64 / 96
第64話 エリシア大聖堂の扉
しおりを挟むセシリアが遅い朝食を食べている間に、出発の準備もすっかり整っていたので、早速、大国ゼフィランスに向かうコトを告げる。
とにかく、アゼリア王国の権力が届く範囲から、逃げないとね
思い入れも何にもない、あの国の為に、もう、あんな苦しい思いしたくないし
グレンは少しだけ微妙な顔をしたが、何も言わずに頷いて、今までセシリアが使っていた椅子とテーブルを馬車の中にしまい、御者台へと向かう。
お腹が、ポテポテコロコロした感じになったレオと、グリフォンの雛
私の周りを走る姿、なんか可愛くて、癒されるわぁ~……
ほっこりしているセシリアの視線の先で、ルリは、ちょっと首を傾げてから、楽しそうに走り回っていたレオとグリフォンの雛を捕獲する。
「アタシは、こいつら連れて先に入ってるよ…リアもユナも、さっさとはいっといで」
ルリはそう言って、捕まえた2人を左右の腕に抱えて、馬車の中に入っていた。
うふふふ……おチビちゃん達も、馬車に入ったコトだし、私達も入りますか
「それじゃ、私達も馬車に入ろうか、ユナ」
「うん」
ユナと手を繋ぎ、セシリアは楽し気に馬車に乗るのだった。
全員が馬車に乗り、忘れ物が無いコトを確認し、グレンは馬車を出発させた。
「あっ…動き始めた……たぶん、この馬車って、それなりに良いモノなんだろうけど、けっこう振動がきついよねぇ………」
セシリアの言葉に、ルリが首を傾げる。
「こんなモンじゃないのかい?…アタシが檻に入れられて乗せられたモノはもっとガタガタいってたけど?」
「う~ん……ユナは記憶が無いから…わからないなぁ……」
などと話している間に、レオとグリフォンの雛は、セシリアが寄りかかるのに使っていたクッションのひとつに、ひっつい2人で眠っていた。
「あらあら……もう、ねむっちゃったのねぇ~…ふふふふ…可愛いわぁ~…」
異種族だけど、兄弟みたいに育ってくれるかなぁ~…
それにしても、はたから観たアレは、いっちゃなんだけど
かなり、面白かったなぁ……はぁ~……
この世界って、ラノベあるある的に、ろくな娯楽が無いからねぇ……
ずぅ~っと、つらく苦しい生活だったけど、今は自由なんだから
これからの今生は、豊かなスローライフを目指すわよ
勿論、それには豊かな食生活も欠かせないわ
大国…それも帝国と付く強国なら、色々な作物の種とかもあるだろうし
辺境に行く前に、色々と仕入れないとねぇ………
香辛料に、作物の種、出来れば薬草の種も欲しいわねぇ
下手すっと、お金よりも、物々交換が主流のところもあるだろうしね
……っと、今日こそは、グレンに金貨とかの価値を聞かないと
たしか、デュバインが崩したお金も入れたって言ってたけど
何処にいれたのかなぁ?
次の休憩の時にでも、探して聞かないとね
ああ、あと、聞こうと思っていたコト思い出したわ
「あっ…そうだ…ルリ、聞こうと思っていたんだけど、昨日のお肉とか、どうしてんの?」
「うん?どうしてんの?ってはどういう意味だい?」
「いや、だって…魔道具の冷凍庫とか無いでしょ?あのままだったら、腐っちゃうでしょ?」
セシリアの説明に、ルリがなるほどと言う表情で頷く。
「ああ、そういう意味かい……それなら、ほら…あの一角に積み込んで、アタシが《時止め》の魔法をかけておいたよ」
その言葉で、ルリが特殊な魔獣であるコトを、改めて知る。
同時に、させなくて良い魔力の消費をさせたことに罪悪感を感じる。
なんと言っても、今のルリは、極度な栄養失調に魔力だって不安定た妊娠中なのだから。
できるなら、出産した後、身体が癒えるまで、無理をさせたくないと思ったいただけに、自分の失態に頭痛を覚えつつ言う。
「えっとね……その……アイテムボックスあるんだけど」
セシリアの言葉に、バッと振り返ったルリが言う。
「本当に?」
「うん…この腕輪がアイテムボックス…あと、マジックポーチもあるよ」
私の言葉に、ルリは脱力して言う。
「そういうのは、早く言って欲しかったわぁ……アイテムボックスやマジックポーチがあるなら、アタシが無理して《時止め》使わなくてよかったんじゃない………」
クテっとしてみせるルリに、セシリアは腰に着けなおしたばかりのマジックポーチをはずして言う。
「なんなら、マジックポーチ、ルリが持つ?」
セシリアの言葉に、ちょっと悩む素振りをみせてから、ルリは首を振って言う。
「いいや、それだったら、そのマジックポーチはユナに持たせな……アタシは狩りをするから、持っているのにむかないよ」
「ああ…そっか……それじゃ、このマジックポーチはユナが持っててね」
昨日の魔獣も、ルリが獲ったって言ってたっけ
解体されていたから、どんな魔獣だったか知らないけど
たぶん、聞かない方が良いよね……
正体を知って食べられなくなるのはイヤだもん
「はい……ユナが持つね………ルリお姉ちゃん、マジックポーチに入れるから、もう《時止め》をはずして良いよぉ…魔力を食うんでしょ」
「ああ、助かるよ……流石に、ずっと《時止め》を維持すると、魔力が減るからねぇ……こんなに、弱った身体じゃなきゃぁ……たいしたコトないんだけどねぇ……はぁ~…」
ルリが《時止め》を解除したと同時に、ユナが壷などに入ったモノを次々としまう。
そして、今着ないような衣類など、直ぐ使わないモノを次々とマジックポーチに入れて行く。
保存食や水の壷なども、すべてマジックポーチの中に消え、馬車の中が広くなったコトで、セシリアはちょっと落ち込む。
嗚呼…いくらテンパリ状態だからって、気付こうよ私
最初からこうしたら、もっと馬車の中を広く使えたんだよねぇ
「ふふふふ…随分と広くなったねぇ……これなら、アタシも本体の姿なっても良いねぇ…昨日、リアが毛皮を被っても寒そうに寝てたからね……本体で添い寝してやれるよ」
ルリの言葉に、セシリアは内心でちょっとウホッとする。
うわぁ~…モフモフのルリの添い寝……凄く楽しみぃ~……うふふふ
猫型魔獣のルリに、もふりついて寝る夢想にちょっとうっとりするセシリアに、ルリが尋ねる。
「そう言えば、あの『隠蔽結界』とかいうヤツ解いたのかい?」
ルリの言葉に、セシリアは馬車の天井の上を視る。
あははは………張ったまま忘れていたわ………どうしようかなぁ?
このままでも、大丈夫だとは思うけど…ここは、それとなくルリに聞いてみよう
「あっ…張ったままだったわ……でも…このままでも支障ないから良いかな?」
セシリアの言葉に、ルリは頭痛を覚えたようにこめかみに指先をあてていう。
「あるに決まっているだろう……リアは、弱っているんだよ」
と、静かな叱責に、肩を竦め、ペロッと舌を出し、てへぺろをしつつ、隠蔽結界を解除するのだった。
今の私がやっても、可愛くないかもだけど、てへぺろしかないわ
あ~あ…ルリに怒られちゃった
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。
永礼 経
ファンタジー
特性「本の虫」を選んで転生し、3度目の人生を歩むことになったキール・ヴァイス。
17歳を迎えた彼は王立大学へ進学。
その書庫「王立大学書庫」で、一冊の不思議な本と出会う。
その本こそ、『真魔術式総覧』。
かつて、大魔導士ロバート・エルダー・ボウンが記した書であった。
伝説の大魔導士の手による書物を手にしたキールは、現在では失われたボウン独自の魔術式を身に付けていくとともに、
自身の生前の記憶や前々世の自分との邂逅を果たしながら、仲間たちと共に、様々な試練を乗り越えてゆく。
彼の周囲に続々と集まってくる様々な人々との関わり合いを経て、ただの素人魔術師は伝説の大魔導士への道を歩む。
魔法戦あり、恋愛要素?ありの冒険譚です。
【本作品はカクヨムさまで掲載しているものの転載です】

