ワールドエンド 異世界ループを抜け出すには

husahusa

文字の大きさ
上 下
46 / 46
エクストラエピソード

世界の模範解答

しおりを挟む
「さて、何から話そうかルノン君」

 男が崩れ去った家の破片に腰掛ける。

「ふざけるな、悠長に話している時間は無い」

 ルノンと呼ばれた男は口調こそ平静を装っているが、表情には焦りや怒りが出ていた。

「話している時間は無いと言ってもねえ……この状況、どうにか出来るのかい?」

 男は空を指さす。
 空一面は通常では考えられない程『赤く』、一目見て異常だとわかる。

 ルノンも男の説得に、腰を落ち着けて話す覚悟が出来たのか、同じく瓦礫に座る。
 男はその様子を満足げに眺めた後続ける。

「君がどれ程の事を知っているのかわからないけど、今この世界がこうなったきっかけはわかるかい?」
「リリーがこの世界に戻って来たからだ」
「その通りだ!」

 男は正解と言って手を叩く。

「……あの世界は言わば『化学』のせいで破滅したと言ってもいい」
「化学?」
「ああ、そうだ。外来種という言葉を知っているかい? 本来その場所には存在しない筈のものがやって来て、結果元々その場所にいたものが消滅する」
「何が言いたい」

 おそるおそるルノンが聞く。

「あの世界も同じだよ、本来魔法しか存在しない世界に化学がやって来た結果魔法が消滅した、残念だけどあの世界は失敗したのさ」
「失敗しただと!?」
「そう、化学と魔法の両立にね」

 男は立ち上がり天を仰ぐ。

「見てごらんよ! 丁度今こっちの世界も両立できるかどうかの瀬戸際なんだ! こんなにワクワクする事は無いじゃないか!」

 狂っている、そう感じたルノンは大声で笑う男に冷や汗を流しながらも問いかける。

「お前は新たな世界を作ろうとしているのか!? 新世界の神にでもなるつもりか!」

 ルノンの問いに男はキョトンとするも、直ぐに笑い直す。

「新世界の神? とんでもないよルノン君!」

 先程以上に笑い出したかと思えば、男はいきなり真顔になる。

「『我々』が目指しているのは新世界の創造では無い、逆だ。『我々』は世界を本来の姿に戻そうとしているだけだ魔法と化学が共存した世界、世界としての強さが大きい世界を!」

 思わずゾッとするルノン。
 男はひとしきり言うと元の調子に戻る。

「そういえばルノン君、前にあっちの世界がいつ終わったのかと聞いたね? 君も彼女から聞いたんだろう? 不思議に思わなかったのかい? あの世界には犬や猫は勿論、鳥も何もかも、人間以外の生命は出て来ていないだろう?」

 男は邪悪な笑みを浮かべる。

「初めからだよ、初めからあの世界は終わっている。丁度君がこっちの世界に来たと同時にね」

 「ああ、そうだ!」何かを思いついたのか、無邪気な笑顔でルノンに告げる。

「あっちの世界では結局人間も絶滅したのと変わらない。ということは、必ずしも世界にとって生命は必要では無いと言う事だ! 言い換えればポストアポカリプスの後でも世界は成り立つ!」
「おい! 何を考えている!」

 ルノンは震え声で異を唱える。

「人間はもう必要ない……という事だよ」

 ルノンに対して男は笑顔のまま答えた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」

ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」 美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。 夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。 さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。 政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。 「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」 果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!

音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。 愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。 「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。 ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。 「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」 従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

処理中です...