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チャプタ―33
遺言恋愛計画書33
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昼休み、伸弥といっしょに昼食を摂っていると突然、
「なんかあっただろ」
と言われた。
「いきなりなんだよ」
「いつもと顔つきが違うんだよ」
抗弁するものの、伸弥はそれを無視して主張を通す。
「で、何があった?」
伸弥の問いかけに健人は答えられなかった。心当たりがあるとすれば、志織のことぐらいだ。
「彼女と上手くいってないのか?」
「なんで、そう思うんだよ」
と問いかけると、
「健人が気に病むような事柄なんてそれぐらいだろ」
伸弥はこともなげに言った。
どうにも旗色が悪い。健人は観念して志織の病気の件を明かした。
話を終えたとたん、健人は頭をはたかれる。
「なにすんだよ」
「大事なこと隠してたからだ」
抗議するものの叱責されてしまった。
「俺にできることなんてないかもしれないけど、せめて話し相手ぐらいにはなれる」
「ああ」
伸弥の言葉に健人はひとつうなずく。
「改めて聞くけど、彼女の病気は治らない病気じゃないんだな?」
「ああ、全員が治る病気じゃないけど」
健人の返答に伸弥が表情を曇らせる。
「弱気になるな」
「俺、弱気になってるか」
「なってるよ」
健人の質問に伸弥がやや強い語気で答えた。
「そっか、わかった」
一瞬で気分を切り替えられるほど器用ではないが、健人はとにかく了承する。
「見舞いには行ってるのか?」
「行ける日は毎日」
そっか、と伸弥や顎を引いた。そして、
「ひとりで行くのがきつい日は俺を連れてけ」
と神妙な顔で言う。健人は「わかった、ありがとう」とこたえた。
昼休み、伸弥といっしょに昼食を摂っていると突然、
「なんかあっただろ」
と言われた。
「いきなりなんだよ」
「いつもと顔つきが違うんだよ」
抗弁するものの、伸弥はそれを無視して主張を通す。
「で、何があった?」
伸弥の問いかけに健人は答えられなかった。心当たりがあるとすれば、志織のことぐらいだ。
「彼女と上手くいってないのか?」
「なんで、そう思うんだよ」
と問いかけると、
「健人が気に病むような事柄なんてそれぐらいだろ」
伸弥はこともなげに言った。
どうにも旗色が悪い。健人は観念して志織の病気の件を明かした。
話を終えたとたん、健人は頭をはたかれる。
「なにすんだよ」
「大事なこと隠してたからだ」
抗議するものの叱責されてしまった。
「俺にできることなんてないかもしれないけど、せめて話し相手ぐらいにはなれる」
「ああ」
伸弥の言葉に健人はひとつうなずく。
「改めて聞くけど、彼女の病気は治らない病気じゃないんだな?」
「ああ、全員が治る病気じゃないけど」
健人の返答に伸弥が表情を曇らせる。
「弱気になるな」
「俺、弱気になってるか」
「なってるよ」
健人の質問に伸弥がやや強い語気で答えた。
「そっか、わかった」
一瞬で気分を切り替えられるほど器用ではないが、健人はとにかく了承する。
「見舞いには行ってるのか?」
「行ける日は毎日」
そっか、と伸弥や顎を引いた。そして、
「ひとりで行くのがきつい日は俺を連れてけ」
と神妙な顔で言う。健人は「わかった、ありがとう」とこたえた。
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