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エクストラエピソード
世界の模範解答
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「さて、何から話そうかルノン君」
男が崩れ去った家の破片に腰掛ける。
「ふざけるな、悠長に話している時間は無い」
ルノンと呼ばれた男は口調こそ平静を装っているが、表情には焦りや怒りが出ていた。
「話している時間は無いと言ってもねえ……この状況、どうにか出来るのかい?」
男は空を指さす。
空一面は通常では考えられない程『赤く』、一目見て異常だとわかる。
ルノンも男の説得に、腰を落ち着けて話す覚悟が出来たのか、同じく瓦礫に座る。
男はその様子を満足げに眺めた後続ける。
「君がどれ程の事を知っているのかわからないけど、今この世界がこうなったきっかけはわかるかい?」
「リリーがこの世界に戻って来たからだ」
「その通りだ!」
男は正解と言って手を叩く。
「……あの世界は言わば『化学』のせいで破滅したと言ってもいい」
「化学?」
「ああ、そうだ。外来種という言葉を知っているかい? 本来その場所には存在しない筈のものがやって来て、結果元々その場所にいたものが消滅する」
「何が言いたい」
おそるおそるルノンが聞く。
「あの世界も同じだよ、本来魔法しか存在しない世界に化学がやって来た結果魔法が消滅した、残念だけどあの世界は失敗したのさ」
「失敗しただと!?」
「そう、化学と魔法の両立にね」
男は立ち上がり天を仰ぐ。
「見てごらんよ! 丁度今こっちの世界も両立できるかどうかの瀬戸際なんだ! こんなにワクワクする事は無いじゃないか!」
狂っている、そう感じたルノンは大声で笑う男に冷や汗を流しながらも問いかける。
「お前は新たな世界を作ろうとしているのか!? 新世界の神にでもなるつもりか!」
ルノンの問いに男はキョトンとするも、直ぐに笑い直す。
「新世界の神? とんでもないよルノン君!」
先程以上に笑い出したかと思えば、男はいきなり真顔になる。
「『我々』が目指しているのは新世界の創造では無い、逆だ。『我々』は世界を本来の姿に戻そうとしているだけだ魔法と化学が共存した世界、世界としての強さが大きい世界を!」
思わずゾッとするルノン。
男はひとしきり言うと元の調子に戻る。
「そういえばルノン君、前にあっちの世界がいつ終わったのかと聞いたね? 君も彼女から聞いたんだろう? 不思議に思わなかったのかい? あの世界には犬や猫は勿論、鳥も何もかも、人間以外の生命は出て来ていないだろう?」
男は邪悪な笑みを浮かべる。
「初めからだよ、初めからあの世界は終わっている。丁度君がこっちの世界に来たと同時にね」
「ああ、そうだ!」何かを思いついたのか、無邪気な笑顔でルノンに告げる。
「あっちの世界では結局人間も絶滅したのと変わらない。ということは、必ずしも世界にとって生命は必要では無いと言う事だ! 言い換えればポストアポカリプスの後でも世界は成り立つ!」
「おい! 何を考えている!」
ルノンは震え声で異を唱える。
「人間はもう必要ない……という事だよ」
ルノンに対して男は笑顔のまま答えた。
男が崩れ去った家の破片に腰掛ける。
「ふざけるな、悠長に話している時間は無い」
ルノンと呼ばれた男は口調こそ平静を装っているが、表情には焦りや怒りが出ていた。
「話している時間は無いと言ってもねえ……この状況、どうにか出来るのかい?」
男は空を指さす。
空一面は通常では考えられない程『赤く』、一目見て異常だとわかる。
ルノンも男の説得に、腰を落ち着けて話す覚悟が出来たのか、同じく瓦礫に座る。
男はその様子を満足げに眺めた後続ける。
「君がどれ程の事を知っているのかわからないけど、今この世界がこうなったきっかけはわかるかい?」
「リリーがこの世界に戻って来たからだ」
「その通りだ!」
男は正解と言って手を叩く。
「……あの世界は言わば『化学』のせいで破滅したと言ってもいい」
「化学?」
「ああ、そうだ。外来種という言葉を知っているかい? 本来その場所には存在しない筈のものがやって来て、結果元々その場所にいたものが消滅する」
「何が言いたい」
おそるおそるルノンが聞く。
「あの世界も同じだよ、本来魔法しか存在しない世界に化学がやって来た結果魔法が消滅した、残念だけどあの世界は失敗したのさ」
「失敗しただと!?」
「そう、化学と魔法の両立にね」
男は立ち上がり天を仰ぐ。
「見てごらんよ! 丁度今こっちの世界も両立できるかどうかの瀬戸際なんだ! こんなにワクワクする事は無いじゃないか!」
狂っている、そう感じたルノンは大声で笑う男に冷や汗を流しながらも問いかける。
「お前は新たな世界を作ろうとしているのか!? 新世界の神にでもなるつもりか!」
ルノンの問いに男はキョトンとするも、直ぐに笑い直す。
「新世界の神? とんでもないよルノン君!」
先程以上に笑い出したかと思えば、男はいきなり真顔になる。
「『我々』が目指しているのは新世界の創造では無い、逆だ。『我々』は世界を本来の姿に戻そうとしているだけだ魔法と化学が共存した世界、世界としての強さが大きい世界を!」
思わずゾッとするルノン。
男はひとしきり言うと元の調子に戻る。
「そういえばルノン君、前にあっちの世界がいつ終わったのかと聞いたね? 君も彼女から聞いたんだろう? 不思議に思わなかったのかい? あの世界には犬や猫は勿論、鳥も何もかも、人間以外の生命は出て来ていないだろう?」
男は邪悪な笑みを浮かべる。
「初めからだよ、初めからあの世界は終わっている。丁度君がこっちの世界に来たと同時にね」
「ああ、そうだ!」何かを思いついたのか、無邪気な笑顔でルノンに告げる。
「あっちの世界では結局人間も絶滅したのと変わらない。ということは、必ずしも世界にとって生命は必要では無いと言う事だ! 言い換えればポストアポカリプスの後でも世界は成り立つ!」
「おい! 何を考えている!」
ルノンは震え声で異を唱える。
「人間はもう必要ない……という事だよ」
ルノンに対して男は笑顔のまま答えた。
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