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10話

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 俺も幼馴染みも傘を忘れていて帰れない。幼馴染みはいつも折り畳み傘を常備しているはずだが、どうやら壊れているらしい。

「友達が余分に傘持ってきてないか聞いてくる」

 俺がそう言うと幼馴染みもついてこようとしたので止めた。幼馴染みと一緒にいるとうっかり触ってしまいそうになるからだ。まだ俺の気持ちも伝えていないのにベタベタ触りこんでは示しがつかない。あとさっきから心臓がバクバクいってて冷静になりたかったのもある。

「誰か傘二本持ってない?」

 校舎内で部活をしていたクラスメイト達を見つけて聞いた。誰も持ってないらしい。まあ、一本あったら十分だから二本なんてないよな。
 それからも知り合いを見つけては聞き、見つけては聞きを繰り返したが収穫はなし。ひとまず幼馴染みの元に帰る事にした。



「あれ、キノ……と副会長?」

 幼馴染みと副会長が話し合ってるのが見えて立ち止まる。距離があるから何を話しているかは分からない。
 しかし、何やら親しげに話してるのが幼馴染みの表情からわかり、心の中に黒いものが燻る。
 ドクドクと心臓が脈打って、二人を目に焼き付けるみたいに、俺の瞳が大きく開いた。

 キノが好きなのは俺じゃないのか?

 大きな声で幼馴染みを呼んで近付いた。副会長は幼馴染みに持っていた傘を渡し、頭をひとなでしてから帰っていった。
 キノが好きなのは俺な筈なのに、どうして頬を赤く染めて副会長を見るのか。どうして、俺には見せないような笑顔を副会長に見せるのか。
 カッとなった俺は思わず叫んでしまった。

「キノは俺のことが好きなんだろ!!」

 その一言に幼馴染みは真っ青になって、一歩後退る。

「いっちゃ………知って……なんで」

 幼馴染みが屋根のない所に出て濡れているのを見て少し冷静になった。

「ちょ、キノ濡れるよ」
「ぼくの……ぼくの気持ち知ってて、いっちゃんは、一緒にいたの?」

 慌てて腕を掴んで引き寄せようとしたが、幼馴染みはそれを拒んだ。
 僕の気持ち、とは何時からのことなのか分からないが、俺も同じ気持ちだと、そう言おうと思って口を開いたが、幼馴染みはそれすら拒むように声を張り上げた。


「僕のことずっと気持ち悪いって思ってたんなら放っておいてよ!中途半端に優しくして、僕のこと弄ばないでっ!」

 そう言うと俺に傘を押し付けて雨の中走って去っていってしまった。俺は幼馴染みの言うことが信じられなくて呆然としてしまう。
 気持ち悪いなんて思ったことない。だってずっと好きだったんだから。
 もしかして、昨日の告白はそういう意図じゃなかった?俺に伝えるつもりじゃなかった?
 一人で考えたって馬鹿な俺じゃ真実に辿り着けるわけがない。それならこのまま猪突猛進で幼馴染みにアタックするしかない。
 せっかく両想いになれたんだ。放課後に言うって決めていたし、幼馴染みを引っ張りだして俺の気持ちを伝えるんだ。

 そして副会長との関係も聞き出す……!
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