斬奸剣、兄妹恋路の闇(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 この機に攻める――そこに雄彦は迫った。
 紫電一閃、頭格は突きでそれに応じた。
 雄彦は紙一重で右にかわし、己の突きを見舞う――疾風と化した切っ先が、鋭く水月に埋没する。
「がッ……」
 対手は愕然とした顔つきで眼を見開き、その瞳でこちらを捉えた。
「知らなかったようだな。鎖帷子は斬撃には強いが、刺突には弱い」
 雄彦は、せめてもの情けと真実を明かす。
「く、そ――……」
 恨めしげな言葉を残し、盗賊の頭格は地にふす。
 ……配下の者は茫然自失の状態だ。
 そこに雄彦は颶風(ぐふう)となり駆け寄る――閃、閃、閃、閃、閃、野菜のようにあっけなく斬られ、彼らも事切れる。
 ――頭格が倒れ自失に陥ったところを成敗したのだ。
 命を拾ったからといって、盗賊が改心することなど稀だ。それを見届けることができない以上、近隣の村の住人に害が及ばぬよう斬るしかない。
「修羅の道、か……」
 己の無慈悲な行いをかえりみ、雄彦はつぶやいた。

 人気の絶えた名主の屋敷を、建物を外からまわりこんで寝間へ向かう。
 ――その途上、孤影と遭遇した。
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