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episode.01 悪魔狩りの死神
chapter1-3
しおりを挟む森林の奥深く
「臭いな此処」
神崎の瞬間移動魔法で救援要請を受けた祓魔師達のいる場所までついた。
近くには悪魔の死臭以外にも人間の死臭が森林の奥深くから漂ってくる。
「「「きゃああああああああッ!!!!!」」」
今の叫び声、向こうの方からか!!
「神崎! 何か吹っ飛んでくる!」
私が神崎に言うと同時に人間が3人吹っ飛んできた。
私は吹っ飛んできた人間を2人受け止めて、背中を後ろにある大木にぶつける。
「神崎、もう1人は……」
近くにいた神崎の方を見ると腕から血を垂らし気を失っている10代後半の少女が神崎の腕の中にいた。
「まずいですね、出血が多い」
神崎が急いで魔法で傷の悪化の遅延をして呪いの解呪を行っている。
「このネクタイ、呪い耐性の簡易魔法がかかってるから使え」
私は拾った2人の祓魔師の意識の有無を確認してから地面に落として結界を張る。
「じゃ後頼むわ」
私はそう言って日本刀を発動しながら結界の外に出る。
「了解しました。大丈夫ですか? そこの2人」
「……この結界……凄い」
「神崎さん?」
「皆さん、あの少年をよく見ていてください」
祓魔師3人を投げ飛ばしてきた悪魔が姿を現した。
制服を着た女子高校生が悪魔化したと言うような感じだな。全長は3メートル、左腕が未だ人間の腕だが切り傷まみれで右腕と左脚がカッターの刃のような物騒なものへと変わってしまっている。
「ルナ、あれ普通の悪魔?」
『ここが相性いいんだろうな、場所のお陰でバフがかかってる。』
「ルナ、力貸して」
『30%だけだぞ』
本来、人間に悪魔の魔力を直接当てられれば毒になる。
けど、私のように悪魔を、それも原初の悪魔【原罪】の破片である【七つの大罪】を宿している私は毒が殆ど効かない。
「ダズゲデ……イダイ……イダイ……」
不協和音のような声で言葉を発しながらガサガサと木々を切り倒しながら此方に向かって走ってきた。大きな鎌のような歪な形に縛られたカッターの刃を振りかざして切りかかってくる。日本刀を発動して刃を受け止めて払う。
「もう死ね」
私は憐れむように伝えて、ルナの魔力を込めた弾丸を装填した拳銃で奴の両目を撃ち潰し弱った瞬間、日本刀を解除して彼女の左胸に腕を突っ込んで核となっている心臓を掴んで勢いよく引っこ抜く。ブチブチと体内の管がちぎれていくのが手に、腕に伝わってくる。
「……アリ、ガ……ト」
「え?」
どう言うことか聞く前に悪魔は砂塵になり、私が引きちぎった心臓もサラサラと空に舞っていく……。心臓の中に何か入っている? これ、は?
『月綺、奥の方に人間の死体が沢山木に吊らされてるが、さっきの悪魔の魔力が完全に消えた。あの悪魔……フェリータと呼ぼうか。フェリータは此処の自殺者の負の感情を魔力にして動いていたようだな』
フェリータ、傷まみれの女。
【コレ】は持ち主に返すか。
手に握っていた彼女の大切なモノと思われる装飾品をポケットにしまいルナの言う奥の場所に行く。
「月綺君!? そっちは行かないでください!」
神崎の制止の声を無視して奥に進む。
近づくと死臭が濃くなっていくと木々にぶら下がる多くの人間と地面に落ちた果実のように破裂した人間もいくつかある。
上を見上げると車道があるようだ、車か何かで移動して来て死者の国にバンジーしたってところか。
「月綺!」
肩を掴まれ私はそのままよろけた。
私が黙って神崎を見ていると呆れた声で
「……本当に君は」
とため息を漏らしながら手を一方的に繋がれる。
「何だよ」私が聞くと
「不安なんですよ」
怖がりか! 死体なんざ見慣れてんじゃねぇのか
「怖いのか?」
「君のことが! 心配なんです!」
訳わからない奴だなコイツ、手を振り解こうとする前にルナが
