黒白の世界

episode.02 廃病院の悪魔

chapter2-1

　２０２０年　４月中旬

人間は時間を多少かければ環境に慣れると言うが正直に言う、慣れる気がしない。
ロゴスに入り、もうすぐ1ヶ月を迎える。
クリア達から出された学校課題のノルマを達成、制服をプレゼントされる嬉しくない事があったり、医療科の担当医の鈴音先生サイコパスからも、ロゴスの本部外で活動する許可を貰ったり……だが、副業の許可は下りなかった。正直、そこは諦めた。
あれは悪魔や魔具を探す為に楽だったからやっていたようなものだ。

「榎川君、緊張していますか？」
担任の若い女性教師に話しかけられ首を横に振る。

　私立緋桜ひおう学園高等学部、普通科１年３組。これが私の所属するクラス。
（３年も続けないといけないのか、だるい）
そう言えばクリアに男子用の制服の方が動いやすいって頼んだらすんなり用意してくれたな……。
フリーダムな学校なのか？　というか前に不法侵入したばっかりだから気まずい。
自分が着ている少し大きめの制服を確認しながら先生に着いて行き教室に入る。

（うわ、気持ち悪い。）

　一斉に此方に興味という名の視線を向けられ、全員が同じ格好をして等間隔に座っているのはある意味恐怖を感じずにはいられなかった。
担任が私の名前を黒板に書いて簡易的な説明をしてくれた。
一言挨拶するように指示を受け、なるべく同級生と目を合わせないように奥の壁を見ながら挨拶する。
「……榎川月綺です、よろしくお願いします」
歓声と拍手の中、担任に座席に案内され着席する。人間って怖っ……。
『お前も人間のくせに』
脳に直接、声をかけられる感覚、安堵もするがなんだか小っ恥ずかしい。
（うるさい）
１、２時限目は座学、中でも英語は英国人でもあるクリアからみっちり仕込まれたのもあってか案外楽で安心した。
確か、次の３、４時限目は体育で教室外の授業だから着替えに行くんだよな……。
男女で更衣室が分かれているのか、何処だ？
立ち上がるとブワッ！　っと同級生達が集ってきた。
「え、何」
ジャージを入れた手提げ袋を持ちながら後退りする。
「着替えたら一緒に体育館行きませんか！？」
「あ……はい」
複数人の女子生徒に囲まれて逃げれなくなる。返事をした途端、じゃあ後で迎えに行くと言われて教室から追い出された。
　？？？
「おーい、転校生！　男子は体育館の近くの男子更衣室で着替えなんだ」
……男子生徒ではないんだけど、スラックスだから勘違いされたのか？　
「保健室に寄って行く」
保健室の先生に事情を話して着替えさせて貰おう。
「おー、場所分かるか？」
「嗚呼、朝に見かけたからな。気遣い感謝する」
これでいいんだよな？

私は軽く頭を下げて保健室に向かう。

「何か、榎川って堅苦しいな」男子生徒は首を傾げながら友人達と移動した。