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奈々子と綺麗ペアが北本に取り調べ
しおりを挟む綺麗と奈々子の二人はホテルのバーのテーブル席に並んで坐り人を待っていた。
「来るでしょうか?」
奈々子が綺麗に顔を近づけて小声で訊いた。
「来るわよ」
綺麗は奈々子にキスをした。
「せ、先生……」
「彼は何かを知ってるわ」
綺麗は何事もなかったかのように話を続ける。
「でも、だったら余計にそのことを隠そうとするんじゃないですか?」
奈々子も話しに戻る。
「後ろめたい事があればあたしたちがそれをどこまで知っているか確かめたくなるのも人情よ」
「さすが小説家。人の心理の裏まで読んでますね」
「茶化してるの?」
「とんでもない。純粋に褒めてるんです」
奈々子はカクテルを一口、飲んだ。
「来たわよ」
奈々子は入り口に目を遣る。
北本の大きな体が姿を現した。キョロキョロと店内を見回していたが、やがて綺麗が軽く手を上げたのを見つけて歩いてきた。
「あなたにお聞きしたい事があるのよ」
北本が席に着くと綺麗が言った。
「その前に注文だ」
北本はウィスキーの水割りと摘みの品を数品、頼んだ。
「池田智子さんの死因は毒物中毒だと発表されてるわ」
「毒を飲ませる事ができたのは、あんただけだ」
北本が綺麗に目を遣る。
「あなたにも毒を飲ませる機会はあったのよ」
「言いがかりだ。俺は覚えてないんだ」
「覚えてないほど酔っていた。どうしてそんなに酔ったんですか?」
奈々子が訊く。
「余計なお世話だ」
「フラリと飲みに行く場所じゃないですよね」
「それが余計なお世話だと言ってるんだ。フラリと飲みに行こうが予定を立てて飲みに行こうが俺の勝手だ」
「それでは水掛け論ですね」
「警察がどちらを信じるかだ」
北本は笑みを浮かべながら水割りを呷った。
「唾液のDNA鑑定という手もあるわね」
「貴様」
北本が綺麗を睨んだ。
「あなたに貴様呼ばわりされる覚えはないわよ」
「そっちこそ馴れ馴れしく話しかけないでくれ。人殺しかもしれない女に話しかけられたらゾッとする」
「それはこっちのセリフよ」
北本と綺麗は睨みあった。
「智子さんの遺体は、まだ警察に保存されているわ。その遺体の唇を調べたら、あなたのDNAが検出されるんじゃないかしら」
北本の顔が蒼ざめた。
「覚えてないっていうのは嘘のようね」
綺麗がほくそ笑んだ。
「あたしはこの目で見たのよ。あなたと智子さんがキスするところをね。言い逃れはできないわ」
綺麗の声はドスが利いている。
「あれは無理矢理って感じだったわ。それだけでも犯罪ね」
「合意だった」
北本が言った。
「キスしたことは認めるのね」
「仕方がない」
観念したようだ。
「警察に言うわ」
「勝手にしろ。だがあれは合意だった」
「合意だろうが無理矢理だろうが、あなたが智子さんに毒を飲ませる機会があったってことよ」
北本は綺麗を睨んだが、やがて「帰る」と呟くように言って席を立った。
「帰っちゃったわね」
「でも毒島先生が問いつめたお陰で北本は自分の行為を認めましたね」
「でも機会はあっても池田智子さんが唇を閉じていたらガムを押しこむ事はできない」
「いきなりキスされて驚いて閉じる間もなかったとか?」
「その可能性もあるかもね」
奈々子は頷いた。
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