綾町奈々子はいかにして毒島奇麗を落としたか?

奥野とびら

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谷内結衣の情事

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 谷内結衣は髪を解き着物を脱ぎ捨て全裸になると、ベッドに潜りこんだ。
 ベッドにはすでに笹木晃司が待っている。
 二人は睦みあい結衣は大きな喘ぎ声をあげる。
 時間が経つにつれ二人の汗が解けあい、やがて笹木が精を放った。
 情事が終わると結衣は仰向けのまま、きつい目を天井に向けた。
「仕返しをする」
 思わず呟く。
「池田智子にか?」
 笹木が裸のまま煙草を手にする。
「そうよ」
 笹木は煙草に火を点け吸いこんだ。
「わたしはあの女に酷い目に遭わされたのよ」
 結衣は笹木に顔を向ける。
「逆恨みだ」
「あの女の肩を持つ気?」
「いい女だ」
「男はみんな騙される」
「自分のものにしたいと思うだけだ」
 結衣は溜息をついた。
「あの女はわたしの友禅をけなしたのよ」
「正直な意見を述べただけだろう」
「それでもわたしの生活はメチャクチャになった」
 池田智子は友禅の品評会の席で谷内結衣の友禅を批判した。それをきっかけにして谷内結衣の友禅を置いていた問屋が買い取りをしなくなった。谷内結衣の収入は激減し生活が成り立たなくなった。
 そこを救ったのが笹木だった。見返りは結衣の体だった。
 結衣も〝背に腹は代えられない〟と腹を括ったのか、笹木のいいなりになった。男女関係に奔放な結衣がもともと笹木のことを憎からず思っていたこともあり二人のつきあいはズルズルと続いている。
「池田智子のことはもう許してると思っていたが」
 表面上は池田智子と結衣は大人のつきあいを続けていた。
 だが……。
「とんでもない」
 結衣は吐き捨てるように言った。
「なるほど。心の中ではお前は池田智子を殺したいほど憎んでいるというわけか」
「殺すわ」
 笹木はギョッとしたように目を見開いた。
「〝殺したいほど〟じゃなくて殺すわ」
「おいおい」
 笹木は体を起こした。
「物騒だな」
「本気よ」
 結衣の顔には鬼気迫るものが感じられた。笹木はゾッとした。
「池田智子はお前の友禅を店に置いてくれてるんだぞ」
 結衣の友禅が閉め出された責任を感じたのか〈いけ田〉で結衣の友禅を置くことが多くなった。
「元はといえばあの女の責任でしょ」
 結衣の口調は激しかった。
「それに……」
 結衣の顔はさらに思いつめたものになった。
「そのことを鼻にかけて、わたしを見下して接している」
「だから殺す?」
 笹木は笑った。
「冗談で言ってると思ってるの? わたしは本気よ。あの女に地獄の苦しみを味わわせてやる。まずあの女にとっての命である〈いけ田〉を潰して」
「お前、まさか……」
 笹木が真顔になった。
「長谷川吾郎も?」
 結衣は笹木の手から煙草を奪うと自分の口に持っていった。
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