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12話

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「キノ、聞いてくれ。俺はお前のことが好きだ」

 幼馴染みは目を見開いて俺を見ている。何に驚いているのだろう。キスした事か、それとも告白?はたまた両方か。どうせなら抱き締めたいところだが、俺は流石にずぶ濡れだから。
 あの後、雨の中を走っていくキノを追いかけようとして翠川に捕まった。「そのまま追いかけても今のお前じゃ季乃を余計悲しませるだけだ」「もう少し冷静になれ、思った事をそのまま口に出すから季乃を傷付けるんだ」「まあ、季乃をこのまま放置するようなら俺が貰うけど。邪魔な幼馴染みが消えて俺的には嬉しいよ」
 普段から思ってたけど、こいつキノに馴れ馴れしくないか?
 ムカついたから頂点めがけて軽くチョップ。「そういうとこだぞ!」うるせえ、知ってるよ!
 冷静さを取り戻したことにより少し余裕ができた。心の中で礼を言い、そういえばこの傘こいつのだよなと思って返した。

「は?お前そのまま帰るのか?!」
「頭冷やしながらキノに謝ってくる!」
「馬鹿じゃねーの!」

 知ってる。俺が馬鹿だからこうして幼馴染みを困らせてる。
 絶対泣いてる。泣かせてる。謝らなきゃ。

 そうして謝る前に告白をしているわけである。こういう所がダメって言われたばかりだというのに。
 でも実際に幼馴染みの顔を見たら無理だった。いろんな感情が溢れてきて、漏れた言葉は愛しいという気持ちの現れ。

「キノ、俺、お前が昨日言った意味ちゃんとわかってるよ。俺だってキノのこと愛してる。キノは、こんな俺、もう嫌いになった?」
「へ」
「ずっと好きだった。つっても中学の時からだけど。キノは?俺のこといつから好きだった?あ、でも俺のこと幻滅した可能性もあるのか……自分勝手かもしんないけど、でも、できれば今まで通り接して欲しい…」
「ま、まってまってまって!何がどうなって……はっ、これは夢?」

 バチーンと幼馴染みは自分の頬をビンタ。びっくりして俺も夢見てるのかと思って自分の頬抓ったら案の定痛くて現実だった。
 幼馴染みも俺も、お互いの一連の行動を見て吹き出した。

「あははは、いっちゃんほっぺた一部赤くなってるよ!」
「キノももみじマークついてる!」
「え、うそ」
「ほんと」

 俺たち何やってるんだろう、としばらく二人で笑った。さっきまでの張り詰めた空気が嘘みたいに。笑う幼馴染みの手形のついた顔を見ながら幸せだなぁと感じた。
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