綾町奈々子はいかにして毒島奇麗を落としたか?

奥野とびら

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長谷川五郎の秘密

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 野崎初子が二人の仲居を集めて話をしていた。
「今回は大変なことが起きてしまいました」
 七十歳とは思えないほど強い声だ。
「まさか長谷川さんが殺されるなんて」
 道下むつみが震える声で言った。
「悲しいことです。でもそれは今日、来店なさるお客様は知らないことです」
 若林珠里が神妙な顔で頷く。
「私たちは、お客様には、いつも通りの接待をしなければいけません」
 仲居たちは顔を引きつらせている。仕事場の同僚が殺害された衝撃は、なかなか冷めない。中でもいちばん年下の若林珠里の顔が最も蒼ざめている。
「大丈夫?」
 道下むつみが小声で珠里に訊いた。珠里は無言で頷く。
「あなた、長谷川さんと親しかったの?」
「そういう訳じゃないですけど」
「長谷川さん、いい男だったものね。勿体ないことしたわ」
「そんなんじゃありません」
 むつみの言葉に珠里は小さく首を横に振った。
「今日の段取りを説明します」
 初子が背後の茶箪笥の抽出を開けメモ用紙を取りだす。
「わたし、こないだ見ちゃったのよ」
 むつみが隣の珠里にボソリと呟いた。
「見たって何を?」
「長谷川さんが脅されているのを」
「え?」
 珠里が声をあげた。初子が振りむく。
「誰に脅されてたんですか?」
「あのね」
「私語は慎んでください」
 野崎初子の声がピシャリと飛んできた。
 むつみは口を噤んだ。
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