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 だが、大刀に対して間合いで劣る小太刀が不利であることもまた事実――かかる事柄をくつがえす遣い手はそうそういるものではない。そう思ったがゆえの雄彦の反応だ。
「お侍様、小太刀だからって莫迦にしちゃいけねぇ!」
 百姓が得意になって声を高める。期待通りの反応が返ってきたということだろう。
「莫迦にはしておらぬ」
 やや困った顔で雄彦は対手の言葉を否定した。
 小太刀術を莫迦にするということは、妹を侮り――ひいては、中条流の祖である中条兵庫頭長秀(ちゅうじょうひょうごのかみながひで)を軽んじるということだ。いみじくも、剣法者の端くれとして剣術の開祖を卑しめたと取られてはたまらない、そんなふうに考えての兄の反応だ。
「二人連れのいかにもつわもの然としたお侍をまたたく間に斬ったっていうんだから尋常じゃねぇ!」
 百姓はまるで辻講釈のごとく熱く語る。
(凄腕の小太刀の遣い手――)
 ここまでくれば、兄ほどの剣術莫迦でなくとも興味を引かれる。八重は一体、どんな流儀の剣を遣うか思いを馳せた……

 ――八重は身を起こす。毒虫に刺されたような気配を眠りに落ちていながらも感じたのだ。
 瞬時に視線をめぐらし状況を確認する。
 兄の姿がない、厠にでもいったのだろうか。だが、寝間に大小は残されていないから大丈夫だ。兄なら大刀の一振りさえあれば危地を脱することができる。
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