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8話

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 幼馴染みが顔を赤く染めて、寝転がる俺の上に乗っかっている。俺が身動ぐと、年の割に幼い顔を歪めて、男にしては高い声で「いやっ」と言う。逃げると思ったのだろう、俺の肩をぐっと押さえてきた。

「いっちゃん逃げちゃダメ」
「キノ……」
「あは、いっちゃん変な顔」

 笑った。

「ねえ、いっちゃん、季乃ね」

 俺の肩に置いた手に体重を掛けながら前のめりになる。ぐっと近付く幼い顔が、少し荒い吐息が、俺の唇にかかって、

「季乃、いっちゃんと」

 ちゅーしたい、と動いた唇が俺の口に合わさることはなかった。何故ならそこで目が覚めたから。己の下半身がみっともない事になっているが、そんなこと気にしていられない。
 昨日幼馴染みに「月が綺麗ですね」なんて言われたんだ。緩んだ口元を手で覆いながら歓喜した。先程見た夢はさて置き、幼馴染みの気持ちと俺自身の気持ちが相思相愛だった事にただただ嬉しいのだ。

「あ゙ー!どーしよ!」

 ベッドの上で一人騒ぎながらゴロゴロ転がっていると、元気な息子がどうにかしろと言わんばかりに主張してくるからそっとトイレに行った。
 トイレから出ると脳が完全に覚醒して、改めて幼馴染みの告白について考えた。イエスと答えるのは当然。あとはどういう風に伝えるかだな。取り敢えず、放課後。放課後までに考えよう。
 朝食を済ませ、寝間着から制服に着替えつつそんなことを考えていると、普段より早く準備が終わった事に気が付いた。いつも幼馴染みが迎えに来る時間より少し早い。
 幼馴染みの家に行けば案の定驚かれた。
 何があったのか聞かれたが適当に流した。流石に幼馴染みのエロい夢を見たなんて言えない。いくら幼馴染みで相思相愛だったとしても、初心な幼馴染みは真っ赤になって口を利いてくれなくなるかもしれない。
 相変わらず幼馴染みは可愛い。俺の行動に対して怪訝そうな顔も、恥ずかしそうに顔を赤らめる様子も、何かを想い切なそうにどこか遠くを見つめる姿も。
 俺が幼馴染みへの恋を自覚したのが中学二年の時。何故だか幼馴染みに突然避けられ始めたのがきっかけだ。避けられるまで、幼馴染みが俺にとってどれほど不可欠なのか気付かなかった。
 避けられて、避けられて、会えなくて、話せなくて、怖くなった。
 このまま一生幼馴染みに避けられ続けたら俺はどうなるのだろうか。結局俺が幼馴染みに泣き付いて向こうが折れた。
 それから幼馴染みは時々俺を泣きそうな顔で見つめるようになった。
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