綾町奈々子はいかにして毒島奇麗を落としたか?

奥野とびら

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犯人と対峙へ

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 数時間後──。
 車は国道をひた走っていた。カーブに差しかかり綺麗はスピードを緩めた。
「確認が取れました」
 助手席に坐る奈々子がスマホの通話ボタンをオフにすると言った。
 表刑事から奈々子のスマホに電話があり、奈々子は助手席でずっと話していたのだ。

「谷内結衣さんが最後に目撃されたのは午後十一時です」
「十一時……」
「ええ。その時刻に金沢市内のファミリーレストランを出ていったそうです。これは顔馴染みのウェイトレスの証言です」
「そのときは谷内さんは一人?」
「ええ。ファミレスを出た後、誰と会ったかも判りません」
「でも重大な証言ね。死亡場所まで三十分しかないことになる。これだと車以外での移動は無理だわ」
「全タクシー会社に当たったところ谷内結衣さんらしき女性を乗せて死亡場所まで走った車はないそうです」
「そうなると谷内さんはタクシー以外の誰か知りあいの車に乗って死亡場所まで行ったことになる。谷内さんは死の直前まで、その人物と一緒にいたのよ」
「ええ」
「自殺じゃない。谷内さんをその場所まで運んだ人物が犯人よ」
「警察も同じ見解に達したようです」
「よかった」
「これですべてが繋がりましたか?」
「繋がったわ」
 綺麗は断言した。
「じゃあこれから向かう巌門に犯人が来るっていう先生の推理は……」
「たぶん当たってる」
「間に合うでしょうか?」
「わからない」
 奈々子の問に綺麗はステアリングを握りながら答えた。
「でも、もうこれ以上、犠牲者を出すわけにはいかないのよ」
 カーブが終わり綺麗はアクセルを踏みこんだ。制限速度一杯にスピードメーターが触れる。
 十五分ほど走ると綺麗は再びスピードを落とした。
 巌門が見える。
 綺麗は駐車スペースを見つけて車を停めた。フロントガラスの前には海が広がり人が一人、立っている。
 綺麗と奈々子は車を降りた。
 立っている人物に向かって、ゆっくりと歩いてゆく。
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