素人作家、「自作世界」で覚醒する。~一人だけ「縛り(もしかしてチート?)」な設定で生きてます~

永礼 経

文字の大きさ
上 下
66 / 96

第66話 レスファイアの決断

しおりを挟む

 その後――。

 エリシアの命により、サフィアは大聖堂大司祭である自身の養母、レスファイア・リファレントに事態を報告し、礼拝堂へと呼び出した。

『レスファイア、そういうことですので、サフィアをこの者たちに伴わせ、私の元まで来てもらうことにしました。よろしくお願いします――』

 エリシアの「魔法通信レパス」を直接受けたレスファイアは、意外なことにすんなりと状況を受け入れ、

御身おんみのご指示とあらば――」

と、許諾した。

『レスファイア、任務の件、いつもご苦労様です。あなたのおかげで、現在も世界の安定が図れています。今後も引き続き、よろしくお願いいたします。サフィアにはこちらで使命を与えることになるでしょう。あなたの教育により、その役目を果たせるに足る能力をすでに手に入れていると、そう見ております。やはり、あなた同様、リファレント一族の血は特別なのでしょう――』

と、エリシアはレスファイアに語り掛けた。

『それでは時間です。私の通信はここまでです。3人とも、剣ヶ峰で待っています――それでは直接会える日を楽しみにしていますよ?』

 という言葉を最後にエリシアからの「魔法通信レパス」の回線が切られた。


「お養母様かあさま、いえ、大司祭さま、リファレント一族とは、どういう意味ですか? 私は、大司祭さまの養子では無かったのですか?」
と、サフィアが問う。

「――サフィア、あなたは間違いなく私の養子です。が、あなたの実母、べルティア・リファレントは私の実の姉に当たります。つまりあなたは私の姪なのです」
と、レスファイアがサフィアの出自について明かす。

「私にはお母様がいたのですか?」
「もちろんです。この世に母の居ない人などおりません。しかしながら、あなたの母はあなたが幼き頃に天に召されました。その後、幼かったあなたは一時期、ポート・アルトの聖堂に身を寄せていましたね。そして、そのことは私の耳にも入ってきていました――」

 レスファイアの告白はなおも続く。

 レスファイアはその後しばらく、ポート・アルトの聖堂にサフィアが成長するまで預けておくことにした。
 それは、レスファイア自信がすでに今の役目、大聖堂大司祭に就いていたからである。
 幼きサフィアを引き取ったとしても、かえってサフィアに負担を強いることになることを見越し、ある程度働ける年齢まで待っていた。

 そして、サフィアが12になるのを待って、養子縁組をして大聖堂へと連れてきたというのである。

「それが、5年前のことです。――そもそも、あなたの存在について報せてくれたのはエリシアさまご本人でした。私とエリシアさまはあなたのことについて相談し、今話したようなことを決断したのです……。――サフィア、おそらくエリシアさまがあなたをお召しになったということは、その時期が来たということなのでしょう。あなたはあなたの出自と役目についてこの者たちとの旅の中で様々なことを知ることになるでしょう」

「私の役目――ですか?」

「恐れずに行きなさい、サフィア。あなたはこの5年の間に私が思っていた以上の成長をしてみせました。あなたの魔術師としての能力はすでに、その辺りの冒険者を越えています。あなたもとうとう旅立ちの時なのです。世界を見てきなさい、サフィア。そして、もし傷つき疲れたら、いつでもここに戻って来なさい。私はあなたの母であり、ここはあなたの家なのですから――」

「お養母さま――」

「ユーヒ、ルイジェン、娘のことをどうかよろしくお願いします。あなた方二人をエリシアさまがお召しというのなら、それはあなた方がその資格を持っているということです。創生神エリシアに間違いはありません。それは、私自身が一番心得ています。あなた方と共に行動することはサフィアの使命であり運命なのでしょう。どうぞよろしくお願いいたします――」


 そうして、その日、ユーヒとルイジェンはこの大聖堂で部屋を借り、一晩逗留することにして、明日の朝食後、サフィアを連れてポート・アルトへ向かうことが決定したのだった。


 その日の夕暮れ――。
 ユーヒは今日の昼のエリシアとの会話から、サフィアの養母であり、現大聖堂大司祭であるレスファイアの決断に至るまでの経緯をもう一度反芻して現状を整理していた。

 エリシアの言葉から察するに、ユーヒには何か特別なことを依頼したいと考えているようだった。
 もしそうなら、この世界を去るのはまだ先になりそうな気がする。
 ユーヒ自身、この世界の生活に随分と馴れてきているが、やはり、「地球の滑川夕日」にもう未練を感じないと言えば嘘になる。
 せめて、「滑川夕日」がどうなったのか、どうしてここにいるのかということぐらいははっきりさせておかなければ、未練を断ち切ることはできないだろう。

 それに、レスファイアの決断の速さも気になる。

 いくらエリシアに対して絶対的な信頼を寄せているとはいえ、これほど突然の展開には戸惑うのが普通の感覚のはずだ。

――そうでないとするなら、それは前々からその為に準備をしていた、ということだ。

 レスファイアの言うサフィアの役目とは何なのか。
 おそらくレスファイア大司祭にはすでに目星が付いているのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜

メロのん
ファンタジー
 最愛の母が死んだ。悲しみに明け暮れるウカノは、もう1度母に会いたいと奇跡を可能にする魔法を発動する。しかし魔法が発動したそこにいたのは母ではなく不思議な生き物であった。  幼少期より家の中で立場の悪かったウカノはこれをきっかけに、今まで国が何度も探索に失敗した未知の森へと進む。  そこは圧倒的強者たちによる弱肉強食が繰り広げられる魔境であった。そんな場所でなんとか生きていくウカノたち。  森の中で成長していき、そしてどのように生きていくのか。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。

永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。 17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。 その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。 その本こそ、『真魔術式総覧』。 かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。 伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、 自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。 彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。 魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。 【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠
ファンタジー
 最強の魔王ソフィが支配するアレルバレルの地。  彼はこの地で数千年に渡り統治を続けてきたが、圧政だと言い張る勇者マリスたちが立ち上がり、魔王城に攻め込んでくる。  残すは魔王ソフィのみとなった事で勇者たちは勝利を確信するが、肝心の魔王ソフィに全く歯が立たず、片手であっさりと勇者たちはやられてしまう。そんな中で勇者パーティの一人、賢者リルトマーカが取り出したマジックアイテムで、一度だけ奇跡を起こすと言われる『根源の玉』を使われて、魔王ソフィは異世界へと飛ばされてしまうのだった。  最強の魔王は新たな世界に降り立ち、冒険者ギルドに所属する。  そして最強の魔王は、この新たな世界でかつて諦めた願いを再び抱き始める。  彼の願いとはソフィ自身に敗北を与えられる程の強さを持つ至高の存在と出会い、そして全力で戦った上で可能であれば、その至高の相手に完膚なきまでに叩き潰された後に敵わないと思わせて欲しいという願いである。  人間を愛する優しき魔王は、その強さ故に孤独を感じる。  彼の願望である至高の存在に、果たして巡り合うことが出来るのだろうか。  『カクヨム』  2021.3『第六回カクヨムコンテスト』最終選考作品。  2024.3『MFブックス10周年記念小説コンテスト』最終選考作品。  『小説家になろう』  2024.9『累計PV1800万回』達成作品。  ※出来るだけ、毎日投稿を心掛けています。  小説家になろう様 https://ncode.syosetu.com/n4450fx/   カクヨム様 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896551796  ノベルバ様 https://novelba.com/indies/works/932709  ノベルアッププラス様 https://novelup.plus/story/998963655

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう
ファンタジー
 小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。  しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。  士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。  領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。 異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル! ☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

処理中です...