教えてくださらないのですか。いえ、早く聞けたからと言ってどうこうできるお話ではありませんけど。
とにかく内容を確認しなくてはいけませんね。
ナイフで手紙を開き、中身を拝見しますと、そこにはとんでもないことが記載されていました。
「リアは内容を把握していましたでしょうか?」
「そうですね、中身までは把握していませんでしたが、軽くどのようなものが書かれているかは向こうの使用人さんからお聞きしました」
手紙には、丁寧な文字で、『本日時間が空いているのであれば我が屋敷に来てくれないか?』と、それだけ記載されていました。
え? 勿論時間は有り余っていますよ? ですが、え?
「愛ですね」
「……そうでしょうか?」
確かに、自分以外の人がこのようなことをされていれば、愛されていますねと思いますが、いざ自分がそれを受けますと、違うのではとか。夢見すぎとかそういう風に感じます。
何より、私は公爵家の人間に気に入られる要素なんて何一つありません。
ミシェーラ様ですら、五年間も片思いされているお相手です。そんな方が、私を好きになるなんてありえないでしょう。
「いえ、これは愛です」
しかし、やはり他者目線からすれば、愛されているという風に見える訳でして、やはりこれはミシェーラ様に見つかってはいけない事実であるということを認識しました。
バルツァー様のお屋敷。歩いていくわけにもいきませんし、馬車ですよね。
さすがに偶然お屋敷に入る際に、ミシェーラ様に見つかるだなんてこと。ありませんよね?
「断られないのですか?」
「へ? あー!? いえ、その…………特に予定もありませんので」
「ですよね。準備しましょうか?」
マリーが私の動きやすさ重視のシンプルすぎる服装を指さし、私はそのまま着替えさせられるために自室に連行されました。
「何にします?」
「何にしますってパーティに行くわけじゃないんですからそんなドレスは着ませんよ」
「いえいえ、戦場に行くんですよ?」
「行きませんよ!」
確かにバルツァー様のお屋敷に向かわれるのは、ある意味戦場と言えますが、狙ってますみたいな恰好をしてバルツァー家の門をくぐる勇気がありません。
勿論、馬車の中なんて見えませんし、敷地内の方にしか見られませんが、噂話で広まって欲しくありません。
「…………お嬢様? 男性の所に向かう。それすなわち戦ですよ?」
「ええ? リアはちょっと結婚に対して過激すぎです」
確かにリアは未だに独身ですけど。そんな結婚に対して意識しすぎだから機会を逃しているのではないでしょうか。
「お嬢様? 今に何か余計なことを考えていませんでしたか? ねえ?」
「ひぇ!? いえ、そんなことありませんよリア。もういいです! あまり派手すぎないものでお願いします!」
「畏まりました」
何故かリアは残念そうにドレスを用意し始めました。いんですよ私はそんな狙ってます見たいなドレスを着なくて。
ですが、休日まで呼ばれてしまうとは、昨日お話してくださればよかったのではないでしょうか?
後でご本人に直接確認しましょうか。
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