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独身の男女が
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綺麗、奈々子、片頭の三人は居酒屋に繰りだして打ち合わせをしていた。
壁には友禅の写真が飾られている。
「谷内さんに会ったわ」
「どうでした?」
「谷内さんは落ち着いた感じの人よ」
「谷内さん、事件と関わっているんでしょうか?」
「殺人事件が起きた場合、その動機として考えられるのは、まず怨恨」
綺麗が指を折った。
「次にお金。そして男女関係の縺れ」
「殺人事件の動機はその三つにだいたい絞られますよね」
「そうよ。後は異常者による動機なき殺人。つまり殺人そのものが目的という事件だけど、これは少数派よね。虐めによる暴行死や親の虐待による子供の死もここに入れちゃっていいかしらね」
「怨恨の線だけど長谷川さんを恨んでいた人はいるんですか?」
「今の段階では判らない」
「谷内さんはどうですか?」
「きつそうな人に見えたけど……。それだけの話よ」
「毒島先生も端から見るときつそうに見えますもんね」
奈々子が片頭を睨んだ。
「ほかに長谷川さんを恨んでいるような人は……」
片頭はしれっとした様子で話を続ける。
「仕事仲間……〈いけ田〉の人たちが考えられるわね。その中でも板前さんたちには話を聞いてみる必要があるとして」
綺麗は言葉を切った。
「問題はやっぱり長谷川さんがあたしの友禅を着ていた理由よ」
「その理由はまったく判らないんですか」
「皆目」
「もしかしたら」
奈々子が口を挟んだ。
「谷内さんが長谷川さんに恨みを抱いていて、そのことを示すために自分の作った友禅を着せたとか」
「うん。それは一つの考えよね」
「やった」
「もちろん断定できる段階じゃないけど……。あとは、あたしに罪を着せようとしたとか」
「なるほど。友禅を着せることによって罪を着せる。うまい!」
奈々子が少し酔ってきたようだ。
「ちょっと待ってください。いったい誰が毒島先生に罪を着せるっていうんですか」
「そういえばそうですね。毒島先生は、こっちに知りあいもいないんですもんね」
「知りあいがいなくても、たとえばあたしのことを知らない人でも誰かが買ったことが判っている友禅を着せれば、その友禅を買った誰かに疑いを持たせることができると犯人が考えた可能性だってあるわよ」
「その犯人って?」
「判らないけど怨恨の次の動機はお金でしょ。その線で誰かいないかしら」
「長谷川さんって、お金を持ってたんですか?」
「判らないけど殺してまで奪うような資産家だったとは考えられないかも」
「だったらお金という動機はひとまず却下ですか」
「あ、でも長谷川さんに保険金をかけて殺したら、お金が入るんじゃ?」
「長谷川さんは独身だし生命保険には入ってないわ」
「毒島先生、調べたんだ」
「自分が疑われているとなったら必死に調べるわ」
「さすがです」
奈々子が感心している。
「お金の線は薄いとしたら」
綺麗が話を戻す。
「あとは男女関係」
「その線はありそうですね。長谷川さんの写真を見たけど彼、かなりイケメンですもんね」
奈々子が言う。
「でも谷内さんの話だと長谷川さんとは色恋沙汰はない、って事でしたよね」
「信用できないわ」
綺麗が言った。
「長谷川さんと谷内さんがつきあっていた可能性はあるわ」
「ですね。独身の男女が神社で会っていたんだから。それに殺されたのが長谷川さんで長谷川さんは谷内さんの作った友禅を着ていたっていうのも偶然とは思えません」
「やっぱり友禅に戻ってくるわね」
綺麗は壁に飾られている友禅の写真を見つめた。
壁には友禅の写真が飾られている。
「谷内さんに会ったわ」
「どうでした?」
「谷内さんは落ち着いた感じの人よ」
「谷内さん、事件と関わっているんでしょうか?」
「殺人事件が起きた場合、その動機として考えられるのは、まず怨恨」
綺麗が指を折った。
「次にお金。そして男女関係の縺れ」
「殺人事件の動機はその三つにだいたい絞られますよね」
「そうよ。後は異常者による動機なき殺人。つまり殺人そのものが目的という事件だけど、これは少数派よね。虐めによる暴行死や親の虐待による子供の死もここに入れちゃっていいかしらね」
「怨恨の線だけど長谷川さんを恨んでいた人はいるんですか?」
「今の段階では判らない」
「谷内さんはどうですか?」
「きつそうな人に見えたけど……。それだけの話よ」
「毒島先生も端から見るときつそうに見えますもんね」
奈々子が片頭を睨んだ。
「ほかに長谷川さんを恨んでいるような人は……」
片頭はしれっとした様子で話を続ける。
「仕事仲間……〈いけ田〉の人たちが考えられるわね。その中でも板前さんたちには話を聞いてみる必要があるとして」
綺麗は言葉を切った。
「問題はやっぱり長谷川さんがあたしの友禅を着ていた理由よ」
「その理由はまったく判らないんですか」
「皆目」
「もしかしたら」
奈々子が口を挟んだ。
「谷内さんが長谷川さんに恨みを抱いていて、そのことを示すために自分の作った友禅を着せたとか」
「うん。それは一つの考えよね」
「やった」
「もちろん断定できる段階じゃないけど……。あとは、あたしに罪を着せようとしたとか」
「なるほど。友禅を着せることによって罪を着せる。うまい!」
奈々子が少し酔ってきたようだ。
「ちょっと待ってください。いったい誰が毒島先生に罪を着せるっていうんですか」
「そういえばそうですね。毒島先生は、こっちに知りあいもいないんですもんね」
「知りあいがいなくても、たとえばあたしのことを知らない人でも誰かが買ったことが判っている友禅を着せれば、その友禅を買った誰かに疑いを持たせることができると犯人が考えた可能性だってあるわよ」
「その犯人って?」
「判らないけど怨恨の次の動機はお金でしょ。その線で誰かいないかしら」
「長谷川さんって、お金を持ってたんですか?」
「判らないけど殺してまで奪うような資産家だったとは考えられないかも」
「だったらお金という動機はひとまず却下ですか」
「あ、でも長谷川さんに保険金をかけて殺したら、お金が入るんじゃ?」
「長谷川さんは独身だし生命保険には入ってないわ」
「毒島先生、調べたんだ」
「自分が疑われているとなったら必死に調べるわ」
「さすがです」
奈々子が感心している。
「お金の線は薄いとしたら」
綺麗が話を戻す。
「あとは男女関係」
「その線はありそうですね。長谷川さんの写真を見たけど彼、かなりイケメンですもんね」
奈々子が言う。
「でも谷内さんの話だと長谷川さんとは色恋沙汰はない、って事でしたよね」
「信用できないわ」
綺麗が言った。
「長谷川さんと谷内さんがつきあっていた可能性はあるわ」
「ですね。独身の男女が神社で会っていたんだから。それに殺されたのが長谷川さんで長谷川さんは谷内さんの作った友禅を着ていたっていうのも偶然とは思えません」
「やっぱり友禅に戻ってくるわね」
綺麗は壁に飾られている友禅の写真を見つめた。
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