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。
羽海汐遠
ファンタジー
最強の魔王ソフィが支配するアレルバレルの地。
彼はこの地で数千年に渡り統治を続けてきたが、圧政だと言い張る勇者マリスたちが立ち上がり、魔王城に攻め込んでくる。
残すは魔王ソフィのみとなった事で勇者たちは勝利を確信するが、肝心の魔王ソフィに全く歯が立たず、片手であっさりと勇者たちはやられてしまう。そんな中で勇者パーティの一人、賢者リルトマーカが取り出したマジックアイテムで、一度だけ奇跡を起こすと言われる『根源の玉』を使われて、魔王ソフィは異世界へと飛ばされてしまうのだった。
最強の魔王は新たな世界に降り立ち、冒険者ギルドに所属する。
そして最強の魔王は、この新たな世界でかつて諦めた願いを再び抱き始める。
彼の願いとはソフィ自身に敗北を与えられる程の強さを持つ至高の存在と出会い、そして全力で戦った上で可能であれば、その至高の相手に完膚なきまでに叩き潰された後に敵わないと思わせて欲しいという願いである。
人間を愛する優しき魔王は、その強さ故に孤独を感じる。
彼の願望である至高の存在に、果たして巡り合うことが出来るのだろうか。
『カクヨム』
2021.3『第六回カクヨムコンテスト』最終選考作品。
2024.3『MFブックス10周年記念小説コンテスト』最終選考作品。
『小説家になろう』
2024.9『累計PV1800万回』達成作品。
※出来るだけ、毎日投稿を心掛けています。
小説家になろう様 https://ncode.syosetu.com/n4450fx/
カクヨム様 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896551796
ノベルバ様 https://novelba.com/indies/works/932709
ノベルアッププラス様 https://novelup.plus/story/998963655

大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)
たぬころまんじゅう
ファンタジー
小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。
しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。
士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。
領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。
異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル!
☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆

ブチ切れ世界樹さんと、のんびり迷宮主さん
月猫
ファンタジー
異世界へ拉致された主人公。目が覚めた先はボロボロの世界樹の中だった?!
迷宮の主となった主人公は、ダンジョンの能力【創造】により全く新しい”モノ”を世界に作り出し、現状の打破に挑む。
新しい魔物を創ったり、予想外な成長に困惑したり。
世界樹の愚痴を聞いたり、なだめたり。
世界樹のため、世界のため、世界樹の治療と環境改善を目指し、迷宮はどんどん大きくなる。そんなお話。
始めは少々危険な場面がありますが、ダンジョンが成長してからはその様な場面は少なくなり、周りの生物の方がダンジョンに抗う感じになります。
俺TUEEEならぬ、ダンジョンTUEEEもの。チート能力ならぬ、チートダンジョンの予定。
(チート能力者が居無いとは言っていない)
初投稿です。山なし谷なし作品ですが、暖かい目でみてください。
異世界なのだから、元の世界の常識が当てはまらなくても、おかしくないのでは? をコンセプトに、スキルやら魔法やらの仕組みを表現できたらと思っています。
※「小説家になろう」にも掲載
※ストックが切れたら、更新が遅くなると思います、ご容赦下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる