綾町奈々子はいかにして毒島奇麗を落としたか?

奥野とびら

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友禅の謎も解明

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「犯行時、洋一さんは長谷川さんの血が床に付着しないように入り口付近に友禅を敷いて犯行に及んだんじゃないかしら」
 綺麗が言う。
「友禅を?」
「そうよ。長谷川吾郎が丁場に入ってすぐに床に敷かれた友禅に足を載せる。そこをすかさず洋一さんが包丁で刺した……」
「血は友禅の上に落ちるわけか……」
「血痕や毛髪などの証拠物件を殺害現場に落とさない効果と共に、その友禅を被害者に着せて捜査を攪乱する効果も期待したんでしょうね」
 犯行を友禅の持ち主の仕業だと疑わせ、また犯行が友禅に絡んだものだと誤導する目的もあった……。そうすることで自分を捜査の対象外に置く仕掛けだった。
 その目的のために最前の装置、友禅が〈いけ田〉にはあった。
「本人は九谷焼の絵付けをするときの作業着を着ていたのかもしれないわね。それは血がついても捨ててしまえばいい事だから」
「友禅を通して長谷川さんを刺せば床に落ちる返り血も友禅がある程度、防いでくれるかも」
「そうですね。刺した後、そのまま長谷川さんに友禅を押しつけるようにして被せれば血はほとんど友禅が吸収してしまうでしょう」
「僕にはアリバイがある」
 洋一が言った。
「その頃、僕は智子と寝ていたんだ。智子だって証言している」
「夫婦の証言など当てにならん」
「だけどもし智子が本当に僕に殺意を抱いていたのなら僕のアリバイなど証言しないでしょう」
「智子さんもあなたに騙されていたのよ」
「女将さんが?」
「智子さんはその日、洋一さんから睡眠導入剤を飲まされて普通の状態以上に熟睡していたんだわ。あなたは智子さんを熟睡させると寝床を抜けだして長谷川吾郎に会いにゆく」
「それが丁場ですね」
「そう。そこで犯行に及んだ」
「そして遺体を車で犀川に運んだ……。人がいないことを確認すると車を停め遺体を犀川に投げこんだ」
「殺人計画を察知したのなら警察に相談すればよかったのに」
「それでは復讐できなくなる」
「復讐?」
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