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 演目は『暫(しばらく)』――義人・侠客を扱ったもので、悪の親玉が手下とともに服従しない善良な人々の首を斬ろうとするのを義人が止めるといった内容だ――のはずだったが、急遽変更になった。
 その演目の題名は『鵺』……雄彦と八重に感謝した村人が、ふたりを称えるために直前になって台帳――脚本を変更したのだ。
 ――舞台の上では、鵺の仮装をした若い衆のひとりがなかなかの演技力でもって、その獰猛さを演じている。
 ほかの若い衆が演じる虎の主も、素人がやっているとは思えない迫真のものだ。
 と、拍子木の合図に従って、役者の演技の伴奏――所作音楽がはじまる。三味線、太鼓、笛、鼓が勇壮な雰囲気を演出した。
 そこに隈取で顔をふちどった荒事師――雄彦役の若者が現われる。そして見得を切った。それに八重の役の者もつづく。
 ……はっきりいって、それを舞台の正面、先頭で鑑賞するのはかなり気恥ずかしい。
 しかし、真に羞恥心を覚えるのは最後の場面だ。
 なんと、鵺退治を終えた雄彦役の役者と八重役の役者が色模様――男女の恋愛を演じはじめた。
 一瞬あっけにとられた後、舞台を観ていた雄彦と八重や互いの顔を見やった。
 そのせいでかえって、舞台の色模様のことが意識され、二人は顔を真っ赤にする――
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