『灰都の言うこと聞いとけ、自分から歩み寄るのも人間には必要な事だ』
と強めに言ってくるので握られた手を見て困惑しつつ握り返す。温かい、これが生きている人間の体温……なのか。
「警察に連絡したらどうだ? 私が手配するか?」
私が神崎の顔を見て言うと
「そうですね、ロゴス経由で連絡して貰いましょう。3人の祓魔師は無事でした、今救助が来ます。ありがとうございました、月綺君」
そうか、生きていたか。
「月綺でいい……お前さっきそう呼んでたろ」
「はい、月綺。戻りましょう」
神崎は携帯電話で通話しながら私の手を引いて戻る。
「なんで……悪魔の心臓を素手で潰せるの?」
悪魔の呪いを受けた少女を抱えている黒髪の少女は震えながら私を見た。彼女のこの目を私は知っている。何度も見てきた目だ。
恐怖に怯えた目
悪魔も人間も同じ目で私を見ていた。
「殺さないと殺される、この世界は生きるか死ぬか……手段なんかどれでも構わない」
私がそう答えると呪いで傷ついていた少女が薄っすら瞼を開いて私を見ていた。
「あんな化け物みたいなこと、普通は出来ないわよ!! 気持ち悪いっ!」
近づくなというような顔で彼女は自分の仲間を守るように2人を抱えていた。もう1人は目立った傷はないが気絶している。何かおかしいぞ、あの女から悪魔の臭いがする。
「おい、そこの気絶してる女を見せろ」
私は神崎の手を放して女に近づく。
「嫌よ! 近づかないで」
「良いからっ! 退けっ!」
私は文句を言う少女と呪いで負傷している少女を掴み神崎の方に押し付けて女の身体を触って違和感を探す。
『月綺、そいつの胸部の中心にフェリータの一部が消失しないで刺さってる』
私は慌てて女の服を持っていたナイフで切り裂き下着に貫通している黒い鋭利な2、3センチメートル程の破片を慎重に指先で抜き取り、下着の胸部中心にあるフロントホックを外して「神崎、聖水貸してくれ」
そう言いながら振り向くと既に居て聖水を渡される。
「痛むぞ」
一応、女に声をかけてから聖水を傷口にかけてハンカチで傷口を抑える。
悪魔臭さはなくなった、普通の血の匂いだ、でもなんだ? 血の臭いが濃い気がする。
「神『月綺、それは問題ないから神崎には言うな』
神崎に聞こうとする前にルナに強く言われ私は少し考えてから女に着ていた自分の制服ジャケットをかける。
「どうしました?」
神崎は名前を呼ばれたことに反応する。
「……撤退する、私は此処にいない方が良いだろ、人間と相性が悪いんだ」
「……る……あ? さん」
女の意識が戻った。
「先輩!?」
唯一軽傷で済み、私を罵倒した少女が女に近づこうとするが、私を見て立ち止まる。
「もう、大丈夫だ。あんたは助かった」
私がそう言うと身体は麻痺しているのに震えている手を傷口を押さえている私の手を握るように乗せて
「助けに……来て………く……」
「喋るな、まだ辛いだろ」
そう言うと唇をぱくぱく動かして何かを言っているので耳を寄せる。
「ありがとう」
耳元で弱々しく消えそうな声で感謝を言って女は気絶する。
「……どうして榎川翔も彼女も神崎も……私の胸の奥をざわつかせるんだ」
下唇を噛み、神崎達の方を向いて言う。
「お前等から見て、私は人間か、化け物か……どっちなんだ」
悪魔から死神と言われ、助けた人間から化け物と言われ続けた私は一体何なのか自分でも解らない。半人半魔と言いつつもルナとは別々の意識がある。身体の悪魔部分はルナ、人間部分は月綺。じゃあ、内側は何だ? 平気で人間も悪魔も殺せる私はおかしいのか?
「ダメだ、お前等といると私が壊れそうだ」
私は抱き抱えていた女を下ろして荒い呼吸を抑える暇もなく強い魔力を放出して祓魔師達を威圧させてその場を逃げる。
背中に神崎の呼び声が聞こえた気がしていたけれど、私には振り向いて神崎を見ることができなかった。
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