13 / 37
第3章 サーレスの谷への到達と新たな導き手
13話 新たなる影
しおりを挟むニクスとの激闘を終え、世界は平和を取り戻したかのように見えた。しかし、真の平和が訪れたとは限らない。翔太たちがニクスを打倒したことで、新たな脅威が密かに目覚めつつあった。そして、その存在はこれまでとは異なる「影」だった。
---
「やっと終わったな…」
駿は空を見上げ、安堵の息をついた。ニクスとの戦いの爪痕は街に残っていたが、人々は再び希望を見出し始めていた。翔太と瑠衣も静かに周囲を見渡し、戦いの終結を実感していた。
「これで、本当に大丈夫だよね?」
瑠衣が不安そうに尋ねると、翔太は優しく頷いた。
「大丈夫だ。ニクスはもういない。世界は救われたよ」
そう言って微笑む翔太。しかし、その言葉にどこか不安の影が潜んでいた。彼は自分の背中の羽を感じ続けていた。ニクスを倒した後も、その輝きは完全には消えず、微かに振動を続けていたのだ。
---
その夜、翔太は奇妙な夢を見た。夢の中で彼は真っ暗な空間に立っており、遠くで誰かが彼を呼ぶ声が聞こえていた。声は冷たく、そして馴染みのあるものだった。
「翔太…お前はまだ…終わっていない…」
その声の正体を知ろうと近づくと、突然、闇の中から巨大な影が現れ、彼を飲み込もうとした。
「これは…何だ…?」
翔太が叫びながら目を覚ましたとき、彼の体は汗でびっしょりと濡れていた。心臓が激しく鼓動し、背中の羽もまた微かに震えている。
「何かが…まだ残っているのか?」
翔太は胸騒ぎを抑えられず、立ち上がって窓の外を見つめた。街は静かで平和そうに見えたが、その平和の裏に何かが隠れているような気がしてならなかった。
---
翌日、翔太は駿と瑠衣に昨夜の夢の話をした。
「夢…それとも、何か予感か?」
駿は真剣な表情で聞き返した。彼らが経験した数々の戦いの中で、翔太の直感は何度も的中してきた。
「ただの夢じゃない気がする。何か…別の存在が目覚めかけているような感じだ」
翔太の言葉に、瑠衣も静かに頷いた。
「ニクスを倒して終わりだと思ってたけど、私も何か違和感を感じるの。特に、夜になると空気が重くなる気がするわ」
彼らは再び気を引き締め、何が起きているのかを探るために行動を開始することに決めた。
---
翔太たちは、ニクスの戦いで出会った「魂の洞窟」に再び向かうことにした。そこには、古代から続く闇の秘密がまだ残っていると信じていた。
洞窟の中に入ると、前回の戦いで感じた闇の気配は弱まっていたが、奥に進むにつれて、再び闇の影が濃くなっていくことに気づいた。
「やっぱり、何かがいる…」
瑠衣が震えた声で呟くと、翔太は剣を手にし、闇の中へと慎重に進んでいった。すると、洞窟の最深部にたどり着いたとき、石の祭壇の上に黒い霧が漂っているのを見つけた。
「これは…ニクスの残留思念か?」
駿が疑問を口にしたその時、霧が形を取り始めた。徐々に、人型の影が現れ、その姿はニクスとは異なるが、同じく闇の力を纏っていた。
「お前たちがニクスを倒したことは見事だ。しかし、その力を持つがゆえに、お前たちは新たな試練に直面することになるだろう」
その影が静かに語りかけた。声は低く、冷たい。
「お前は誰だ?」
翔太が問いかけると、その影はゆっくりと笑みを浮かべた。
「我が名は、カオス。この世界の秩序を超えた存在だ」
翔太たちは言葉を失った。ニクス以上に未知の存在、カオスの名を聞いた瞬間、彼らの心に新たな恐怖が芽生えた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。
女の子と言われてしまう程可愛い少年。
アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。
仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。
そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた
願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~
『元最弱少女』は神様から鬼畜クエとチートを貰っちゃいました(泣)
らら
ファンタジー
主人公、椿は高一の春、異世界へ転移する。
そこで待ち構えていたのは『最弱』という事実。椿は仲間と共にその事実を受け止めたが────ある枝を手にした瞬間、その世界で転生をしてしまう。
いったい何が起ったのか、神様に調べて欲しいと言われチートを貰う。
そうして、学校に通ったあと、
天使からの助言で、集めろといわれた『神の使い手』の7人を集めるた旅にでる
~これは仲間と共に異世界の真実を探る物語~
※再投稿です
物語の本編(旅に出るところ)からチェリーのチート能力が発揮すると思います。
テンプレ的な場面もありますが、この作品では登場人物同士の人間関係や設定を詳しく書きたいと思っています。なので物語の進行ペースが比較的ゆっくりかも知れませんが、暖かい目で見守っていて下さると嬉しいです。宜しくお願いしますm(_ _)m
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
ミサキ~四つの御魂と縁の言霊~
結葉 天樹
ファンタジー
「な……何だこれーっ!?」
『なんで、どうして!? いったい私どうしちゃったの。夢なら覚めてーっ!』
七月の学校祭が近づいたある日、伊薙海斗は記憶喪失の幽霊「ミサキ」に憑りつかれてしまった。
そして、その日を境に平穏な日常が音を立てて崩れ出した。
夕陽が沈むころ、逢魔が時に現れる謎の少年。
海斗と親しい人たちが抱えていた心の闇が魔性に変わっていく。
果たして「ミサキ」とは。
歴史の中に消えた四百年の縁を繋ぐ壮大な物語が今、幕を開ける。
それでは――逢魔が時に、行逢いましょう。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる