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第一章 始まり編
外話「円の外側で」
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男は目の前にあるモニターを見ていた。
ベルが見たアルビオンと同じぐらいの大きさの機械がけたたましい音を奏でる。
男はその機械を前に安堵する。
(強引だが、なんとか間に合った……しかし、14日の予定が13日になってしまった……だがブリッツを止めるにはこれしか無かった筈だ)
ため息をつきながらも身体の力が抜ける。
(それにしても彼が助かってよかった……彼は人間だからな、アンドロイドの様にパーツさえ変えれば元どおりとはいかない、システムアルビオンのリセット機能を起動するしかなかったんだ、それに、これ以上人間を減らすわけにはいかない……)
自分を納得させるように心の中で言い訳を続ける。
ぐったりとしていた男は「休んでいる暇はない」と、少ししか休んでいないが、機械の操作を再開する。
(やはり不備がある……14日間で組んだプログラムが13日間で行う様に圧縮されてしまっている。
これでは今までの様なループにならないかもしれない)
やってしまった……。
後悔だけが深く残る。
この判断が後にこの世界に大きな変化をもたらす事は男には分かっていた、だが見過ごせなかった。
あの時の様な後悔はもうしたくなかったからだ。
男は更に手を進める。
何とか辻褄が合う様にしなければ……。
彼さえ留めておけば、留めておかなければ。
男の苦悩は続く。
---
無理をしていた男は疲れていのだろう、モニターを前に眠ってしまっていた。
はっとなり飛び起きる男は激しい動悸にみまわれていた、身体からは冷や汗が大量に出ていた。
男は悪夢を見ていたのだ、思い出したくもない自身の過ちの悪夢を。
エデン管理局がまだしっかりと機能していた頃、男は二日前にブリッツからある提案をされていた。
「本局長、この計画が成功すれば間違いなく現状の暮らしが楽になる筈です!」
「ブリッツまたその話か、前に何度も言っているだろうアンドロイドなんて危険なもの導入する訳にはいかない」
「しかし!」
食い下がるブリッツを無視し、エデンから少し離れた自分の部屋へと戻る。
(少し冷たくしすぎただろうか……)
二日前のブリッツに対しての対応を反省すると同時に、あんな計画を実行する訳にはいかないとも考える。
(しかし言い方はもう少し考えた方が良かったかもしれない)
自分の中で反省点を見つけながらシャワーを浴びようとシャワー室に向かっていた時に電話がなる。
「もしもし」
「本局長! 大変です! アンドロイドが暴走して!」
「何!?」
電話の後ろから悲鳴や大きな物音が聞こえる。
何かトラブルが起きていることは容易に想像できた。
「何が起きている!?」
「と、とにかくアルビオンが暴走してアンド……」
何か固い物で殴ったかのような鈍い音がして電話が切れる。
(アンドロイド?まさか)
男は急いで服を着替えエデンへと向かう。
男は研究員として優秀でも運動能力は平均以下だった。
いくら自分が今から全力で走っても間に合わない事は分かりきっていた、それでも男は走るのをやめなかった。
男はメンタル的にも弱かった。
少しでも研究に行き詰ったり失敗したりすると、いじけたりやる気が無くなったりと他の研究員に迷惑をかけてばかりだった。
それでも研究員たちは文句を言うどころか男を励まし続けていた。
「大丈夫ですよ本局長!」「このぐらいなんて事ないですよ!」「まだまだ始まったばかりじゃないですか!」
男は職員達の事が大好きだった、こんな自分を慕ってくれている職員達が
だからこそ放っておけなかった、気づけば頭より先に身体が動いていた。
――自分が行っても無駄かもしれない。
そんな思いなど関係ないと走り続ける。
なんとかエデンにたどり着いた男は息も絶え絶えにエデンの中へと入る。
エデンの中は壁は崩壊し燃え盛っている。
「何が起きたんだ」
臆病ながら一歩一歩進んでいく。
「うわああああ!」
男の目の前には自分を慕ってくれていた職員達の死体があった。
子供が遊ぶ様に乱暴に四肢が外されている。
壊れた玩具には興味が無くなったのか、そもそも殺す事が目的だったのか辺りには沢山の死体が転がっている。
その中の一つにまだ息があるのを確認した男は必死に声をかける。
絶対に助けてみせると意気込んではいたものの抱きかかえた職員は男に気づくと笑顔を見せた後息絶える。
目の前で、自分の腕の中で、大切な職員の死を目の当たりにした男は元々メンタル的に弱かったのもあり限界だった。
呆然としつつもエデンの奥へと進む内に人の声が聞こえる。
(まだ生きている人がいる)
声のする方へと向かうも前方にアンドロイドが居るのが見える。
電話で職員が言っていた通りだ。
これはアンドロイドが起こした事なんだろうか。
見つかってはいけない気がして隠れながら進むと、なんとか見つからずに先に進む事が出来た。
「おーい!こっちだ!」
男は数メートル先にまだ生きている職員を見つける。
職員もこちらに気づき、助かったと言わんばかりに笑顔でこちらに向かってくる。
(やった、これで彼らを助けられる)
現実はそう上手くは行かなかった。
男が声を出したのがいけなかった、男の声に反応したアンドロイドが男の後ろから高速で移動し職員の首を軽々と跳ね飛ばした。
悲鳴をあげる暇さえなく絶命した職員だったものは力なくその場に倒れる。
一瞬の出来事で理解が追いつかない男に一歩、また一歩とゆっくり近づいてくるアンドロイドに対して数秒遅れで職員が死んだ事を理解する。
「うわああ! ああ、ああああ!」
腰が抜けてしまった男はゆっくりと近づいてくるアンドロイドから逃げようとするも力が入らず動けない。
(殺されるっ……)
しかし、アンドロイドは男を無視したまま先へ進んで行く。
「はっ!?
お、おい!待てよふざけるな!僕は殺す価値すらないというのか!おいいい!」
男の声など気にもとめず何処かへ向かうアンドロイド。
そんな状況に男は職員を一人も助けられなかった己の無力さと自分が声を出したばかりに殺されてしまった職員、その上で自分は情けをかけられ無視された怒りとでぐちゃぐちゃになる。
――結果男の精神は壊れた。
「ははっ」
立ち上がりふらふらと歩き出す男はエデンの外へと向かう。
途中職員ではない死にかけの女ともう助からないであろう少女、その二人の間で必死声をかける10歳にも満たないであろう少年の姿を見る。
男は今の状況からは考えつかないトーンで陽気に語りかける
「やあ少年そんなところでどうしたんだい?」
男の目は死んでいた。
ベルが見たアルビオンと同じぐらいの大きさの機械がけたたましい音を奏でる。
男はその機械を前に安堵する。
(強引だが、なんとか間に合った……しかし、14日の予定が13日になってしまった……だがブリッツを止めるにはこれしか無かった筈だ)
ため息をつきながらも身体の力が抜ける。
(それにしても彼が助かってよかった……彼は人間だからな、アンドロイドの様にパーツさえ変えれば元どおりとはいかない、システムアルビオンのリセット機能を起動するしかなかったんだ、それに、これ以上人間を減らすわけにはいかない……)
自分を納得させるように心の中で言い訳を続ける。
ぐったりとしていた男は「休んでいる暇はない」と、少ししか休んでいないが、機械の操作を再開する。
(やはり不備がある……14日間で組んだプログラムが13日間で行う様に圧縮されてしまっている。
これでは今までの様なループにならないかもしれない)
やってしまった……。
後悔だけが深く残る。
この判断が後にこの世界に大きな変化をもたらす事は男には分かっていた、だが見過ごせなかった。
あの時の様な後悔はもうしたくなかったからだ。
男は更に手を進める。
何とか辻褄が合う様にしなければ……。
彼さえ留めておけば、留めておかなければ。
男の苦悩は続く。
---
無理をしていた男は疲れていのだろう、モニターを前に眠ってしまっていた。
はっとなり飛び起きる男は激しい動悸にみまわれていた、身体からは冷や汗が大量に出ていた。
男は悪夢を見ていたのだ、思い出したくもない自身の過ちの悪夢を。
エデン管理局がまだしっかりと機能していた頃、男は二日前にブリッツからある提案をされていた。
「本局長、この計画が成功すれば間違いなく現状の暮らしが楽になる筈です!」
「ブリッツまたその話か、前に何度も言っているだろうアンドロイドなんて危険なもの導入する訳にはいかない」
「しかし!」
食い下がるブリッツを無視し、エデンから少し離れた自分の部屋へと戻る。
(少し冷たくしすぎただろうか……)
二日前のブリッツに対しての対応を反省すると同時に、あんな計画を実行する訳にはいかないとも考える。
(しかし言い方はもう少し考えた方が良かったかもしれない)
自分の中で反省点を見つけながらシャワーを浴びようとシャワー室に向かっていた時に電話がなる。
「もしもし」
「本局長! 大変です! アンドロイドが暴走して!」
「何!?」
電話の後ろから悲鳴や大きな物音が聞こえる。
何かトラブルが起きていることは容易に想像できた。
「何が起きている!?」
「と、とにかくアルビオンが暴走してアンド……」
何か固い物で殴ったかのような鈍い音がして電話が切れる。
(アンドロイド?まさか)
男は急いで服を着替えエデンへと向かう。
男は研究員として優秀でも運動能力は平均以下だった。
いくら自分が今から全力で走っても間に合わない事は分かりきっていた、それでも男は走るのをやめなかった。
男はメンタル的にも弱かった。
少しでも研究に行き詰ったり失敗したりすると、いじけたりやる気が無くなったりと他の研究員に迷惑をかけてばかりだった。
それでも研究員たちは文句を言うどころか男を励まし続けていた。
「大丈夫ですよ本局長!」「このぐらいなんて事ないですよ!」「まだまだ始まったばかりじゃないですか!」
男は職員達の事が大好きだった、こんな自分を慕ってくれている職員達が
だからこそ放っておけなかった、気づけば頭より先に身体が動いていた。
――自分が行っても無駄かもしれない。
そんな思いなど関係ないと走り続ける。
なんとかエデンにたどり着いた男は息も絶え絶えにエデンの中へと入る。
エデンの中は壁は崩壊し燃え盛っている。
「何が起きたんだ」
臆病ながら一歩一歩進んでいく。
「うわああああ!」
男の目の前には自分を慕ってくれていた職員達の死体があった。
子供が遊ぶ様に乱暴に四肢が外されている。
壊れた玩具には興味が無くなったのか、そもそも殺す事が目的だったのか辺りには沢山の死体が転がっている。
その中の一つにまだ息があるのを確認した男は必死に声をかける。
絶対に助けてみせると意気込んではいたものの抱きかかえた職員は男に気づくと笑顔を見せた後息絶える。
目の前で、自分の腕の中で、大切な職員の死を目の当たりにした男は元々メンタル的に弱かったのもあり限界だった。
呆然としつつもエデンの奥へと進む内に人の声が聞こえる。
(まだ生きている人がいる)
声のする方へと向かうも前方にアンドロイドが居るのが見える。
電話で職員が言っていた通りだ。
これはアンドロイドが起こした事なんだろうか。
見つかってはいけない気がして隠れながら進むと、なんとか見つからずに先に進む事が出来た。
「おーい!こっちだ!」
男は数メートル先にまだ生きている職員を見つける。
職員もこちらに気づき、助かったと言わんばかりに笑顔でこちらに向かってくる。
(やった、これで彼らを助けられる)
現実はそう上手くは行かなかった。
男が声を出したのがいけなかった、男の声に反応したアンドロイドが男の後ろから高速で移動し職員の首を軽々と跳ね飛ばした。
悲鳴をあげる暇さえなく絶命した職員だったものは力なくその場に倒れる。
一瞬の出来事で理解が追いつかない男に一歩、また一歩とゆっくり近づいてくるアンドロイドに対して数秒遅れで職員が死んだ事を理解する。
「うわああ! ああ、ああああ!」
腰が抜けてしまった男はゆっくりと近づいてくるアンドロイドから逃げようとするも力が入らず動けない。
(殺されるっ……)
しかし、アンドロイドは男を無視したまま先へ進んで行く。
「はっ!?
お、おい!待てよふざけるな!僕は殺す価値すらないというのか!おいいい!」
男の声など気にもとめず何処かへ向かうアンドロイド。
そんな状況に男は職員を一人も助けられなかった己の無力さと自分が声を出したばかりに殺されてしまった職員、その上で自分は情けをかけられ無視された怒りとでぐちゃぐちゃになる。
――結果男の精神は壊れた。
「ははっ」
立ち上がりふらふらと歩き出す男はエデンの外へと向かう。
途中職員ではない死にかけの女ともう助からないであろう少女、その二人の間で必死声をかける10歳にも満たないであろう少年の姿を見る。
男は今の状況からは考えつかないトーンで陽気に語りかける
「やあ少年そんなところでどうしたんだい?」
男の目は死んでいた。
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