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第43話 王都シルヴェリアの朝
しおりを挟む聖暦1387年1月7日。
王都シルヴェリア。
昨日夕刻に到着した二人はそのまま宿屋に駆け込み、夕食をとるとそのまま就寝した。
今朝は、ほぼいつも通り朝の6時に起床し、朝食を採り、7時に宿屋をチェックアウトした。
今日の目的地はエリシア大神殿である。
いよいよエリシアとの対話ができる日がやってきた。
ユーヒは朝一でパラメータウインドウを確認した。最近の毎日の日課になっている。
ユーヒ・ナメカワ Lv11
筋力 121
体力 155
知力 82
器用さ 124
スキル(空欄)
3日前、ソードウェーブの地下迷宮を探索したあとから見て、Lvは一つだけ上がっているが、これはおそらく街間移動クエを達成したからだろう。
パラメータの方は、体力が3ほど増えているが、地下迷宮攻略時に比べれば、それほど大きな変化はない。
この時点でユーヒはある一つの仮説を立てていた。
僕の場合、Lvとパラメータ上昇には関連性がないのではないだろうか?
Lvはクエスト達成によって上昇するが、パラメータは魔物討伐や日々の鍛錬によって上昇する。
地下迷宮攻略時に大幅にパラメータが伸びたのは、自身の冒険者ランクに比して強力な魔物と対峙し、いくらかこれを撃破したからなのではなかろうか。
つまり、実際経験がそのままパラメータに反映されている――。
他の皆がどうなのかはもちろんわからない。それは、他の冒険者たちがどのようなパラメータ構造を取っているかが謎だからだが、ルイジェンの話によると、Lvアップするごとに基礎能力値が1あがるのが基本で、2あがることは稀にしかおこらないということだった。
それがもし冒険者全てに当てはまるのなら、通常、冒険者は「クエスト」をこなせばこなすほどLv上昇が起き、パラメータ上昇も起きることになるが、ユーヒは、クエスト消化によって上昇するのはLvのみであり、パラメータは上昇しないということになりそうだ。
(まあ、それもエリシアに聞けばわかる話だろう。結局はエリシアと話すことが全ての解決の糸口になることに変わりはない――)
ユーヒはそう思っている。
宿屋を出てまっすぐエリシア大神殿に向かう二人。
そう言えば、王都シルヴェリアは『城砦都市』だったとユーヒは記憶している。
しかし、街を取り囲む城壁はまだ見ていない。もしかして、取り払われたのか? と思っていた時、ルイジェンが街道の前方を指さして言った。
「やっと、城壁が見えて来たぜ? ほら――」
なるほど指さす方をよく見ると、白い壁が建物の間から見えている。街道の先に見えるのは「城門」か。
「北西門だ。シルヴェリアには八門あって、東西南北の4つの大門とそれぞれの中間の4つの小門の計8つだ。あれは、北西門だから小門の方だな」
なるほど――。シルヴェリアも随分と大きな街に発展しているということか、と、ユーヒは納得する。
夕日の物語では城砦の中に主街区があり、城壁外にはまばらにしか家は建ってなかったのだが、どうやら今では壁外にも街が広がっているということなのだろう。
8つの門については設定のままだ。主に北門は港町ニルスへ続く街道で、西はエルリシアへ、東はオーヴェル要塞へと繋がっているはずだ。
「――だよね?」
と、ユーヒは北門、西門、東門のことについてルイジェンに確認すると、
「ああ、その通りだ」
と、ルイジェンが返してくる。
どうやら、その位置関係に大きな変動は無さそうだ。
「エリシア大神殿は、主街区の中にあるから、あの城門をくぐって、まだしばらく歩かないといけない。場所的には、国際魔法庁本部庁舎の少し南あたりになるけど――」
「そういえば、ルイ。今の国際魔法庁長官ってどんな人なのか知ってるの?」
「どんなひとか――と聞かれたら、俺もよくは知らないかな。個人的な面識は一切ないしな――。それより、急ごうぜ? できれば昼までにお前の用事を終わらせて、昼飯には久しぶりに美味いものを食べたいと思ってるんだよな!」
そう言って、いきなりルイジェンが駆け出す。
ユーヒも慌ててルイジェンの後を追った。
ユーヒはあることに既に察しが付いている。
ルイジェンは実は魔法が全く使えないのではないだろうか――と。
本人がどうしてそれについて言及しないのかは謎だ。単純に、言う必要が無いと思っているというわけではなさそうに見えるが、知られたくないと思っているのなら、触らない方がいいことなのかもしれないとも思っている。
(まあ、そのうち話してくれる時も来るかもしれないし。今は触らないでおこう――)
ルイジェンのあとを追いながら、ユーヒはそんなことを考えていた。
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