狩女のクローズ

鳥井まいまい

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第一章

2記  試験当日

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「それでは・・・初めてください」


その合図と共にアンナ含めた他の生徒達が一斉に机に置いてある鉛筆を取って、回答用紙を埋め出した。そこはセレヌスという街の試験会場。アンナは召使の筆記試験を受けに来ていた。



         一時間後・・・・・・。



「それでは、やめてください・・・本日の試験はここまでです。皆さん、忘れ物のないようにしてくださいね・・・試験の合格が認められた方は役所に行って証明書等を貰ってくるように」


試験官である男性に試験の終わりを告げられ、ある者は用紙をそのままにして行き、ある者は手渡しで試験官に渡しに行った。椅子の下にあるトランクを取り出し、鉛筆が三本くらいしか入らないであろう、可愛らしい桜色の筆箱を取り出し、鉛筆を戻した。 


アンナは後者同様、試験官に用紙を手渡し、その場を後にした。手渡しした時、声が小さくて聞き取りにくかったけど、試験官の人、「ありがとう」って言ってたな。いいことした気分。それに、試験も無事いきそうだし、満足です。


春のにこやかさ、外に出てて、お昼時の日差しを浴びにいく。予定としてはこの後、アンナは試験終わりに寄る所がある。友達と約束している飲み屋に行くのです。そこの飲み屋は、この街では二番目に人気の場所。人は来るが、常連の方が多いお店。お目当ては、そこにしかないテラス席。


一番目は貴族がなど、王族が使う客間や、宿泊。値段が高い為、あまり使うことができないが、旅の客や狩人などが泊まる宿としては他の所よりも圧倒的である。

 
アンナ達三人はそこがよく溜まり場になっている。何かあれば、そこで愚痴や楽しかった事や、どこか遊びに行く時の計画も全てそこでしている。故に、店員さんとは仲良しである。


軽い足取りで向かい、飲み屋に着いた私は、他のお客さんにも失礼がないように、扉に手を静かに当て、優しく押していった。半分ほど押したあたりで覗き込み、辺りを見渡すと、この店の看板娘のマリーが笑顔で手を振ってくれた。


アンナも手を振って笑顔で挨拶。その後、テラス席へ向かった。先について場所を取っておいてくれた、友達のミコとウィタがアンナを見つけて手を振ってくれている。二人の元に行き、アンナがいつも座る席に腰を据える。


ミコが「うい~」と挨拶、ウィタが「お疲れ様」と労いの言葉をくれ、アンナも「ありがと」と返し、胸を撫で下ろす。

 
「何か頼んでいい?」と鞄を椅子の下に置きながら聞いた。
「あー、ミコが頼んでくれたから、アンナはそれまで待てる?」
「うん!ミっち、ありがと!」
「うんむ」


マリーがお冷を乗せた、おぼんを片手に歩いて来た。


「はい、お冷ね。まだ焼いてるからちょっとまっててね~」


と、言いながら。お冷をアンナの前に置いて、室内に戻ろうとした。


「は~い、待ってま~す」


ミコがそう明るく返事すると、後ろを軽く振り向き、優しく微笑みかけ、室内に戻っていった。
 

「んで、アンナ。どうだったの?試験」
「ウィタちゃんこそ~どうだったの?私は、いつもどうりかな」
「あたしは・・・。びみょい、でもアンナは頭いいから今回も余裕なんだろうね」
「そんなことないよ、私にも苦手はあるもん」
「狩人の試験?やっぱり、受けないつもり?」
「うん、だって・・・。怖いから」


そう、アンナの苦手な科目・・・。それは戦闘である。


この世界にはマナという血液と同じで人間や動物にはなくてはならない力が宿されている。そのマナの量は人によって違うけど、多ければ多い程、その人は恩恵や職に恵まれる。


アンナは生まれつきマナの量が少なく、常人の半分しかないらしい。なので、戦うにしても、マナがなければ戦うことすら、逃げることすらできない。なので、アンナはそのものとは無縁の生活を送るべく、狩人以外の勉強をしまくり、せめて資格だけでもと思い取りまくっていたのだ。


「でもアンナっち、今日は召使の資格取りに行ってたんだよね?」
「うん」
「召使も、結構狩人の仕事やらされっからね~。そんな変わらないよ?」
「うん、聞いたことはあるよ。・・・でも、狩人以外でも召使は需要あるから、取っといて損はないかなって思ったの」


《召使》それは、動物やマ獣と仮契約、または本契約し、意思疎通を試みる事。本契約とは仮契約の違いとは。一時的な協力願いなら短時間だが結ぶことができるのが仮契約。そして、本契約とは10対0の主従契約、相手を完膚なまで屈服させるか、絶対的な信頼を勝ち取るかの方法で結ぶことができる。相手は契約主の従者となり、どこに行くにも一緒になるとか。もちろん従者からは契約を切ることは出来ない。その代わり、本契約は仮契約とは違いマナの量にもよるが、さまざまな恩恵を従者と共有することができるようになるらしい。


「まぁ~わからなくもないけど、今の時代はいかに自分の持てるマナを生かせるかだからねぇ、何か一つでも得意なモノ持ってないと、きついよね~」
「ミっちは確か料理だよね」
「うんそう。だから、そっち方面でここの役所に行って仕事探してっけど、王都まで行かないと無いって言われちってさ~。ここは狭いから拾ってくれねぇんだよね」
「召使の方はどうなの?」
「もう辞めた」

「「え!?」」

「だって、基本は狩人の下働きみたいなもんだよ?・・・はぁ、こき使われるし、女って分かったら、料理だの洗濯だのテントの配置だの、召使ってそういう役割じゃないんだけどね~」
「まぁ、探索と援護が仕事だもんね。仮契約はしてたの?」
「してたけど。あーちのマナの量じゃ~、一時間が限界かな~」
「あたしも、召使の資格を取った時、家の近くの森に行って、鳥と仮契約してみたのよ」

「え、ウィタちゃんも?それでどうなったの?」
「うん、その鳥がね。個体差はあれどマナをどれくらい持っているのかが分からなかったから。仮契約だし、まぁ~いっかって、空に向かって飛ばしてあげたのよ。そしたらマナが急にたくさん吸い取られて、干からびるところだった」
「うぅぅ・・・。私なんて契約したらどうなっちゃうか」
「秒で逝くね~」


アンナは人差し指でお冷の縁をなぞりながら「やっぱり、そうよね~」と呟いた。


その時、厨房からテラス席へ、マリーがミコの注文した食べ物をおぼんから少しはみ出た形で両手に持って届けに来てくれた。アンナ達の前に来たマリーはテーブルの端に、おぼんの先を優しく下ろした後、食べ物を並べていった。


「わたしのお店の看板メニュー、3種のチーズピザ。それと、はちみつトーストです。お待たせしました~」
「ん~!いい匂い!あ、ウィタちゃん。膝掛け取って~」
「うん」


ウィタが机に置かれた膝掛けをアンナに渡してくれた。


「腹へった~、ここのピザ好物だからうれし~」
「ミコはここに来たら絶対食べてるもんね、まぁ、わかるけどね。美味しいし。」
「ごゆっくり~」
「「「いただきまーす!」」」




         三時間後・・・・・・。




女子会をしばらく楽しんだ後、ミコが不安げな表情である出来事を話した。


「んとね・・・。あーち、召使やってたって言ってたでしょ?」
「うん」
「あーちね・・・。ここの近くでマ獣と戦ったんだ」
「え!?そうなの!?」「っ!?」


ミコは膝あたりで両手を握り合わせ、少し不安そうにしていたが話してくれた。


「・・・正直、アンナっちには刺激が強いかなって思うけど。一週間前、だったかな。あーちが狩人のベニーさんって人と猪退治を一緒に受けて、ギートス平原ってとこに向かったの。三回目の仕事だっけど、全然慣れてなくてさ。任務も終わって街に帰ろうとした時・・・」


ミコは思い出しながら当時の事を話した。

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