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アギジャ博士

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9 アギジャ博士




「宇宙エレベーターに最も必要なブレイクスルーは確か……糸だったそうだな、21世紀
初頭においては」

「その通りですよラッくん、蜘蛛の糸のように軽くて丈夫なワイヤーの開発に力を入れて
いたようです」

「その頃…21世紀初頭にも、おいらたちのようなユタージンは
いたのかな?」

「さすがですねラッくん、ナツダックがその辺りを調べ始めたのは、つい最近ですよ、だから、個人を特定するには至っていませんが、その頃に、すでにユタージンは存在して
いたようです」

「だとしたら、そいつは、だいぶ、イライラして毎日を過ごしていたんだろうなあ
なっちゃん」

ランチラックはほんとうに同情しているようだ
と夏田古文時は思う

同じユタージンでも
心の冷たいやつもいれば、ラッくんのようにやさしいやつもいるのである

「イライラしていたでしょうね、蜘蛛の糸のようなワイヤーではないのですから、必要なのは蜘蛛そのものなのですから、私がそれに気づいたのは南の島でギューちゃんに出会ったことがきっかけでした、そしてナツダック会長に会って…それからユタージンであるユターシャを忘れることが
今もできない………」


ナツダックの宇宙ステーションは植物園を備えている

夏田古文時とランチラックが植物園に入ると

「お久し振り
夏田さん」

夏田古文時に抱きついたのは
アニメーションで再現不可能な美しさを持つ少女
ユターシャであった

ユタージンの発見に最も寄与したのが
この美少女ユターシャである

思いがけない再会にあたふたする夏田古文時

「宇宙植物学の重鎮アギジャ博士を
紹介しますわ」

猫背のへなちょこ野郎がアギジャ博士であった

ランチラックは美少女ユターシャに興味津々らしい

「ユタちゃん
宇宙植物学の何だって?」

「重鎮ですわ、ランちゃん」

「もう一度言って」

「じゅう・ち・ん・」

「いいねえ」


宇宙植物学の重鎮アギジャ博士は
猫背のへなちょこ野郎なのだが
その声は低く
よい響きであった

「宇宙植物については、夏田古文時さんも御専門の分野でありますし…簡単に状況だけを…月の反対側に衛星を補食する宇宙植物ゲゴードが根を下ろしました、ほんの僅かの人間しかそれを知りません、もちろんユタージンはほとんどその事態を感覚に捕らえて
いるでしょうが…」

ここにいる
ユターシャ、夏田古文時、ランチラック、アギジャ博士
すべてユタージンであることは予め知らされていた

「我々の任務はゲゴードの駆除ではありません、駆除だけなら、ナツダックの社員数人と、SNSスーパーナチュラルサラリーマン夏田古文時さんとで充分遂行
できるでしょう」

言われて夏田古文時はニンマリしている
やはりこいつは馬鹿かもしれないとランチラックは思う


猫背のへなちょこ野郎であるアギジャ博士は

「駆除ではなく、捕獲なのです、衛星を補食する宇宙植物ゲゴードを我々は
捕獲するのです」

と言った

ランチラックは

「捕獲?衛星を食うほどだから
ものすごくでかいだろゲゴードちゃんは、どうやって捕獲すんの?
アギっちゃん?」

「ユタージンの特性を全開にして任務を遂行して
いただきます」

「このメンバーの特性を合わせたら任務を遂行できると判断したのは当然……
会長でしょうか?」

怯えながら夏田古文時が訊いた

この男はトラウマになるほどの虐待をナツダック会長から受けたのだろうとランチラックは思う

ナツダック会長にランチラックは会ったことがないが
残虐な情け容赦のない怪物だとの噂が絶えない

「いえ、SNSスーパーナチュラルサラリーマン夏田古文時さん、今回の任務を立案して、わたくしアギジャに指示したのは副会長の
水田水遁 さんです」

これには冷静な夏田古文時も驚いた


「水牛の?水牛の水田水遁、あの
ぎゅうちゃんが副会長?」

「水田水遁はもちろん水牛ではありませんよ、ナツダックの副会長が水牛であるはずがないでしょ、夏田古文時さんが知っている水牛のぎゅうちゃんは水田水遁副会長がユタージンの特性で
変身した姿なのです」

「そうだったのか、確かに……水牛のぎゅうちゃんは私SNSスーパーナチュラルサラリーマン夏田古文時の鼻にポップコーンを詰めて映画館の椅子に縛り付けました、水牛にできることではない…なぜ気づかなかったの
でしょう…」

ランチラックは夏田古文時に「それはお前が馬鹿だからだ」と言いたい思いを抑えた

それもこれもナツダックからの報償金の為である

ナツダックは超一流企業である

任務に失敗しても
それなりの金は貰える
だがランチラックは失敗するつもりはない






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