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第三章 過去編

真十五話「出会ったのは」

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「行こうか」
「ああ」

 ゼノとオーはエデンへと向かう準備をしていた。
 囚われているネシアを救う為。
 オーもエデンの局長だと説明した際に、よろこんで救出に協力してくれた。
 二人だけだったが、一人よりはマシだと、このままでは何も進展しないどころか、どんどんアンドロイドやアルビオンに支配されるだけだと考えて強行突破する事にしたのだ。

「武器は……これでいいか」

 ゼノはいつも使っている馴染みの剣を取り出す。

「そういえばいつもそれを使っているな」
「ああ、これが一番使いやすいんだ」
「使い勝手はいいんだが、ボロボロすぎやしないか?」

 オーの言う通り、ゼノが使う剣は刃先がボロボロで鉄どころか木すら切れ無さそうな状態だった。

「まあ確かに……でもどうしろと?」
「少し貸してくれ」

 そう言ってゼノから剣を受け取ると、徐に周りのアンドロイドの一体を破壊する。

「おい!」
「まあ見ておけ」

 オーは破壊したアンドロイドからいくつかのパーツを選び、ゼノの剣をコーティングするように張り付ける。
 ボロボロだった剣はいびつな形になり、張り付けられたパーツは吸着し取り外せない。

「お前! なんてことを!」

 ゼノがオーに詰め寄るが、逆にオーに胸倉を捕まれる。

「ゼノ、これからは戦い方を変えろ……相手は人間じゃない。剣は消耗品だ、今の戦い方ではいくらあっても足りないぞ」

 斬るのではなく、叩き潰せ。と一言だけ残して先に出て行ってしまう。

「重っ……」

 戦い方を変えろと簡単に言うオーを目で追いながら、倍以上に重くなった剣を握りながらゼノもオーを追いかける。

---

「相変わらず護衛の一人も居ないな……」

 エデンの前まで来たゼノとオーは警戒を解くことなく辺りを観察する。
 ゼノがエデンに突入しようとした時、オーがそれを阻止する。

「待て」
「何するんだよ!」
「あいつは……」

 オーの視線の先にはアンドロイドが一人。
 アンドロイドだと知っていなければ、人間と見間違えるほど見た目は人間と変わらない。
 思わず横にいるアンドロイドを見る。

「なんだ……」

 ゼノが言いたいことがわかるのだろう、オーは不機嫌そうに言う。

「いや、次世代型ってだけで随分違うものなんだなと改めてな」
「お前、馬鹿にしているだろ?」
「そんな事より、あいつ怒ってるみたいだぜ?」
「怒っているのはこっちだよ……」

 ゼノが言うようにオーがアンドロイドを観察すると、明らかに怒っていた。
 鼻息は荒く、肩で息をしている。
 見た目だけでは無く仕草まで人間そのものだった。

(成程、流石次世代型だな……)

 決して口には出さなかったが、ゼノの方を見る。
 ……やけにむかつく笑顔をしていた。

(こいつ……)

 オーは半ば諦め気味にゼノにあのアンドロイドの後をついていくように促す。
 同意したゼノの顔は相変わらずにやにやしていた。

---

 一人突き進むアンドロイドの後をばれない様に尾行するゼノとイデアル。
 アンドロイドは何度かここに来たことがあるのか、目的地まで一直線に進んでいく、その場所が二人の目的地と同じだと言う保証は無かったが、確証もなく目的地が同じだと感じた二人は迷わずアンドロイドに着いていく。

 少し進むと長い廊下に出る。
 ゼノは昔の惨事を思い出し、吐き出しそうになりながらも堪える。

「大丈夫か?」
「大丈夫……」

 トラウマはそう簡単には無くならない。
 思えばゼノがここまでエデンの中に入ったのはネシアと来て以来の事だった。

(ネシア……生きててくれ)

 きっとアルビオンも食事などは与えているだろう。
 ネシアは生きている。
 そう自分に言い聞かせながらアンドロイドの後を追う。

---

 二人の思惑通り、アンドロイドはアルビオンがいる地下へと向かう。
 地下は開けた空間、二人は階段付近でばれない様にアルビオンとアンドロイドのやり取りを見守る。

「アルビオン! どういう事だ!」

 何やら言い合っている様子だが、詳しくはわからない。
 所々単語が聞こえてくる。
 ノースク、リセット、管理者……。
 詳しくはわからないが、ノースクの管理を任されているアンドロイドなのかと思い、オーの制止も振り切り、ゼノは思わず飛び出していた。

「その話、俺にも聞かせてもらおうか」
「な、なんだお前!」

 動揺するアンドロイドに対して、ゼノははっきりとした口調で言う。
 ゼノについてくるように後から出てきたオーも見てアンドロイドは更に動揺する。

「貴方方ハ……」

 アルビオンも二人の登場に驚いている様だったが、すぐさまアンドロイドにゼノとオーの抹殺命令を下さす。

「断る!」

 イデアルと呼ばれたアンドロイドは以外にもアルビオンの命令を無視する。

「お、おい……こいつ今断ったぞ!?」
「ああ、命令には絶対だった筈だが……」

 アンドロイドにとっては生み出した者が絶対である。
 その生み出した者からの命令を拒否すると言う事がどれだけ異常な事かオーにはよくわかる。
 もしかすると自分と同じように、自我や人格というものが形成されているのかもしれないとオーが考える。

「ナラモウ貴方ハ必要アリマセン」

 アルビオンが言うと同時に一体のアンドロイドが現れる。

「ブリッツ、ココニ居ル者共ヲ始末シナサイ」
「かしこまりました」

 ニコッと笑うブリッツと呼ばれたアンドロイドの顔を見たゼノがはっとする。
 昔エデンを案内していた男と一緒だ、名前を聞いてどこか聞き覚えがあったが、顔を見て思い出した。
 逆に言うと、顔を見て思い出せる程本物と見間違えるぐらい同じだった。

「おい、ゼノあいつを見てみろ」

 興味津々とばかりにオーが話しかける。
 オーが言う通りブリッツの全体を捉える。
 顔をは同じでも身体は全く別物だった、体格が並の人間の倍以上ある。

「あいつ、資料で見たS型じゃないのか?」

 S型量産に失敗し、一体しかいないが、その強さは凄まじい。
 ゼノにはオーが何を言いたいか分かった。

「おい、そこのアンドロイド!」

 ゼノはイデアルに声をかける。
 この状況をどうすればいいのか迷っていたイデアルも驚きながら反応する。

「話を聞く限り、どうやらお前も狙われてるんだろ? どうだ、俺達と手を組まないか?」
「手を組むだと!? 第一お前たちは一体……?」
「細かい話は後だ、どうするんだ? 組むのか、組まないのか!」
「くそっ!」

 イデアルはブリッツに向けて剣を向ける。
 その行動に満足したかのようにゼノもにやけながらオーによって鉄の塊となった剣を向ける。
 オーも戦闘態勢に入る。

「さあ、S型狩りだ!」

 三人は一斉にブリッツへと襲い掛かる。
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