綾町奈々子はいかにして毒島奇麗を落としたか?

奥野とびら

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ダダ漏れする恋心

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綾町奈々子と片頭悠斗は小松空港行き飛行機の中にいた。
「どうして僕まで行かなきゃならないんだよ」
 片頭悠斗が言う。
 片頭悠斗は二十六歳。綾町奈々子の先輩編集者にして蝸牛堂出版社長、片頭尚樹の一人息子でもある。
「だって毒島先生が殺人事件に巻きこまれてしまったんですよ」
「担当はお前だろ」
「わたしは新人です。新人が一人で対処できる問題じゃありません」
 綾町奈々子は消え入りそうな声で言う。
 チャイムが鳴ってシートベルト着用義務のランプが消えたことを知らせる。
「わたしだって毒島先生と二人っきりで金沢旅行ができたら最高です」
 奈々子の小声の独り言を片頭は聞き逃さなかった。
「ん? どういう意味だ?」
「あ、何でもありません」
「お前、もしかして毒島先生に恋愛感情を抱いてるのか?」
「まさか」
 奈々子は笑ったが頬が引きつっている。
「だよな」
 片頭は一人納得すると「でも、まさか毒島先生が殺人事件に巻きこまれるとはなあ」と続けた。
「でも毒島先生は絶対に犯人じゃありませんよ」
「断言できないだろ」
「できます!」
 奈々子は珍しく大きな声を出した。
「毒島先生の嫌疑はわたしが必ず晴らしてみせます」
「頼もしい担当者だな」
「好きなんです。先生が」
「お前、やっぱり」
 言葉を続けようとしたとき機内販売のキャビンアテンダントが通り、奈々子がアイスクリームを注文したので話は中断されてしまった。

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