30 / 69
30
谷内結衣の情事
しおりを挟む
谷内結衣は髪を解き着物を脱ぎ捨て全裸になると、ベッドに潜りこんだ。
ベッドにはすでに笹木晃司が待っている。
二人は睦みあい結衣は大きな喘ぎ声をあげる。
時間が経つにつれ二人の汗が解けあい、やがて笹木が精を放った。
情事が終わると結衣は仰向けのまま、きつい目を天井に向けた。
「仕返しをする」
思わず呟く。
「池田智子にか?」
笹木が裸のまま煙草を手にする。
「そうよ」
笹木は煙草に火を点け吸いこんだ。
「わたしはあの女に酷い目に遭わされたのよ」
結衣は笹木に顔を向ける。
「逆恨みだ」
「あの女の肩を持つ気?」
「いい女だ」
「男はみんな騙される」
「自分のものにしたいと思うだけだ」
結衣は溜息をついた。
「あの女はわたしの友禅をけなしたのよ」
「正直な意見を述べただけだろう」
「それでもわたしの生活はメチャクチャになった」
池田智子は友禅の品評会の席で谷内結衣の友禅を批判した。それをきっかけにして谷内結衣の友禅を置いていた問屋が買い取りをしなくなった。谷内結衣の収入は激減し生活が成り立たなくなった。
そこを救ったのが笹木だった。見返りは結衣の体だった。
結衣も〝背に腹は代えられない〟と腹を括ったのか、笹木のいいなりになった。男女関係に奔放な結衣がもともと笹木のことを憎からず思っていたこともあり二人のつきあいはズルズルと続いている。
「池田智子のことはもう許してると思っていたが」
表面上は池田智子と結衣は大人のつきあいを続けていた。
だが……。
「とんでもない」
結衣は吐き捨てるように言った。
「なるほど。心の中ではお前は池田智子を殺したいほど憎んでいるというわけか」
「殺すわ」
笹木はギョッとしたように目を見開いた。
「〝殺したいほど〟じゃなくて殺すわ」
「おいおい」
笹木は体を起こした。
「物騒だな」
「本気よ」
結衣の顔には鬼気迫るものが感じられた。笹木はゾッとした。
「池田智子はお前の友禅を店に置いてくれてるんだぞ」
結衣の友禅が閉め出された責任を感じたのか〈いけ田〉で結衣の友禅を置くことが多くなった。
「元はといえばあの女の責任でしょ」
結衣の口調は激しかった。
「それに……」
結衣の顔はさらに思いつめたものになった。
「そのことを鼻にかけて、わたしを見下して接している」
「だから殺す?」
笹木は笑った。
「冗談で言ってると思ってるの? わたしは本気よ。あの女に地獄の苦しみを味わわせてやる。まずあの女にとっての命である〈いけ田〉を潰して」
「お前、まさか……」
笹木が真顔になった。
「長谷川吾郎も?」
結衣は笹木の手から煙草を奪うと自分の口に持っていった。
ベッドにはすでに笹木晃司が待っている。
二人は睦みあい結衣は大きな喘ぎ声をあげる。
時間が経つにつれ二人の汗が解けあい、やがて笹木が精を放った。
情事が終わると結衣は仰向けのまま、きつい目を天井に向けた。
「仕返しをする」
思わず呟く。
「池田智子にか?」
笹木が裸のまま煙草を手にする。
「そうよ」
笹木は煙草に火を点け吸いこんだ。
「わたしはあの女に酷い目に遭わされたのよ」
結衣は笹木に顔を向ける。
「逆恨みだ」
「あの女の肩を持つ気?」
「いい女だ」
「男はみんな騙される」
「自分のものにしたいと思うだけだ」
結衣は溜息をついた。
「あの女はわたしの友禅をけなしたのよ」
「正直な意見を述べただけだろう」
「それでもわたしの生活はメチャクチャになった」
池田智子は友禅の品評会の席で谷内結衣の友禅を批判した。それをきっかけにして谷内結衣の友禅を置いていた問屋が買い取りをしなくなった。谷内結衣の収入は激減し生活が成り立たなくなった。
そこを救ったのが笹木だった。見返りは結衣の体だった。
結衣も〝背に腹は代えられない〟と腹を括ったのか、笹木のいいなりになった。男女関係に奔放な結衣がもともと笹木のことを憎からず思っていたこともあり二人のつきあいはズルズルと続いている。
「池田智子のことはもう許してると思っていたが」
表面上は池田智子と結衣は大人のつきあいを続けていた。
だが……。
「とんでもない」
結衣は吐き捨てるように言った。
「なるほど。心の中ではお前は池田智子を殺したいほど憎んでいるというわけか」
「殺すわ」
笹木はギョッとしたように目を見開いた。
「〝殺したいほど〟じゃなくて殺すわ」
「おいおい」
笹木は体を起こした。
「物騒だな」
「本気よ」
結衣の顔には鬼気迫るものが感じられた。笹木はゾッとした。
「池田智子はお前の友禅を店に置いてくれてるんだぞ」
結衣の友禅が閉め出された責任を感じたのか〈いけ田〉で結衣の友禅を置くことが多くなった。
「元はといえばあの女の責任でしょ」
結衣の口調は激しかった。
「それに……」
結衣の顔はさらに思いつめたものになった。
「そのことを鼻にかけて、わたしを見下して接している」
「だから殺す?」
笹木は笑った。
「冗談で言ってると思ってるの? わたしは本気よ。あの女に地獄の苦しみを味わわせてやる。まずあの女にとっての命である〈いけ田〉を潰して」
「お前、まさか……」
笹木が真顔になった。
「長谷川吾郎も?」
結衣は笹木の手から煙草を奪うと自分の口に持っていった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、娘の幼稚園の親子イベントで娘の友達と一緒にいた千春と出会う。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになると思うのでご安心ください。


とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる